いざこざの原因って…
私とした事が、相当迂闊だった…
美味しい焼きそばのおかわりも、
私は…目にもとまらぬ速さで、あっと言う間に完食してしまった…
周りにいた皆から実に良い喰いっぷりだなとか、いっぱい褒められたが…違う、
正直…嬉しくなど無いかな…
ダメだわ、これでは貴族の娘という肩書が完全に嘘にしか聴こえませんね…
これじゃあただの大喰らいなだけの、完全なおまけだわ…
もっと…もっともっと気を付けようと思いました。
出されていたテーブルが、あっと言う間に片付けられて、
用のない人が、一斉に部屋から出て行った。
どうやらここって、食堂だったのね、
片付ける動作やなんかが、確かに皆、軍人さんっぽいわね…
そして改めて、
王様と盗賊の親分役のマリアスさんが向かい合って、本題のお話を始めました。
この周辺の七カ国近辺には、それぞれに縄張りを持つ、実に多くの盗賊やら野盗やらが存在しているが、
その中でも五つ、規模の大きさや戦闘力の高さを誇る大きな盗賊団が有る。
人々はそれを纏めて、悪魔の右手と呼び、とても恐れていた。
そのうちの一つ、この山城を拠点とする山賊集団、
つまり、我が国の隠れ部隊で有る、マリアスさんが率いる 黒い大狼団 。
そしてもう一つ…
この争いのそもそもの発端で有り、中でも一番暴力的で危険な盗賊集団、
コウモリの翼団 って、トコが有って…
先ず、コウモリ達の随分下っ端、
本体の枝の枝の、もっと枝って、小さい輩が集まって、
とある商人の大きなキャラバンを襲ったんだよな、
ところが、このキャラバンはまさに、ここに、うちに物資を運んでる最中で…そして、
うちが、それを奪うっ…て、そういう筋書きが有ったんだよな。
勿論、傭兵団はその商隊の防衛訓練として、
うちは、仮想敵軍の物資輸送を攻撃する、って、そんな目的の訓練な。
その商隊を守ってる傭兵団ってのも…
実は、うちの国の騎士団から、
うちの盗賊団と同様に、外で実戦訓練の目的で運営している、
もう、言って見ればうちの身内の傭兵団でな、
そう…コウモリの横槍がなけりゃ、いつも道理の訓練で終わる話なんだが…
結果、うちとコウモリ…そして傭兵団が、一堂に顔を合わせてしまった訳だ。
そもそも、奴らが襲った場所も、
端のほうだがうちの縄張りの中だし、
縄張りを侵した以上、そいつらを許す訳には行かないが、
ここで、現場がとっさの判断に困った訳だ…
そもそも訓練とは言え、どっちが主導でって、訳じゃ無いからな…
それぞれがまさかの、様子見のお見合い、だったんだわ…
残念ながら…
可哀想だがコウモリの連中は、残らず始末しなきゃならなくなった。
なにせこれが…国を上げてのヤラセの訓練だって事が奴らバレると、
かなり厄介な大事だからな。
じゃあ、傭兵団か、うちか、どっちがコウモリを始末すんだって、そうなってな。
それでまあ…結論として、完全に初動を失敗してな…
その時の、それぞれの立ち位置だったり、
地形やら、タイミングやら、全てが良くない方向へ作用してな…
で、
結果として、盗賊と傭兵が両方いっぺんに、
コウモリの連中を始末したんだよ…
で、
本来なら訓練だったが、他にもコウモリが居るやも知れんって事で、この訓練は、そこで一旦中止したんだ。
ところが、
この一部始終を、まさか別の関係無い悪党どもに見られて居てな…
傭兵と盗賊が、実はグルで、
商隊を簡単に始末出来る様に、盗賊側が密かに潜入させてる、みんな盗賊の仲間なんだって、どうやらそう思われた様で、
その悪党からしたら、喉から手が出る程に欲しい物資を、
恐らく苦も無く簡単に奪える手段が目の前に有るんでな、
今度はその傭兵団だけが、お宝を得る為のカギとして、
悪党に狙われてしまってるんだよ。乗っ取ってしまえば、お宝を独り占め出来るからな…
そしてまあ…想定の範囲でも有るが、
どこの馬の骨やも知れん、跳ねっ返り共…
殆ど無関係位の関係性でも一応、そいつらがコウモリを名乗った以上、
傭兵団に仲間を殺された手前、コウモリの本体も、
ちゃんと傭兵団に報復しないと、世間に笑われちまうってんで、
それこそ本気で傭兵団を狙ってる訳。
一応うち…狼も、縄張りを荒らされた手前、コウモリを攻撃、仕返ししなきゃだし、
カッコだけでも、襲撃を邪魔した傭兵団を、芝居で追わなくちゃならんのよ。
で、
そう言ったゴタゴタから、この傭兵団が今、
あちこちを必死で逃げ回ってる状態…
コウモリを潰すのは、結構まあ…簡単では有るんですが、
アイツらは、あれはアレで、
あの辺の悪党共の蓋って役目が有ってですね、
下手にコウモリだけを潰すと、うちやこの辺り迄を含めて、
広範囲で悪党どもが縄張りの取り合い、奪い合いを始めてしまいますな。
結果、そこそこ大きな戦争が起きてしまうと…
…ってのが、このお話の大体の顛末ですな。
私も居たので、マリアスさんはかなり分かりやすく説明して下さった。
なる程、つまり…
うちの国は一切無関係無いんですよって、フリをしつつ…
コウモリさんにはちょこっと仕返しをして、
尚且つ、傭兵団を探すフリもしつつ、
横から入って来た、悪党もやっつけて…
戦争も回避させて上手く、この状況を収める必要が有るんだわ…
なんか…
騎士長さんって、相当面倒な事に巻き込まれていたのね。危険な目に遭ってないと良いけど…
でもこんな難問を、王様は一体、
どうなさるおつもりなんだろう?




