葛藤からの…カレー?
ほら、顔から火が出る様だって、たまに言いますが…うふふ、火なんて出ませんよ?
だって、それはあくまでも例え話ですものね。
ただ…お湯くらいなら簡単に沸かせるんじゃ無いかなって思える程に、
今…私の顔はとっても熱いです。
きっと、凄く赤いと思います…
皆様…まるで珍しい生き物でもご覧になられてる様ですが、私は至って普通の人間ですよ?
ヘンリエッタ様や、一部の方を除き、このお部屋にいらっしゃいます偉いお方は全て、
軍人さんや兵隊さんを経験済みな…しかも、相当な兵でいらっしゃるそうで…
気配を殺し、音も立てず接近する事など、造作もないんだそうですね…
騎士長さん、その説明は有り難いのですが…
でも…出来ればもう辞めて頂きたいのです、
「…ヒッ?!」って、
…思わず悲鳴あげちゃったじゃ無いですか?ビックリしますよ?
「そうだな…かつて私もその葛藤と戦ったな…」
「誰しも、一度は通りますものね…」
「自分の若い頃も、こんな感じだったんだろうな…」
皆様…染み染みと語ってますが、いい加減もう勘弁して下さい。
『まあ…これはある意味、いい機会かもしれんよな?きっともう、俺達がすっかり忘れちまった、あの頃の…初心ってやつを思い出すにはよお…』
王様も染み染みと、ゆっくり噛み締めるようにお言葉を発せられた。
『あの頃を覚えているか、エルドン?…いや、泣き虫エルくん?』
「ちちょ、ちょっとちょっと…そりゃ一体、いつのお話ですか、王様?」
「おいおい騎士長よ…私からすれば、結構つい最近の…だぞ?」
「ちょっと…よして下さいよ、何ですかもうっ、エギラ大臣まで?」
アハハハハハハ…
皆様がそれぞれ席に戻っていかれる間、会議室には笑いが広がっていた。
『まあ…区切りもついたし、丁度良い時間じゃね?』
「…そうですね、では、運ばせましょうかね」王様とリジャディード様の会話があって…すぐ様食事が用意されました。
本日のお食事は、大きなオムレツが乗ったオムカレーだとお聞きしました。
見た目だけで理解できてしまいます…絶対に美味しいのだと…
ええ、もぐもぐ…やはり美味しいですね。
周りは直ちにおかわりの応酬が展開されています。
シーフードカレーでは遠慮して、遅れをとってしまいましたので、
ここは急ぎ、その列に加わって行きます。
良かった…無事事なきを得ました。大満足です。
『ごちそうさまでしたっ!』
美味かった。王様も満足され、お言葉を発せられた。
『で?…あの頃を覚えているか、エルドン?…いや、泣き虫エルくん?』
「もーう、そろそろ勘弁して下さいよ、王様…いや、素敵なお兄さん?」
「騎士長さんったらねえ…いっつもサラちゃんに慰めて貰ってたわよね~」
「ちょっと…もうよして下さいよ、何ですかっ、エッタさんまで?」
ハハハハハハ…
会議室は穏やかな空気の中、皆様の笑いが広がっていた。皆様とても偉い立場で、とても重要な会議の場なのに…
本質的には皆様、穏やかでお優しいのね、きっと…
『ふう…腹も膨れたし、次はお茶じゃね?』
「…そうですね、では、運ばせましょうか」
リジャディード様の合図で、あっと言う間にそこに、今度はお茶の用意がされました。
王様も、コーヒーをお飲みになられてます。
『フフフ…今一度問うぞ、お前はあの頃を覚えているのか、エルドン?…いや、鼻垂れエルちゃんよ?』
ハハハハ…
何度もいじられて、騎士長さんも流石にちょっと疲れた様ですが、大丈夫かしら?
『ところでエトランよ、お前がたどり着いた答え、そいつを皆にも聞かせてくれよ?』
へ?…きゅ、急に?
え?あの?一体…わ、ワワワ…
わ、分りました、
えーっと…ですね…、結局、生きていくって事は、それだけで、誰かの犠牲が伴った上で成立してて…
幾らコチラが正義だと思っていても、それはあくまでコチラにとっての正義で、
それ以外のとこには、それも悪になり得るのだと…
だから、だから私は、自分の出来る事を一生懸命やって、
王様や、この国の為に生きていこうと、そう思いました。
『ほお、立派な答えだな、お前が見つけたそれで、俺も良いと思うぞ』
皆様から、なぜか拍手まで頂きました。
また顔が熱くなっております…
唯一、騎士長さんだけが、優しい目でそっとこっちをみていました。




