今度こそ、御本人です。
ようやく視察が一段落しました。ちょっと休憩です。
さっきまで騒いでいた盗賊達も、今は足をさすりながらも、ちゃんと列に並んでいますね。
チラチラと王様の方を見ては目を伏せて…
いわゆる、ビビってるって感じでしょうか?
あれだけ大きな身体で強そうなのに、
あの後誰一人は立ち上がって、王様に向かっていかなかったって云うのも、
盗賊としてどうなのよ?…ちょっとどうかとも思いますが…
あの一撃で、盗賊達は完全に悟ったのでしょうかね?…こりゃ無理だって。
まあ…つまり、相当な辛い痛みって事ですかね…いやあそれは怖いですね。
私もそれを頂かないように、日々精進しましょう。
「エトラン様、先程のおう…いえ、あのお方のアレは一体?」
え、ああ、あれですか。
あれは巷では「罰」と呼ばれていますね。
あのお方は見たことも無いような、不思議な武器をお持ちで…
その金属の棒の様な武器で、相手の向こう脛の骨をこう…ゴチンって、ぶん殴るそうです、
「ヒッ!?」
ええ、判りますよ。ただ想像しただけでも、凄く痛そうですものね。
あんな凶暴そうな盗賊でさえ、もうみんな黙って並んでますからね、
きっと滅茶苦茶痛いんでしょう。
何でも確か…その武器は、バット…と、言う種類の武器だそうで、
特に王様のお持ちのバットには、
『ドラゴンこわし』って、名が有るのですって。
きっと凄い、伝説上のの武器なんじゃ無いかなって、私は思いますね。
なにせあの、うちの王様の武器ですからね。
そうそう、前に一度持たせて頂いた事も有りますよ。
あー見えて、そこまで重くは無かったですが、
私は王様みたいに、ブンブンとは振れませんでした。
でもね、あの武器…見た目は凄く地味で、本当になんの飾りっ気もない、ただの丸い鉄の棒なんですけど…
そこには細かい傷が沢山入っていて、
多分、その全ての傷には、きっととんでもない凄い物語が有るような、そんな気がしましたね。
「う、羨ましいわ、なんて羨ましいのよ、エトラン様…」
「そうよ、ご自分だけ、ズルいですわ?」
「良いなあ…羨ましいなあ…私もみてみたいなあ…」
うわ、しまった、自慢に聞こえたのかしら?
国家機密以外で、問題なく話せる、軽い小ネタだと思ったけど?
まさかの…嫉妬の嵐ですけど?
これはマズイわ。このままでは今後のお仕事に支障が…
これは大ピンチです。
よし、こうなったら、直属の上司に助けて頂きましょう。
そうです、そうしましょう。
では皆さん、どうぞコチラに…
皆さんを引き連れて、王様の元へ向かいます。
『お?どしたエトラン?』
はい、実はお願いが御座います。どうかお助け下さい、
でないと今後のお仕事に、悪い影響が出そうで、大変困っております。
『お?、おう…なんか事件か?』
実は…王様がご自身で王様だと名乗ったせいで、私は同僚から質問責めの毎日です。
ですが…国家機密が多すぎて、何も話せる事が無いのです…
『お、おう…』
そこで、取り敢えず王様の「ドラゴンこわし」を、一回、皆さんにお見せしたいのです。
『え?…ちょっと何言ってるかよく判りませんが?』
とーにーかーくっ、お願いします。
『へ?ああ、良いけど…ほれ…』
はい、では皆さん、順番にどうぞ、ご覧ください、これが…その伝説の武器ですよ。
わーわキャーキャー、皆さん大興奮ですね。
「こ、これが伝説の…」
「これで、帝国が作られたのね…」
「確かに傷が沢山…もはやこの傷さえも愛おしいわ…」
…
『へ?』ポカーンって、
ただ王様だけが、この状況がご理解出来てませんが…
フフ…でもあんなに呆気に取られる王様のお顔は、逆にかなり珍しい光景ですね。
よ〜く見ておきましょう。
『なあエトラン?これ…一体、何?ちょっと怖いんだが?』
凶暴な盗賊が怖がるお方を、逆に怖がらすなんて皆さん、とても凄いですね?フフフ…
おっと、
えー、皆さんですね、普段お会いできない…えーっと…その偉い、凄いお方に会ってですね、
なおかつ、その愛用の武器を見れたことに、大変栄誉を感じているのですよ。
『え?は、はあ…何それ?ただの、バットなんだが…』
はい皆さん、そこまでです。充分見たでしょ?もういい加減お返ししないと、流石にご迷惑ですよ?
「「あ、ありがとう御座いましたあ…」」
『お、おう…?泣いてる?どした?目が怖…』
皆さんキレイにお礼をされてます。
勿論、無理をお願いした私も。キレイにペコリです。
ああ、また王様が、ポカーンって…
まあ…これで皆さんも多少落ち着くでしょうか?
流石は伝説の武器です。ありがとう御座いました。
また、何かあったらお願いします。




