深淵教団 後編
広場に…一箇所に、子供達が集められました。
子供達の健康状態や持病、それら私達には出来なかった細かな検査を行なっております。
出来なかった…は、言い訳ですね、そこまで気が回らなかった、気にもしなかった…が?正解だと…反省しております。
確かに、大人ばかりに目をやっていたその事実に、我ながらかなりの自己嫌悪です。
そうですよね、一番の被害者は子供達ですものね。
本当に司祭様や教団の方達には大感謝です、頭が下がります。よく来て下さったって、全力で感謝します。
しかも、本気で見返りを求めていないのか、教団の名前さえ一切伏せてます。徹底してますね…でも?
これはやっぱり、とんでもないただのお人好しなのだと…思います。
この教団は実は色々と事業も展開されており、
あの、以前私もお会いした事も有る、あのシャダ商会とも対等に商売をしている…
つまりは実質、世界規模の大商会なのです。
なので通常、信者からは寄付を募りません。
全ての活動資金は、商売の売上のみで運営される、とんでもない教団なのです。
信者はただ祈るか、教会の清掃や炊き出しのお手伝いなどが、主な寄付…なのだそうです。
そして、検査が終わった子供達には、「ショーギ」、そして「オセロ」と言うゲームが待っていました。
これは私も少し知ってます。まあ、弱いのですけど…多少やってました。
ところで…司祭様はお強いのですか?
「まあ…今は嗜む程度ですが…島では結構やってましたからね、そこそこは出来る方かと…」
では、子供達の説明の為に…私と軽く、お相手をお願いしましょうか?
ちょっと上から目線だった私ですが…
まさかの…瞬殺でした…
嗜む程度?…圧倒的にボコボコに攻められました。
これの的確な表現があるのならばそれは、
蹂躙、その一言だと、そう思います。
『へえ〜、中々腕を上げた様だな小僧?』
こ、小僧?
「これはこれは…もはや昔の私では無いのですよ?我が師マーヤル秘伝の技の数々…どうです久々に一局…」
『フフフ、良いだろう…偉く立派なマー坊に、俺が真の将棋ってヤツを、その身に刻んでやんよ…』
突如現れた王様と…司祭様の熱い戦いが始まりました。
バチバチの雰囲気ですよ。
初手から躊躇うことなく一気に攻め上がる王様…
「懐かしいですね…この、凄い圧を感じる様な空気は…」
…
……
『ん?…待て?おいおい…まさかそれは…』
「我が師マーヤルとヨミ様が研究に研究を重ねたあの…これが穴熊の完成形なのですよ…」
『ほお…言うじゃねえか?では俺が、ご自慢の穴熊を、脇腹から食い破ってやんよ…』
王様も司祭様もかなり難しいお顔で戦ってます…
一進一退の攻防が続いています。
子供達も、固唾を飲んで勝負を見守っています。
ルールを知らない子供達でさえ、この空気に当てられてます…
みんな巻き込まれてますね…まあ私もですが。
…
「おっと、油断しましたね神様、先程から鬱陶しい位置のこの大弓は、これで頂きましたよ…」
一瞬、王様が困ったお顔をされたのですが…
一呼吸置いて、王様がニヤリと笑いました。
『クックック…まんまと引っ掛かかったね、小童が。そう云うとこだぞ?
ホイ、これで王手だ…穴熊が攻めに気を散らすなど、愚の骨頂、それが敗因だ…』
「グヌヌ…ま、参りました…」
『まだまだやの〜マー坊よ…カッカッカ…』
子供達から大きな歓声が上がり、すぐ様王様が揉みくちゃにされていますね…
その様子みながら、司祭様もまたにこやかに笑っていますね。
「数十年研鑽を積んで、いざこの時を待っていましたが…惨敗でした、
悔しいのですが、やはり神の壁は、まだまだ高かったです…」
『うむ…よきにはからえ、精進する事ぞ?』
凄い…王様、「ショーギ」もお出来なんだわ…しかもお強い…
「お出来になるとか、いえいえ復興担当者様?良いですか、あのお方が将棋をこの世に広めた、最初の人物、張本人なのですよ?つまり始祖ですね…」
え?最初…の??張本人ですか?
『まあな…』
「恐らく…このお方かヨミ様が、将棋世界の頂点でしょう…」
ヨミ様?はて、どちら様ですか?
「おや、ご存じ無いですか?…この世界を作った創造の三神の一柱でおられる、ツクヨミ様ですが…」
えええ!?お、おおおお知り合い…でしょうか?
「ええ勿論。今もお世話になってますよ。色々と…」
す、すすすごいですね?
「あっはっは、本当にすごいのはそこのお方ですよ?
だって…その創造神を、しょっちゅう殴ってましたらね…」
ちょっとっ、一体何やってんですか王様?
駄目ですよ、絶対に駄目でしょう?
神様を殴っちゃいけませんって、学校で習って無いのですか??だめでしょ?
『お?…おう…スマン…つい…イラッとして…』
良いですか王様、そんなの神への冒涜ですよ?
永遠に海を漂う海賊みたいに、怒った神様に呪われちゃいますよ?
『…お?おう』
神様を殴ったって…幾ら強いからって、一体何やってんだようちの王様は?って、全国民がおこですよ?
国が滅んだらどうする気ですか?
『そうだな…また造るかな…』
ダーメーでしょうがっつー!?
良いですか王様、反省が大切ですよ、反省が。
私も今回、身にしみました。反省は大切です。
『お、おう、以後注意しとく…』
「神様に説教するなんて、エッタさんかマーオちゃんだけだったのに…凄い娘さんですね?」
『ああ…実はコイツもエッタさんって…エトランって言うのだよ。以後宜しくな…』
あああ、あのー、ごごご紹介頂…きました…私、エトランと申します…以後お見知り置きください。
「へえ〜エッタさんですか…それは良いですね?なんか昔みたいで嬉しいですよ…」
『お?おう…まあお前も居てエッタさんもってなると、確かにちょっと懐かしいな…』
王様と司祭様が、にこやかに語らって居られるのが、何かとても印象的でした。




