世界は、想像よりも遥かに残酷でした
号泣する私に、王様はそっとポケットのハンカチを差し出してくれました。
そして…泣きじゃくる私が収まるまでの間…
何も言わず、ただずっと、私の側に居て下さいました。
わかってます…再び自分の足で、自分の意思で立ち上がれと…きっとそう云うお考えなんでしょうね…
きっと、王様御本人にもそんな時が有ったんだなと、こんな私でも…今ならすんなりと理解出来た。
そうか…
だから…きっと、いつもおふざけてらっしゃったのか…
御自身で受け止めるその悲しみが余りにも…
世界中の誰よりも深すぎるんだ…だから、せめてって…きっとそんな感じなんだわ…そうね、いつまでもウジウジ、クヨクヨしてたって、
きっと王様なんてお仕事、やってられないでしょうからね…
私が泣き止んだその後で、王様は繭を出され、私達は何処かに移動した。
前に聞いた、優しい鈴の音がして…
繭を出るとそこは、 何処かの…大きなお部屋の中ですね…?
目の前で、多くの兵隊さんが膝をつき、そして頭を垂れて居られますね…あ!
少し離れた場所でしたが、以前お会いしたアーデ将軍がいらっしゃいますね。
つまり…ここって、将軍様達のお帰りの道中って事でしょうか?
お部屋が左右に揺れていることから、恐らく海の…船の上なんだと、なんとなく思いました。
『うぉっ押忍っ!』
「「「押忍!!」」」
え?…お?オス?…
『…楽にしてくれ、今回もお疲れさんでした、皆無事か?怪我は無いか?』
「はい、皆無事、五体満足で戻りました」
『うん、そうか…そりゃ僥倖だ、では報告を…』
「はっ、作戦目標は全て、予定通り完遂致しました。また、一部の盗賊らの情報も、新たに幾つか入手致しました」
『ほお…そりゃ楽しみだ、ところでアーデ…』
「ハッ」
『言いにくいんだが…横の嬢ちゃんが泣きつかれててな、もうすっかり空腹なんだよ…なんでさ、直ちにテーブルの用意を頼むわ…』
「ハッ、全員、急げ!」
「「御意!」」
え?…ええ?私?え?
あっと言う間にテーブルの用意が出来上がって…
そこに王様が、大きなお鍋を何個か、どこからか取り出しました。
たちまち多くの兵隊さんによって、それこそあっと言う間に、全ての用意がなされてしまいました。
抜かったわ…せめてお水くらいはと思ったのに…
全く、微塵も出る幕が無いとは…まさに手も足も出ないとは…流石は最強の精鋭部隊って事なのかしら?
王様がお出しになったのはカレーで…
なんでもシーフードカレーと呼ばれる、この部隊の為だけに、王様が特別に作られたメニューだそうです。
『頂き…押忍っ!』
「「「押忍!!」」」
へ?…何?押すの?
お食事が始まりました。恥ずかしながら、王様が言ったまさにその通りで…散々泣いたらお腹ペコペコでした。
え?ひょっとして…お腹なったの聞かれてたのかしら?…ヤダ…恥ずかしい…
言うまでもなく、このメニューも断然に美味しのだった…知ってた。
上に乗ったイカの切り身や揚げたものは、アーデ将軍の好物だそうです。実際、好物じゃ無くても大変美味しいです。
多くの兵隊さんがいるので、なるべくおしとやかに頂きます…頂きたいのですが…これは無理かも?
凄く御出汁が効いていて、とにかく味わい深くて…美味しいのですよ!
兵隊さんらも、次々におかわりをされてますね。
今すぐに、私も飛んで行きたかったけど…これは彼等の為の、特別なお食事だもの…
私はぐっと我慢した。
おかわりの列が無くなるまで、じっと耐えた。
最後の最後まで…
ようやく向かったカレーのお鍋には、
既にきれいさっぱりと、何も、何も有りませんでした…
そっか…そうよね…
世界って…結構残酷でしたね…
悲しいけど…これが世界の現実なのね…




