アーラント国へ
その日繭に入って、私と騎士長、そしてリースベラ大臣様が、
一路、アーラント国へ向かって旅立ちました。
でもまあ…
一瞬、ですけどね。
少し遠くにアーラント国のお城が見える位置で繭から出て…
突然現れた、大きな三頭の黒いグリフォンと小型ですが豪華な馬車?
その、三頭のグリフォンで引く馬車…いや、グリフォン車なのかな?
…に乗って、そこからお城まで進みます。
この三頭のグリフォンも、ジョンさんのお子様達で、
それぞれジョー、ジョンソン、そしてジョータロー、と言うお名前の三兄弟なのだそうです。
蝗害の被害がアチコチに見受けられます。
飛来した多くの虫を焼こうとして、結果、大きな火事が起きるのは、蝗害ではよくある事らしく、ここもアチコチの家々が焼け落ちています。心が痛みます…
そんな、被害が大きいエリアを通って、お城の正門に到着しました。
私達を見て、衛兵がコチラに駆け寄って来ますね。
あれ?持ってた武器を、横に投げ捨てましたよ?
「ああ、武器を持ってると前の三頭のグリフォンにすぐ様、襲われてしまうからね…」
え?…あんなに大人しいのに、襲うんですか?
「ああ、良いですか?あくまでも…あのグリフォン達の主は、唯一うちの王様だけなんですよ。その王様の命令で、
『我が国の臣民に剣を向ける者は、何人であれ全て滅ぼせ』と…そう命令されてるんです…」
「事前にそこは、キチンと相手側に説明はしているからね。そもそもだよ、グリフォンにとって人間なんて、ただのエサだからね。しかも賢いんだよ。グリフォンに剣を見せるなんてさ、どうぞ殺してくれて構いませんって意味だ…それじゃ本当に、ただの自殺行為だからね…いや剣一本くらいじゃ、そもそもあんなのに、到底勝てやしないけど…」
ああ…そうなのですか?さっき迄あんなに愛想の良かったグリフォン達が、
どうりで恐ろしいうめき声を上げて、衛兵を威嚇してますものね…
衛兵さん達の怯えようが、もう尋常じゃ無いですが、大丈夫かしら?
そもそも、あの子達って、魔獣どころか神獣様ですものね…
私達の感覚が、ズレちゃって、ちょっとおかしいだけで…本来、死の象徴とか言われてますよね。
「ようこそお越し下さいました。御一行様をご案内致します、私、マゼンと申します」
「ご苦労で有る。コチラは我が国王の代理で参った、我リースベラ、そしてエルドン、エトランの三名である…そちらの国王に、直ちに面会を申し入れたい…」
リースベラ…その名前を聞いた瞬間、衛兵さん達がすぐ様膝をついた。
「直ちに、ご案内致します、どうぞコチラへ…」
馬車?から、先頭の一頭を離して…どうやら私達に同行させるそうです。護衛として…
騎士長さんがグリフォンの装具を外してます。
後ろの二頭はお留守番の様ですね。
先頭のグリフォンは他の二頭より、少し大きい子です。身体の色も少し赤みを帯びていて、凄くキレイです…
え?ジョータローさんって言うんですか。覚えました。
前を歩く衛兵が見てない時は、こっちに頭をスリスリして来るのに…
衛兵さんが振り返る瞬間、急に衛兵を威圧してますが…フフフ…
ホントに賢い子なんですね~。
長い廊下を進んで、ようやく大きな扉にたどり着き…
「帝国より、使者の方々が参られましたっ…」衛兵さんが大きな声で告げると、大きな扉が開きました。
大きな部屋の一番奥の、少し高い位置の椅子から、若い女性?が立ち上がって、その目の前の階段をゆっくり降りました。
コチラもゆっくりと前へ進んでいます。
前に大臣様と騎士長さん、その後ろの、真ん中辺りに私、
最後にジョータローが続きます。
「ようこそ、遠路はるばるよくぞお越し頂きました、リースベラ様、お久しぶりで御座います」
「これはアーラントのお姫様、ご機嫌麗しゅうございます…」
「エルドン騎士長様も、ようこそお越し頂きました。で…そちらのお嬢さまは…?」
「おっと、これは申し訳御座いません。紹介致します。コチラは我が王より、全ての権限を預かっております、エトラン国王代理に御座います」
「こ、これは大変失礼致しました、私目は国王が娘、アントワールと申します…」
あ、あああ、ど、どうも、え、エトランで御座います、宜しくお願い致します。
「ところで姫様、王様は如何なされたのですか?何処かお身体の具合でも…?」
「はい、申し訳御座いません…先の蝗害の対策で現在、王は最北の砦にて、復興の指揮を執っております故、ここには来れず…私が王の代理をするように命を受けております、申し訳御座いません…」
「そうですか、わざわざ国王自らとは、感服いたしますな…」
あら…
ここに来る前に、大臣様が言ってました…
もしも王が出て来ない時は、王が今回の件の首謀者で間違い無いって。
なにせ、うちの王様には、嘘が効きませんのでね、ハッハッハ…って大臣様は笑っておられましたが、
まさにその通りでしたか。
「あと…長女の姫様と、その弟がおりますが…姫様が出てくれば、何とか関係の修復を望んでいて…弟の場合は、もう完全にバックレるつもりでしょうね」
うわー…最初っから、全部お見通しだったんだ、大臣様は…
そして、挨拶が終わると別のお部屋に案内されました。
案内されたお部屋では、とても座り心地の良いソファーに座る様に促され、皆でそこに座りました。
そこにお茶が運ばれ、姫様と私達の会談が始まりました。
「この度の蝗害では、多くの草民が家屋を、家族を、全てを失い、我が国も大変な状態で…」
「ええ、我々も存じております。なるべく出来る限り、お力になれたらとは考えております…」
「ありがとう御座います…」
「ですが…実は少々、問題が御座いまして…」
騎士長さんが、とても困った顔で静かに、姫様に話しかけました。
「え?…それは一体?」
姫様が困惑しているのが分かります。
「はい、大変申し上げ難いのですが…」
今度は、大臣様が話始めます。
本年度最終ちなりました。お読み頂いてありがとう御座いました。
来年度も宜しくお願い致します。
良い新年をお迎え下さいますように。




