エトランの一日…アーラント編
復興担当者としてアーラントに赴任してから、はや一月くらいが経ちました。
二回ほど、帰国して休養が与えられたものの、
ただ、寝て起きただけで、何もしてません。
自宅に帰った意味?
勿論、自分の枕、ベッドこそが、この世で一番良い場所なのですよ。
…っと、そう、言い訳するのがやっとですね。
どうせなら美味しいものを、お腹いっぱい食べたかったのにな…
国から派遣された、私の仕事の補佐をして下さる方々も、ようやく到着しました。
私なんかが霞む程の…まあ、それはそもそもってお話ですが、
とっても偉い方々ばかりで、かなり優秀ですね。かなりの情報が、キレイに纏められて行きます。
同じ様な案件は全て統合されたり、一つの事案としては面倒な者は分割され、
膨大な書類の高い壁は、日毎に高さが落ちていきました。
有り難いのですが、ここ迄優秀なのだから、この方達が全ておやりになれば良いのでは無いかと…
時々ふと、頭に過ぎります。
そこが気になって仕方が無いので、ある時王様に直訴しました。
私なんかよりも、皆様遥かに優秀ですよ?っと。
『残念だがな、担当者がエトランなのは、姫のご指名だからだ…ほら余計な事は何も考えるな、ほ〜れ、このたこ焼き食って、笑とけ、笑ろとけ…』あーッハッハッハ…
そう言って王様は…
忽然と姿を消してしまわれました、
ただ、高笑いだけを残して…
休憩をかね、皆様と一緒に、王様の差し入れの、たこ焼きを頂く事にしました。
何故か…お姫様も一緒に。
皆様、一様に美味しい、美味しいを連呼されてますね。確かに美味しいのですが、
帝国内じゃ、それほど珍しい物でも無いと、私は思ってましたが…
意外や意外、貴族での方々は、殆どお食べになる機会が無いのだとか…
メガネが似合うソフィア様が、以前食べた物よりも、断然こっちが美味しいですねと、そう仰ってます。
ソフィア様のお家の近くって…
つまり、偉い方々の住居が有る、外周部付近のたこ焼き屋さんって、
本家の…王様直伝のお店の無断コピー…だと、以前たこ焼き屋のお兄さんから、そう聞きましたね。
ですが、これが本来のたこ屋の、王様の考案されたレシピのたこ焼きですよっと、
皆様に教えて差し上げました。皆様は大変驚かれていました。
そう言われて見れば、王様直伝ってお話は極秘事項でしたっけ?
…お客が殺到する危険が有るからって…
もう、バレましたが…
ちなみに、私の実家、すなわちサント嶺のマイトカについては皆様誰も、馴染みが一切無いようで…
「噂では聞いた事があります…」
「マイトカは実在したのですね…」
と言った、大変辛辣なご意見を多数…
まるで…都市伝説の様な扱いを頂きましたが…
私本人?は、あの両大臣から抜擢された奇跡の逸材だと…
それについては、かなり有名な話の様で、
かなり複雑な心境ですね。
嬉しいのやら悲しいのやら…
割と悲しめですが…
そして、どれ程良い家柄だろうが、どれ程優秀だろうが、
帝国の中枢に入れる人材など、ほぼ一握りの中の一握りだと、
奇跡よりも難しいのだと、何故か皆様から、称賛をされました…
どんな秘密が…って?
お城の入り口で、門番と言い争っていたら、たまたま偶然、それを大臣様に見られていた、
ただの、厨房係に選ばれただけの、田舎貴族の小娘なのですが…
そんな事は言えそうに無いです、
まさか、こんな優秀な方々から、
まさか、私が羨望の眼差しを受けようとは、
人生って、分からないものですね…
正義の定義がそれぞれの立ち位置で変わるように、
羨ましいって思う事も、思われる事も、
また、立ち位置で全然変わるのですね。
まあ、悲しい事にそれでもサント嶺は、
完全に、都市伝説の様ですが…
お父様には、もっと知名度を高めなさいと、叱咤激励の手紙を書きましょう、…速達で送ります。
たこ焼きを頂きながら、皆様と色々なお話をしました。
勿論、お姫様も一緒に。
お姫様はまあ当然ですが、
ソフィア様もシャイナ様も、マゼラン様も、意外と外の情報には疎い様で…
なにせ、お家から学校、お家から職場…常に馬車移動で、
ご近所に何が有るのかさえ、余りご存知無いそうですね。
うちの実家は…そもそも何も無かったですが…
遠くまで見通せますし。
近所が、それ自体大きな庭みたいな…自然豊かな庭でしたので、
木登りだってしましたし、カエルを捕まえた事も有ります、
なんなら…魔獣もチラホラ出ますしね…
そっか…こうも違うものなんですね~。
そうですか…私が木に登って降りられ無くて泣いてた頃、
ソフィア様は馬車移動でしたか…
ま、まあ、これも立ち位置の違いって事ですよね?
さて、ではそろそろ、お仕事を頑張りましょうか、皆様?
これ以上…お話が続くと、今にも私の心が折れそうなので…
途中、お茶を挟み夕方まで、お仕事は続きます。
特に大きな問題も無ければ、その後で夕食です。
ですが…質素です。当然ですが、質素なのですよ。量も無いです。
これが未だに慣れません。ここに来る直属まで、
王様と居れば必ず、美味しいモノにありつけましたから…
うちの応援部隊の皆様も、頭では判っていても、受け入れるのは辛い面がありますね。
お姫様がずっと謝罪して来るのも辛いですし。
でも、今は我慢の時なのです。皆で頑張っていきましょう。
そして、落ち着いたら、国に帰って、皆で美味しいモノを食べ歩きしましょう。
なにせ、私の知っているお店は全て、王様のレシピですからね。
皆様、きっと驚きますよ?
はいはい、約束ですからね。
当面心だけでも、盛り上がっていきましょう。
夕食が終わると、自由時間なのですが…
もう一度職場の大広間に戻って、軽く明日の予定を確かめたり、明日の準備をしておきます。
お風呂は三日に一回です。なにせ水も薪も貴重品ですからね。ここも我慢です。
そして全てが終わったら、ベッドに飛び込んで…
そこで意識が途切れます。
まあ大体、こんな感じですよ。




