表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/42

世界は、想像よりも遥かに残酷でした

 号泣する私に、王様はそっとポケットのハンカチを差し出してくれました。


 そして…泣きじゃくる私が収まるまでの間…


 何も言わず、ただずっと、私の側に居て下さいました。


 わかってます…再び自分の足で、自分の意思で立ち上がれと…きっとそう云うお考えなんでしょうね…


 きっと、王様御本人にもそんな時が有ったんだなと、こんな私でも…今ならすんなりと理解出来た。



 そうか…


 だから…きっと、いつもおふざけてらっしゃったのか…


 御自身で受け止めるその悲しみが余りにも…

 世界中の誰よりも深すぎるんだ…だから、せめてって…きっとそんな感じなんだわ…そうね、いつまでもウジウジ、クヨクヨしてたって、

 きっと王様なんてお仕事、やってられないでしょうからね…



 私が泣き止んだその後で、王様は繭を出され、私達は何処かに移動した。


 前に聞いた、優しい鈴の音がして…


 繭を出るとそこは、 何処かの…大きなお部屋の中ですね…?


 目の前で、多くの兵隊さんが膝をつき、そして頭を垂れて居られますね…あ!

 

 少し離れた場所でしたが、以前お会いしたアーデ将軍がいらっしゃいますね。


 つまり…ここって、将軍様達のお帰りの道中って事でしょうか?


 お部屋が左右に揺れていることから、恐らく海の…船の上なんだと、なんとなく思いました。


 『うぉっ押忍っ!』

 「「「押忍!!」」」


 え?…お?オス?…


 『…楽にしてくれ、今回もお疲れさんでした、皆無事か?怪我は無いか?』

 「はい、皆無事、五体満足で戻りました」


 『うん、そうか…そりゃ僥倖だ、では報告を…』

 「はっ、作戦目標は全て、予定通り完遂致しました。また、一部の盗賊らの情報も、新たに幾つか入手致しました」

 『ほお…そりゃ楽しみだ、ところでアーデ…』

 「ハッ」

 

 『言いにくいんだが…横の嬢ちゃんが泣きつかれててな、もうすっかり空腹なんだよ…なんでさ、直ちにテーブルの用意を頼むわ…』

 「ハッ、全員、急げ!」

 「「御意!」」


 え?…ええ?私?え?


 あっと言う間にテーブルの用意が出来上がって…


 そこに王様が、大きなお鍋を何個か、どこからか取り出しました。


 たちまち多くの兵隊さんによって、それこそあっと言う間に、全ての用意がなされてしまいました。


 抜かったわ…せめてお水くらいはと思ったのに…

 全く、微塵も出る幕が無いとは…まさに手も足も出ないとは…流石は最強の精鋭部隊って事なのかしら?


 王様がお出しになったのはカレーで…


 なんでもシーフードカレーと呼ばれる、この部隊の為だけに、王様が特別に作られたメニューだそうです。


 『頂き…押忍っ!』

 「「「押忍!!」」」

 

 へ?…何?押すの?


 お食事が始まりました。恥ずかしながら、王様が言ったまさにその通りで…散々泣いたらお腹ペコペコでした。


 え?ひょっとして…お腹なったの聞かれてたのかしら?…ヤダ…恥ずかしい…


 言うまでもなく、このメニューも断然に美味しのだった…知ってた。


 上に乗ったイカの切り身や揚げたものは、アーデ将軍の好物だそうです。実際、好物じゃ無くても大変美味しいです。

 多くの兵隊さんがいるので、なるべくおしとやかに頂きます…頂きたいのですが…これは無理かも?

 凄く御出汁が効いていて、とにかく味わい深くて…美味しいのですよ!


 兵隊さんらも、次々におかわりをされてますね。


 今すぐに、私も飛んで行きたかったけど…これは彼等の為の、特別なお食事だもの…


 私はぐっと我慢した。


 おかわりの列が無くなるまで、じっと耐えた。



 最後の最後まで…



 ようやく向かったカレーのお鍋には、


 既にきれいさっぱりと、何も、何も有りませんでした…



 そっか…そうよね…




 世界って…結構残酷でしたね…



 悲しいけど…これが世界の現実なのね…


 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ