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王の帰還前編

 結局、その日はほぼ、地下の会議室で過ごした。


 数回の休憩を挟みながらも、今も続く会議。


 皆が意見を言い合っている最中に、

 突如、鈴の音が聞こえた。


 この部屋の天井にいた、蜘蛛の魔獣が鳴らした様だ。



 次の瞬間、円卓の全員が一斉に立ち上がって、

 奥の、あの古い椅子に向かって、

 膝をつき、頭を垂れた。


 突然過ぎて、かなり意表を突かれたが…


 私は横目でそれを観察しつつ、

 直ぐに皆さんの真似をして、膝をついた。


 「おう、おつかれさん」

 え?…聞き違え?…そう思うくらいに、


 軽い…軽すぎる?


 とてもこの会議には、相応しいとは思えない様な言葉が聞こえた…



 だが、

 その言葉と共に、皆立ち上がって、再び着席した…勿論、私も皆様に合わせる。


 進行していた大臣様が声をかける。


 「全て、お聞きでしたでしょうか?」

 

 ああ、遅れてごめんね…ちょっと寄り道してたんだ。

 ああ、会議…会議ね?大体はね。それよりさ、


 今、実際見てきたんだけどさ…

 オカーイのちょっと東側辺りでさ、結構大きな蝗害が起きててさ…


 今、季節風の風向きが、どうもこっち向きっぽいんだよな…


 今、山の警備担当って誰だっけ?


 「ハッ私、アインゴルで有ります、閣下」


 ああ…アインならもう、特にいちいち言わんが…

 この二〜三日、風向きと強さには常に警戒な?


 風に乗ったら、今回ちょっと足が速いかもしれんぞ?


 あと、情報部…特に食料の流れと経済、

 近隣の状況はいつも以上にしっかり頼むぞ?


 「「「御意」」」


 で…

 バルちゃんさ、ぶっちゃけ今年は、豊作なのかい?

 「ハっ、例年より、少し多めで有ろうと予想しております」


 そっか、なら…他所の食糧支援も視野に入れて、

 アインもシレンさんも、そこんとこ、頼むね。

 「「「御意!」」」


 で?

 どうしたどうした?


 エルどんは、何かやらかして?ついにとうとう首になったとか?女か?酒か?

 ん?…違うの?



 なら、珍しいな…ここにお客人とは?


 はい、今からご報告致しますね。


 かねてより検討中でした、神様専属の助手…お手伝いが、

 このエトラン嬢に決まりましたので、ここにご報告致しますね。



 「え?あのー、そういうの、自分、全然大丈夫なんで…」


 もうッ、神様ったら、ちゃんと聞いて下さいよっ、こっちはね、とっても真剣なのですよ?

 「え?お?、おう」


 「何?エッタさん、今日ちょっと怖いんですけど?」


 じゃ、こちら…改めてご紹介しますよ?

 こちら、エッタさんです。


「え?…エッタさんがエッタさん?って、何?ちょっと、意味がよく判…」

 

 あ、あの…

「わ、私、サント領マイトカの領主エドモンの娘、エトラン アズ スガストルネ、と申します…」

 

 ん?エトランさんとな?


 おいおい、ちょっとアンタ…

 俺に勝手に、まさかエッタさんを名乗るとは…

 「かーみーさーま?…」

 え?…あ、はい、あの…すいませんせん…つい、


 「あ、そ、そういや…サント?ってどこら辺だっけ?」

 

 ほら、トクアの北の…

 【深淵の破壊神】様の神殿跡が有ったとこの北側の…


 南北に広いんで北側がマイトカで、南側がマイラスって…貴方が名付けたんですよ?忘れてるでしょ?


 「お?おおっ、あ、あそこね、ああ、あそこか…なる程…」



 あの…ここの城壁用にって、神様がごっそり削った、大きな岩山の辺りの…

 「ああ、あの、メッチャ辺鄙なドいな…おっと、これは失礼…」


 もうっ、そこの領主の娘さんなんですよ?ちょっとは気を使って…

「あ…はい、すいませんです…」




 まさか…

 ヘンリエッタ上級大臣が叱っているのは…



 玉座に腰掛け、


 ついにフードを下ろしたそのお顔と姿は…




 なんとあの日見た、あの青年…




 酔っ払いを蹴っ飛ばし、

 衛兵の飲み物をかっぱらって…

 城から何度も逃走していた…


 あの…

 遊び人の極楽とんぼ…どっかのダメ息子…だと思った…思ってた、




 まさにあの、ダメ青年でした。


 

 ポカーン…って、間の抜けた顔になってるよね、多分、私…

 

 

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