王城近隣では
私のお散歩の成果?
オニキスちゃんの倒した大きなイノシシに対し、
何故かアーラント国が買い取ると言う流れになって、少し驚いています。
イノシシくらい、兵隊さんで取りに行けば無料なのに…
そう思っていたらば、騎士長さんがそっと教えて下さいました。
蝗害でエサが無くなったせいで、魔獣も獣もかなり凶暴化していて、
ここの兵隊だけで、怪我や被害無く、獲物を捕らえるのは、
結構な至難の技だそうで…
軍に多くの税を投入していた割に…
実状としては、王族や貴族の横領等で目減りして、兵装を充実させるどころか、
まともな維持さえ、ままならない状態…だったそうです。
なる程…確かにここの兵隊さんって、大きな声では言えませんが、
素人の私が見ても、第一印象で、ちょっと弱そうに見えるんだけど…
まあ…ここに居る騎士長さんや、アーデ将軍の部隊を見たからだとも思いますが、
不正の温床だった王家が、これで生まれ変われればアーラントも、
きっとすぐに、まともな軍隊になれると思います。
そうだ…なんなら私とオニキスちゃんで、狩猟のお仕事をしましょうか?
…って、騎士長さんに相談したら、少し叱られてしまいました…
調子に乗るな…と、そう仰しゃりたいのですね?
…すいません。そうでしたね、そもそも私には抱えきれない量のお仕事が有りましたね。
いやちょっと…オニキスちゃんが強いばかりに…はい、調子に乗ってました。申し訳御座いません。
「良いかいエトラン嬢、凶暴化だけじゃ無いんだよ。自然界で個体数のバランスが崩れると、大変な事になってしまい、
最悪は来年以降に、狩猟出来るだけの量の個体数が、この近辺にいなくなってる可能性だって有るんだ…」
ええ!?そうなんですか?
「まあ…例えばだけど、特にメスがいっぱい死んだら、そりゃ子供はもう生まれなくなるよね?」
ええ、そうですね。
「多くの場合、飢えた獣が最初に狙うのは、弱った個体、子供、体の小さなメス…つまり今、子供やメスはかなり減ってる可能性が高いんだよ…」
な、なる程…
「特に、生きたままバッタの餌になった獣も多いだろうから、獣を食ってる魔獣の餌も減ってる訳だ…
飢えた魔獣なんて、プロの兵隊にだって、そりゃとんでもく危険で厄介なんだよ…」
非常に、良く分かりました。ご指導ありがとう御座います。
そう考えると、私、よく無事で帰れましたね…
「うちの王様もそうだけど、分体…えーっと…オニキスだっけ?
そのオニキスも、本気を出せば、そう云う飢えた獣が、恐怖で走って逃げ出す程強い神獣だから、
何より、分体と本体って、どこに居ようが一瞬で入れ替われるからね…
そうなるとまあ…君の身に何か有るとは、到底思えないんだけどね。
なにせ、地上の捕食者の頂点だからね…
でも、君一人ならともかく、多くの兵隊をそれぞれかばうのは神獣だって大変だろうからね。
フッ…そもそも神獣ってさ、人間なんて矮小な生き物を、なんなら小さな餌…おやつかな?
そんなのをかばう理由さえ、一つも無いんだけどね。
本体にうちの王様には、ただただ感謝だよね。
多くの魔獣や神獣を、その力で正面からねじ伏せて、そのうえで従えてるんだ、
完全な上下関係を構築した上でね。
うちの国内のどの魔獣も神獣も、王様の命令には、絶対に逆らわないんだよ。
そうそう、ここいらにも、かつて恐ろしい程に強い有名な魔獣が居たんだよ。
知ってるかな、赤毛のグリフォンで…紅き厄災とか、赤い死神とか、
とにかく、色んな呼び名が有った、超有名なグリフォンなのだけど、
ここいらの国を三つほど壊滅させた、まさに正真正銘のバケモノなんだけどさ、
まあ…それでもうちの王様には、全く手も足も出なくってね…
散々暴れてもどうにも出来ずに、最後は腹を見せて降伏してね…
そう、グリフォンってとにかく利口なんだ。
戦っても全く勝ち目が無い…それどころか、当の王様はヘラヘラ笑って遊んでるもんだから、
そりゃ、赤毛にすりゃ、たまったもんじゃないよな…
こりゃ無理だって、悟ったのさ。
しかもその後で、赤毛は王様の使役するグリフォン…
そう、ジョンの嫁になったのさ。
王様は実は、はなっからそのつもりで、その赤毛を捕まえに行ってたんだよ…
ジョンもかなり特殊な個体で、戦闘力も異様に高かったからね、相応しいお相手が中々居なかったんだけど、
伝説の赤毛なら、丁度良いだろうよって…王様は言ったんだが…
どんな神経してたらそんな考えになるのか、私には一向に判らんが…
その赤毛も、ジョンを嫌がる事も全く無かったそうだよ。強い者同士?
あ…ちなみに、赤毛は王様の名付けで、ポチ子って名前なんだぜ。
ただ、誰が呼んだって返事なんか返してくれんし、
すぐ噛み付いたり襲ってきたりはしないけど、すっごく睨まれる。
今でも王様以外には絶対に、自分の身体を触れさせはし無いんだ…
それに無理に触れたらばきっと、楽には死ねないだろうからさ、充分注意しときなよ?
君はそのうち、ポチ子にも絶対に会うだろうからさ…」
警告…あ、ありがとう御座います。
会う前には必ず…王様に、ポチ子の好きな物を聞いておこう…
私に買えるものなら良いんだけど…
お仕事の傍らで、騎士長さんとそんなお話をした翌日には…
ソフィア様の持ち物には改めて、ポチ子の名が与えられていましたとさ。
まあ…良いんですけどね。




