第8話 従魔
「お前ら、よかったな。俺が従魔を召喚する瞬間を見られるぞ。」
:見せないつもりだったのかよ。
:上から目線なことを突っ込みたい
「そのまえに、ステータス見せるぞ。討伐ボーナスのお陰で色々増えてるからな。」
小鳥遊裕司 Lv7
スキル
経験値増加中
魔物特効大
魔力錬成
錬金Ⅰ
称号
第一の試練を突破した者
第二の試練を突破した者
レベルは上がっていなかったが、スキルの効果が上がって、錬金というスキルが生えていた。
「そういえば、魔力錬成に全く触れていなかったな。魔力についてもまだ把握できていないし、どうしようか。」
:スキルを使ったら勝手に魔力が使われて、気づけたりしないか?
「なるほど!その手があるな。ちょうど錬成が手に入ったから使ってみるか。
錬成!」
スキル名を唱えると、右胸のあたりから包丁を持っている右腕に向かって魔力のようなものが押し出されてきて、包丁は鉄塊とプラスチックの塊へ変化した。
「やべえ!このままだと親父に怒られる!錬成!!」
今度は包丁になるようイメージしたら、鉄塊とプラスチックは元の包丁へと姿を変化させた。
:すげえ
:自由自在だな
「へえ、イメージさえすれば好きな形にできるんだな。これは、材料が揃っていないとやっぱり使えないのか?だとすると、武器を作るときは同じくらいの大きさの金属を準備しないとな。それなりの大きさがあって、持ち歩いたり庭においててても怪しまれないもの、……」
:おーい、それは後にして早く従魔を召喚してくれよ
:エロいサキュバスだったらいいな
「んなんだしたらBANされるわ。無難に動物系がいいな。どうなるんだろ。」
従魔石に魔力を流してみる。さっきは、よくわかっていなかったのに従魔を召喚しようとしたらアナウンスがあったが、ここですれば特に問題ない。
「ん?うーん、なんだコレ。」
魔石からの抵抗が強く、魔力をうまく流せない。何となく、全部の魔力を出し切ればできそうな気がするが、すべて使ったときにどんな事が起こるかわからない。俺の体は何者かによって改造されているため、全く予想外のことが起こる可能性もある。
「まあいっか!魔力切れても、ラノベでは気絶するだけだし、ここはもう安全だから、全部使い切っても大丈夫だろう。万が一なにかがあってもカメラマンさんに病院まで運んでもらえばいいし。いいですよね?」
:何で急に魔力を全部使い切る話になったのかはわからないが、ラノベとカメラマンさんへの信頼感が強すぎ
:うーんこの
確認のためにやまとさんに声をかけてみれば、サムズアップしていたから、もう安心だ。疲労とかは、俺に関係ない。
「よし、それじゃあよおく見とけよ。すげえやつを従えてやる。」
気合を入れ直して、俺は全力で魔力を魔石に向かって流した。
魔力を流し終わったと同時に、とてつもない疲労感と、頭痛が痛くなってきた。
だが、気絶はないようなので魔石を観察していたら、突然魔石が輝き出した。それは七色になったり、黒1色になったり、今度は白だったり、不規則に色を変えながら形を変えだした。
《抽選が完了しました》
「へ?」
急にアナウンスがなったと思ったら、魔石だった物の色がもとに戻り、猫の形を造形していった。
「ミャー」
「猫?は?可愛すぎるんだが?」
それは形だけは猫のものだが、大きさは座っているだけで俺と同じくらいあり、体色は黒のみ。しかし、額には謎の模様が縁取られていた。
:その猫よこせ
:でかくね?
:黒猫尊し
ボフッ
俺は、頭が回らなくなって言葉が出なくなったが、衝動が湧いてきて気がついたら猫へダイブしていた。
「もふもふやべえ、語彙力死ぬ」
そう言い残し、俺の正気は30分ほど行方不明となった。
後から知ったが、このときの俺は猫に抱きついたり、頬ずりをしていて、「もふもふだあ」としか言っていなく、やまとさんが声をかけても反応しなかったらしい。
十分もふもふを堪能した後、俺はやっと正気を取り戻した。
目を向けると猫もぐったりしており、大和さんはどこか諦めたような目をしていた。
「えー、ごほん。ん゙ん゙っ。すまん、少々取り乱した。」
:少々?
:こいつ絶対野良猫見つけたら捕まえて頬ずりしてそう
「俺の趣味を言い当てるのやめてくる?」
:きも
:まじかよお前サイコーだな
:こいつと同じことをしてしまうとわかってるから突っ込めねえ
「名前募集するぞSNSのアカウントを作ってるから、いいねにリンクを貼った。だから俺の垢をフォローして名前募集の投稿が出たらそこにコメントしていってくれ。じゃあ、今日はここで終わり。次は来週の土曜で、これ彼は週1で配信するぞ。」
:88888888
:おつ
そう言って俺は締めくくり、大和さんはそれに合わせて配信を切ってくれた。
「あ゙あ゙ー、疲れた。大和さん、お疲れさまです。今日一日カメラマンをしてみて、どうでした?」
「うん、今日のところは怪我もせずに済んで、良かったよ。でも、たまに無茶ぶりをされて困ってしまったよ。カメラマンは面白かったし、給料とかはいらないからただでやらせてもらうよ。いいかな?」
「もちろんです!これからも、怪我などはさせないよう気をつけていきますので、これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしく頼むよ。」
やまとさんにどうだったか聞いてみると、好評で、これからもカメラマンをしてくれると言ってくれた。滑り出しは順調だ。さあ、ダンジョンはどんな姿を俺に見せてくれるのだろうか。