真王様はお考え中です。
真王様は腕を組み、うーん…っと唸りながら、お考え中だった。
私は、
「お茶でもご用意致しましょうか」っと声を掛けた。
ん?…ああ、そうだな、二つ…いや、三人分頼むわ。
王様はそうお答えになられた。
私は席を立ち、台所の場所を聞き、そちらへ移動した。
綺麗に整頓された台所は確かに、
以前見せて頂いた、あの、軍の台所みたいで…
流石は、中身は軍人さんなんだと、少し感心した。
お茶の用意が出来て、それを会議室まで運ぼうとした時、
側にいた山賊さんが、運びますよと、声を掛けて下さった。
「ありがとう御座います、ですが…これが私に今出来る、唯一のお仕事ですので、どうぞお気遣いなく…」そう言って、お断りして、お茶を運んだ。
…これを運んで貰ったら、もうぶっちゃけ、私はここに要らんぞっと。
真王様とマリアスさんにお茶をお出しすると、真王様が急に仰った、
「折角来たんだ、お前の意見も聞かせてくれ…」
何故…お茶が三人分かって…これ、私の分でしたか…
で…どう思う?っと、
まかさ、いきなりそう聞かれて、私は思わず固まった…
「え?………」
いやまあ…無理か、そうだよな。
うーん、プチッと丸ごと潰すんなら、今すぐ終わるんだけどな…
「いやいや、流石にそれは…」
ん?、ああ、勿論冗談だぞ、半分は…
「「半分かいっ、!」」…あ、思わず突っ込んでしまいました…
何故か私を見て、真王様は笑顔で親指をぐいっと立てた…
もう…アレだな…
この際、入れ替えでもするか?
そもそも、全てが想定外だった訳だが…今後も、またこう言う事も起こり得る可能性も、まあ…有る訳だしな。
傾向と対策だな…いや、知らんけど…。
取り敢えずは、普通は全面的な殺し合いだよな…
「は?」
いやいや、本気のやつじゃ無くってさ、うちの場合はそれも小芝居で…
つまり…傭兵団と、お前等が殺し合い(お芝居)をして、
結果まあ…お互いにほぼ半壊の、痛み分けって感じで…
で、そこで死んだ(事になった)盗賊と傭兵は…そっくりそのまま、盗賊は傭兵に、傭兵は盗賊にジョブチェンジしよう。
いきなり全部だと、流石にバレバレだからさ、ちょっと時間を掛けて…
これを機会に、今後盗賊稼業側は、覆面でもすりゃ、良いよね。
ああ、本国の若いのもちょこっと混ぜりゃ、もう絶対に判らんだろ?…多分。
で、だ。
コウモリに対してのペイバック…奴らの縄張りをちょっと超えたあたりの、
小さめの拠点かなんかを一つ、ぶっ壊しときゃ、まあ…今回はそれで良いかな。
そして…
肝心の傭兵団の保護だけど…今、何処ら辺に居るんだ?
「はい、恐らくですが…随分奥側の…西の大森林かその横の、鉱山地帯辺りまでも、逃げておるのではないかと予想しております…」
つまり…詳細は不明だと?ふーん、
そうか…よしじゃあ、ちょこっと探してくるわ。
じゃ、早速行こうかエトラン、では繭に入ってくれる?
は、はい。
ほい、着いたよ。足元には気を付けろ?
また突如目の前に現れた繭に入って、その次の瞬間には、
まさか…
何処かも判らない、大きな大きな山脈の…
その、一番高い山の頂上でした…
辺りには強い風が吹き荒れているのに、私達の周りは何故か…至って静かですけど…?
更に…
ふと横を見ると、あの…お城にいた、大きなカラスさんが…も?そこに居ました。
そして、カラスさんが急に?
ご丁寧に、ご挨拶をしてくれました…
「そこな娘よ…我の名は九郎だ…」
え?あ、はい…あ、あの…わ、わ、私は、エトラン…です、どうぞ、お、お願い…します、
よし、自己紹介は済んだな。
じゃあ早速…どこぞに隠れてる、うちの傭兵団を探してくれ。
九郎よ…サーチアンドデストロイッ、サーチアンドデストロイだっ!!
「了解した…」
カラスの九郎さんが目を閉じた…
…
…
「見つけた…敵数八、獣人三、人間三、人獣二…」
よっしゃ、ご苦労さん、それじゃあ行こうか。
え?あのー…ここって、頂上ですけど?
高く飛び上がった九郎さんが、上空を大きく旋回した後、一気に急降下してきて…
王様は右腕を上げて、更に私を左手で抱え込んだ…
そもそも…私は男性と深く関わった事も無い上に?
ましてや急に、男性に、いやいや、王様に抱きかかえられるとか??
しかも…正真正銘の、本物のうちの王様よ???
突然過ぎて、驚き過ぎて、完全に固まってしまった…
九郎さんが直ぐ真上に来た瞬間、王様が九郎さんの脚を掴んで…
とても理解が追いつかないのだが…
私達は、ふわりと大空に飛び出して、凄い勢いで、麓に向けて一気に急降下していた。
固まっていたお陰で、大きな悲鳴を上げずに済んだが…
確かに以前、出来ればもう一度、お空を飛びたいなあ…なんて、思いました、思いましたけども…
これは違う、違いますよ、怖いよ、怖過ぎて、もっと声が出ないし…
相当高い山の上から、それこそあっと言う間にもう、下まで来ていた。
眼下には、多分、騎馬で逃げている、例の傭兵団らしき皆さんの姿が見えた…
その後ろを、獣人と人獣が走って追いかけてる。
その、人獣達の後ろにピタリとついた途端に、
王様が九郎さんの足から手を離し、
勢いそのままに…王様はいつの間にか右手にお持ちになった武器で、
獣人達全員を、横にクルリと一回転しながら一気同時に殴り飛ばして…
そして、まるで地面を滑るように着地した。
私は、王様の左腕に抱えられたままだったが、着地した後、ゆっくりと降ろして頂いた。
無事か?
すまんな、急に抱えて悪かったな…
そういや先に、エトランにちゃんと断るべきだったわ、マジですまん。
「…あ、は…い…、だ、だだだ大丈夫…で…すす…」
おっと、悪いがそこで、暫くの間じっとしといてくれ…
他の追手の人間も、多分直ぐに来るだろうからな…
九郎…一人だけは生かして、あとはデストロイで宜しく。
さてさて…コウモリの諸君、こんにちは。
よくもうちのご贔屓関係者にちょっかい掛けやがったな?
「クソが、て、てめえは誰だ!?」
ん?…俺か?
俺はまあ…見ての通りの、ただの通りすがりのイケメン…いや、
えーっと…どうしよかな?
ま、まあ…俺が誰でも別にええやん?そもそもお前等、別に俺に興味なんか無いだろ?
しかもお前らは、今日でこの世界ともおさらばだしな…
王様はそう言って、腕を前に突き出したあと…
腕を左から右に動かすと、その動きに合わせ、前にいた獣人達が、忽然とその場から消えてしまった…
そして飛び去っていた九郎さんが、傷だらけの男を一人、爪で掴んで帰って来た。
よお、コウモリの…
悪いが、お前の知ってる事を全部話してくれ…
お前等チンピラだけで、あの優秀な傭兵団なんか、絶対に追えないよな?
一体…誰が噛んでんのよ?
正直に、俺にお話出来たら、お前は、お前だけは特別に逃がしてやらん事も無いような…気がする様な…感じがする…気がする…と思うかもなあ…
ああ、他のやつか?悪いが他のみんなはもう…
先にあの世に逝ったんだけどさあ、
さてさて、お前はどうするよ?
今がまさにラストチャンスだが?
良いか、今なら送料も分割手数料も、弊社異世界ネット【深淵】が全て負担するぜ?
知らんけど…




