無事、帰って来れました。
小さな集落で…色々有りましたが、ようやく王様がお戻りになられたのは、皆が出発の準備を終える、ほんの直前でした。
「困りますよ?我が神よ、彼女にも黙ってお出かけとは?」
『え?ああ、そうだな、急に良い事思いついちゃってさ、しかも…あれは絶対、見ないほうが絶対いいヤツだったからさ…』
「え?…そりゃあ一体どういう…?」
『まあ…ちょっと俺に喧嘩売ってくれたそのお礼にさ…とっても素敵な贈り物をね…差し上げたったのさ…ただ、思ってたよりも大分多くてさ、苦労しまくったのよ~、マジで苦労したわ、キモいしさ、もうメッチャ大変だったんだぜ?…』
『そうそう…もうこの山の麓辺り迄、アーデんとこは来てるみたいだからさ。なんで俺は、此処いらで先にお暇させて貰うわな』
「そうですか、了解しました、わざわざご足労頂き、ありがとう御座いました」
えーっと…王様、無事にお戻りになられましたね。先ずはお帰りなさいませ。
『お、おう…』
後…出来れば、出来ましたなら、今後は是非、何処へ行かれるのか…どうか私目にもお伝え願いませんでしょうか?
『え…あ、はい、えーっと…努力します…ってか、俺達もう帰るからさ、エトランはとっとと繭に入ってくれるかしら?』
へ?…あ、あのー…?
随分と急ですね?
か、帰るんですか?えーっと?あ、アーデ将軍はお待ちにならないんですか?
『ああ、そうだ。何故か俺に遅れた分…次に一層、アイツらは張り切ってくれるからな…』
はあ…分かりました。
『おっとエルどんよ、これ…皆に配ってくれや、皆の朝飯だ…』
「おお、なんと握り飯ですか、こういう時…意外と皆、こんな質素な方が、何故か喜ぶんですよね…」
『ウソ?…カレーじゃ気に入らんとでも?』
「いえいえ、あれだともう、ここでは余りにも現実感がなさ過ぎて、まるで夢みたいで…
寧ろこっちの、この握り飯の方が精神的に安心できると言いますか…寧ろ、こういうので良いんだよって、いうのか…」
『おお、安心感?なる程な…ちょっとそれは分かる気がするな…』
…なんてお話の後、王様と私は一足先にお城へと帰還致しました。
私はその足でヘンリエッタ様に簡単にご報告をして、詳細は明日にって事でした。
その後で自室に戻り、そのまま朝まで眠り続けてしまいました。昨日までちょっと…無駄に緊張し過ぎた様で、実は自分が思った以上に疲れていたようでした…
そして次の日。
お風呂に入って身支度を整え、急ぎ向かうのは17歩先の、我が職場です。
そもそも…ここに王様が来るのかどうかも、ヘンリエッタ様を始め、誰にも判らないとの事で…多分、それを私にさせたいのだろうとは思いますが…
それって…王様に命令するようなもので…普通は死刑だから、絶対に。
幸い?うちの場合、王様は簡単にそう言う事をなされないお方だっていうだけで…
いや…そう言えば盗賊には、一切のお慈悲をお与えには無られなかったよね…
つまり?そのご機嫌を損ねたら、それが私の最後…なんだわ、きっと。
そうこうしてたら、下から馬車の音が聞こえたので、急いで下に降りました。
今日はヘンリエッタ様と、リースベラ大臣もご一緒でした。
どうやらリースベラ様も、昨日のお話を聞きたかったご様子です。
皆で上に上がって、急ぎお茶の用意をしました。
そこから改めて、私に起こったその悲劇を…おっと違った…
王様の行動の全てを事細かく、なるべく詳細にお話させて頂きました。
先ずは味方の、山賊さんのアジトに行って、
美味しい焼きそばを頂いて…
そして、何処かの高い高い山の、その山頂に行ってそこから飛び降りて…傭兵さんを追っかけてた盗賊を懲らしめて…消し去って…
そこからまた、何処かも知らない小さな集落に行って、傭兵さんと合流して…
いや…その前に美味しいカレーを頂いてました…凄い山奥で、
しかも、立派なテーブルの上で…
村で、私は皆さんのお手伝いをしている間に、王様は数回、何処かへお出かけになられた様で…
その間の事は、何も教えては頂けませんでした…
そして…朝が来て、アーデ将軍の到着の直前に、帰ると言われて戻ってまいりました…
ヘンリエッタ様がおっしゃいました…
「え?あそこの、あの特製焼きそば…ですって?」
リースベラ様も、 「そうですか…現場で食べるとカレーって無茶苦茶美味いんですよね…」っと…
え?…そこなの?
そうこうしていた矢先に、突如目の前に現れたのは、噂のその人…王様御本人でした。
『よお、おはようさん…』
皆立ち上がり、直ぐ様膝をつきました。
王様は、直ぐ様いいよって仰って、
皆は椅子に座って、私はダッシュでお茶の用意をしました。
『おお、サンキューな』私からお茶を受け取って、王様が笑顔を下さいました。
「で…お一人で一体、どちらにお出かけなさって居たのでしょうか?」ヘンリエッタ様が王様に問い詰めます。
『それ聞く?…えーっとさ…ほら、前の会議でもちょっと話してた蝗害…あの、バッタ共の進路をさ、無理矢理捻じ曲げったんだよ。でもさあ、バッタ共の数が無茶苦茶多くてさ…中々纏めて同じ方を向かせるのに、そりゃメッチャ苦労したわ、何しろその規模も相当に広範囲だったからな…海の方向へは絶対行かないしさ、あっちをいじるとこっちが逆向きーの…ってさ…発狂しそうだったわ…』
え?…私が寝落ちしてる間、王様はずっとお一人でバッタと戦ってたんだ…うわあ、さすがに心が痛い…
私は馬鹿だっ、焼きそばとか…言ってる場合じゃ無かった…
「それで…どの程度、蝗害の進路は変わったのでしょうか?」リースベラ様もお聞きになった。
『ああ…限りなく全部、アーラントの方に行ったよってか、行かせたったわ。…分離しちゃった枝分かれは、流石に処分せざるを得なかったけどさ…
なるべく殺さずに、全部を生きたまま方向転換させるのは、流石に骨が折れたよ…結局最後はミューも九郎も…ジョンの一族までも総動員したしな…』
そう言って、王様はお茶を飲み干された。
私がおかわりを?って、そう聞くより先に、『おかわり』って器を私に向けて差し出された。
急ぎ、器にお茶を注いだ。
『あと…傭兵団の居た集落の近くに、何人か諜報っぽいのがいたんでさ、みんな纏めて軽く挨拶したった…』
「やはり、アーラントの手の者でしょうか?」
『いや…どうももっと違うとこぽいな、みんな俺見てあっと言う間に自害したもんな。まあ…その遺体は確保してあるからな…犯人探しは意外と楽勝なんだけど…』
「ほお…そりゃ律儀な事で…恐らくこっちの、益々連合の関係者やも知れませんな…」
『うーん、そうかもな…そもそも全部が全部、お友達って訳でもないからな…』
「そうですね…幾つか怪しげなものも、小耳には挟んでおりますし…フフフ…呆けの気を引き締める意味でも、ちょっと幾つか私も挨拶にでも伺いましょうかね?」
『そりゃ良いや、めちゃビビるだろうね、まさか急に親戚さんが来たらさあ…』
「で…恐らくアーラントは泣きついて来ると思いますけど、神様はどうされますの?」
『うーん、なら…いっそ今回の首謀者全員の首でも…揃えてもってこいやって、言ってやろうかな?』
「もし…そこに向こうの王族が絡んでたら、かなり面倒なんでどうかそれはお辞め下さいまし…」
『お、おう?…王族だけに…』
え?…
『ま、まあ…取り敢えずは、向こうの態度次第だな…黒幕は軍部の一部って話だけど…そもそもうちより小さい国だからな、実は国の総意でした〜って事も、まあ…無くは無いんだよな…』
『なので…取り敢えずは…』
「取り敢えずは?」
『うん、朝飯かな?』




