真王様って一体… 前編
遂に、ようやくお会いできた私の目の前の、
この国の真の王、
真王様をじっくりと観察した。
どう見ても…
いや、見た目の年齢は私と大差ない感じだが、
この国を造ったって事は、
少なくとも、それから30年以上、ずっと国王だった筈だわ…
つまり、あの見た目は気にしてはいけないって事ね。
そういえば…会議の時、将軍達とかなり近しくお話になられてらしたわね。
そうだわ、確かバルタ将軍をバルちゃんって…
ただ、王様が偉い方だからって感じじゃ無く、きっと昔から知ってるんだ…
30年前って事は…
きっとまだ、バルタ将軍が子供の頃から、王様は知ってるんだわ…
あと…ずっと変な冗談ばかり言ってる…王様なのに?
そして…
王様なのに、ヘンリエッタ様にしょっちゅう怒られたり、驚いた事に、何度も叩かれていた。
他の大臣、将軍は、一応、きちんと距離を取られているようだけど…
ヘンリエッタ様は、かなり特別なのかしらね…
普通の国で王様を叩いたら、
アレって…絶対に死刑だよね、間違い無くきっと。
なのに?肩パンと言って、
王の肩を、ヘンリエッタ大臣が、思いっきりパンチしてた…
皆は勿論、王様も一緒に笑っていたのが、本当に驚きだったけど。
どうも、失礼な発言に対して、女性がアレを行う事は、
ここでは容認されているようだわ…
私には、あんな事絶対出来そうに無いけど…
そして…
真王様って、
みんな、王ではなく神様って呼んでる。
後で、リジャディード大臣にこっそり聞いたが…
先ず、シヴァ様はこの世界で生まれた人間では無く、
神族でも、獣人でも無く、
この世界の裏側…【深淵】の中から、この世界にやって来た、異世界の人間なのだと…
そして…
遥か昔、私が子供の頃に聞いた事の有る、
そう…有名な、あのおとぎ話の中の英雄神シヴァ様…
この世の全ての悪神を、たったお一人で全て討ち滅ぼし、
この世界に新たな大地と海を造ったという、
漆黒の大巨神…
【深淵の破壊神】様の、
真王様はその後継者で有る、
つまり紛れもなく、正真正銘の、本物の神様なのだそうだ…
そうだ?って…
えー?
えー?またまた、冗談でしょ〜?
なんて、言えない。絶対言えやしない。
真顔のリジャディード大臣は、冗談なんか絶対言わないタイプの方だ。
あの顔を見れば、誰にでも判る。
つまり、真実なんだ…
確かに、あのグリフォンや、大きな蜘蛛の神獣を連れているし…
でも、
でもよ?
でもでもだって…
ダメ、追いつかない…
ちょっと…
話のスケールが余りにも大きすぎて…
まるで頭に入って来ない…
神話の中の登場人物が目の前の?
あの…肩パンの?
ダメダメ、いけないわ、変な意識をしたらダメだ、
王様は王様なんだ、
それは揺るがない、絶対にだ、
そして、私はその記録官なのだ…
相手がどうとか、それは一切関係無い。
仕事を…自分に与えられた仕事を一生懸命するだけだ。
…でも、ダメ……
やっぱり直ぐには飲み込めないよ…
なによ、肩パンって…




