円卓会議 後編
万事滞り無く、会議は進行していた。
食事を終えたあと、お茶を頂いて、
再び会議が再開した。
今度は、出席者が順番に、それぞれの報告やらを発表している。
将軍達は、軍の様子や、新人の訓練についてや、軍の予算の修正や備品について…私が聞いても良く判らない内容が話されていた。
唯一、バルタ将軍の、本年度の穀物の育成状況や、見込みの収穫量予想等の報告は、
こんな私でも、凡そは理解できた。
うちの実家の領全体の収穫量の、何十倍も有るので、現実は想像もつかないが…
農作業は、第一から第三の軍が行い、
これら収穫物は全て、一旦、国が纏めて買い上げるのだそうだ。
その上で、兵站の分配と、その他、に分けられる。
他の二人の将軍は、バルタ将軍の報告をかなり真剣に聞きながら、
横に居る部下にひそひそと何やら指示を出していた。
軍にとって、人材と武器、
実は、それ以上に兵站は最重要なのだと。
収穫した穀物の約半分が国の在庫となり、
その中から、各軍に分配される兵站となる。
そして、残った穀物の半分のうち、
更に半分、四分の一が、一般国民の為の食料、
残り四分の一が、大体、予備や輸出品となるそうだ。
各将軍は、分配される兵站と別に、
今の報告を聞いた上で、
翌年の自軍の兵站の量を、更に一般の市場や輸出品を買い足して増やすのだそうだ。
作物の生産をした将軍には、その年の作物の価格を決める事が出来る権利があり…
一般の価格もそれに付随して変動する。
勿論、いい加減に値を付ければ、必ずそのつけが自分達に帰って来る。
ここに、各軍の駆け引きや、実際の天候や病気等の、
予想外の収穫量の増減が加味される。
あと、この価格自体が、各軍の分配金にも大きく左右するそうで、仮に大きく利益を出せば、軍の予算に上乗せされる。
なので皆、かなり真剣なんだと。
これらの競争を、実は王様が推奨されていて、
競争が無ければ、人間は直ぐに堕落する、
故に、適度な競争と、適度な緊張感は絶対に、特に軍には必要で有る…
との、お考えの元、皆それを実践されているのだそうだ。
更には、カイ将軍の海軍。カイ将軍は、爬虫類系の…多分、龍種の獣人だ。
この国は、他国に先駆け、正式な海軍を所有しており、
大小合わせて十三隻の軍艦を所有し、近郊は勿論、遠方の大国でも、
恐らくどこの国も、そう簡単に勝てない位、強いそうだ。
敵軍の殲滅だけでは無く、多くの海賊や海に生息する魔獣の討伐、
また、各軍の輸送や支援も行う。
その、海軍の中には、実は別の一軍も含まれており、
それが、ザーラー将軍の海上航空部隊で有る。
飛行型のグリフォンや、翼竜を従え、
敵国への空爆や先制攻撃、味方軍の援護爆撃を行う軍。
単独で運用はされていないが、
これもこの世界で唯一の部隊だそう。
残りの一軍…
実は、この国で最強の実戦部隊、
アーデ将軍の獣人特殊作戦群、通称 陽炎だ。
他軍と合同で作戦を行うが、
敵国潜入後は単独で、極秘のうちに敵国の最奥まで侵入し、
敵国王や要人、はたまた盗賊や傭兵団のトップを暗殺したり、
或いは、大きな破壊活動をしたりするそうだ…
稼働率自体は、全軍の中で一番低い代わりに、
常に死と隣り合わせの、一番危険な仕事を受け持つ、まさに精鋭中の精鋭部隊。
そして次に、騎士団の報告。
騎士団とは、騎士の称号を持つ者のみで結成された、正真正銘の、この国のエリート部隊で、
国内の諜報活動や、複数の軍が行う大規模な作戦に参加し、その指揮を任される。
戦場では、散らばった軍の指揮を行ったり、
戦闘中の各軍との連携、連動の指揮や統率、
不意の事態の際の各軍の支援などを行う
「鷲の団」
主に、国外での諜報活動を行う、実働実戦部隊で有り、戦闘後の、戦地の復旧や補助等の仕事が
「梟の団」との事。
こちらの責任者が、あのエルドン騎士長だった…
そして、
各所から集められた情報を精査、分析した後に、各所へ報告するのが、第一調査部。
国内の情報収集担当が第二調査部、
国外の情報担当が第三調査部。
ここも、私では一切理解不能の、難しい報告が行なわれていました…
私にはまるで、なにかの呪文の詠唱の様にさえ聞こえてました…
睡魔も若干…ええ、勿論、全力で堪えましたよ、当然ですけどね。
通常の、我々が知ってる議会とは全く違う、
この国の中枢は、この国内どころか、
この世界を相手に動いていたのだ。
だから…あえて言いたい。
私如きが、何故?と。




