その名も、オニキスちゃんですからね。
そう言えば…なのですが、帝国内で重要なポストを与えられた者には、王様から、
その身を守護する、守護魔獣がそれぞれ与えられると、そう聞いて居ました。
いましたが…私には居ませんでした。
ですが…そりゃそうですよね、だって、
昨日今日の私には、そもそもまだ早いって、そういう事だと認識してました。
それについてはまあ…当然だとも思ってました。
ただ、羨ましいなあって…ずっと思ってたんですよね。
王様から認められたって事ですし、
今回みたいな事に巻き込まれても、守護魔獣さんが居たら、恐らく何とかなってたって事ですよね?
こう見えて、か弱い乙女なのですよね…私だって…
…色々、ご意見もお有りでしょうが、
乙女なのですよ、良いですか?もう一度言って置きますが、
か弱い乙女なのですよ!わ、た、し、はっ!
ここは大事なので、声を大にして発表しておきますよ…ええ、そこは譲れません。
あとまあ…そもそも王様の横にいるって事は、
この地上で最強の軍隊ですら、容易く滅ぼせる絶対的な強戦力の中にいるって事ですから?
そこに護衛も何も、そんなモン要らんだろ?って事も、まあ理解してました。
でも、とても羨ましかったんだと、認めます。
でも、もう大丈夫ですよ。ええ、凄いですね。
ミュー様の子供さんだって…とんでもなくお強いって事ですが…
うちのオニキスちゃんに至っては、ミュー様の分体…つまりその一部ですよ?
魔獣では無く、神獣ですよ、神獣!
御伽話の中の、挿絵は動きませんが、
うちのオニキスちゃんは動きますよ?…まあ、そりゃ当たり前ですが…
しかも、アーラントに集結した全ての軍隊ですら、勝てないくらい強いって…そんな凄い神獣様なのですよ?
なんと言いましぃうか…大きな領地とか、高い地位を貰うよりも、
なんならもっともっと凄い事だと思うんですよね。
神話の中の神獣ですからね。
もうずっと頬ずりしたくなるくらい、愛おしいです。そうなんですよ。
そう云う理由が有ってですね、私には。
…だから、ですね、ソフィア様…
蜘蛛に頬ずりする、頭のイカれた女では無く…
王様から賜った、神獣様に、感謝を捧げて居たらのですよ?良いですか?
私は攫われて、恐怖で気がふれた訳では有りません。
もう一度言って置きますが、私は大丈夫です。なんの問題も有りません。
いえ、問題は…オニキスちゃんは、一体何が好みかなって、事ですかね?
「し、神獣…様?!」
そ、そうなんですよ。ここにおわそう、このお方こそが、正真正銘、本物の神獣様なのですよ。
あ、あんまり拝まないであげて下さい…
オニキスちゃんが恐縮してますから…
ふう…頭のイカれた女だって云う、困った誤解は解けましたが…
職場にはオニキスちゃんを祀る祭壇が出来…
遂にはお花や供え物まで並びだしましたね…
ま、まあ…決して悪いことでは無いのですが…
そしてこのオニキスちゃん…やはり凄いですね。
誰かが接近すれば事前に知らせてくれますし、
机から物が落ちそうな時も、一瞬で糸で止めてくれたり…
なんなら、躓いて転びそうになっても転びませんよ。そう、オニキスちゃんがそれを許さないのです。
あっと言う間に糸で身体を支えてくれるんですよね。凄いんですよ。
え?…はい…
いや…仰っる通り、全くの無駄遣いですよね…
ええ、判ります。ですが…流石にここ、王城の中心で、
流石に命の危険なんて、そうは無いですからね…
でも、ただそこに居てくれるだけなのに、なんでしょうかこの安心感は…ああ、神獣様様で御座います。
おっといけない、また頬ずりしそうになりますね。フフフ…
王様にお聞きしたところによると、
ミュー様が食べた栄養を摂っている限り、分体のオニキスちゃんは食事の必要は特には無い…との事ですが、
それでは私が納得出来ません。お世話になるのだから、きちんとお食事は用意したいとそう言ったのですが…
魔蜘蛛って生き物のお食事は、血液や体液だと…
え?…ち?血を飲むのですか?
思わず聞き返してしまいました…
偉そうに用意したいとか言っておいてなんですが、てっきりお肉とか、お野菜って、勝手に思ってました…
血?…一体どうやって入手しましょうかね?
お城の食糧庫だと、もう既に、血抜きもちゃんとされてるでしょうし…
そうなると仕入れ業者?
いや、今は殆ど他国からの提供ですから、
流石にここで血抜きするような場面も無いでしょうね…
あ!
唯一の血の入手方法を思いつきました…が…
そうです、自分のですが…
ちょっとくらいなら平気ですけど…
…干からびて死んじゃったら、
流石に…辛いかな?
…これは一旦保留で…
そうだよね…お花じゃお腹は膨れないよね…
うーん…
王様はどこにだって行けるから、困る事も無いでしょうし…
そうだ、一度騎士長様にも聞いてみようかな。
騎士長様にも守護魔獣居るだろうし。
…
……
…って、訳なのですが騎士長様?
「ああ…そうだね。うちの蜘蛛も、そもそも毎日食事が必要では無いのだよ…数日は平気だよね…そして私は割と頻繁に外に出るからね。そこで食事を取らせるね。ああ、こっちは別に何もしないよ?蜘蛛が勝手に食事をして来るんだよね…」
そ?…そうなのですか?自分で?なる程…
まあ…そもそも人間よりも遥かに強いですものね。
ちなみに?
自分の血をあげようと考えたって、騎士長様に話したら、
「死にたいのか?」って、怒られましたよ?…テヘヘ…そっか…死ぬんだ…
何でも、凄く危険な神経毒を注入されて、
生きたまま、最後の一滴まで、全ての血を完全に抜かれるそうですね…
良かったわ、先に聞いておいて…ホントに…
ミュー様の子供でさえそうなのならば、
こっちは分体ですからね、それはきっと…ううう…ブルブルッ
想像しただけで恐ろしいです…心底震えますね。
ま、まあ…お外でお散歩でもしようかな。運動不足だし、護衛もいる訳だし…
そうね、そうしましょう。
それでもしも…また攫われそうになったら、
大きな悲鳴を上げようと思います。
ええ、頑張りますよ、悲鳴くらい…?
あれ?…本当に出来るのかな、私?




