第52話 迷子
迷った。
かれこれ1時間ほど歩いているのだが、ボス部屋に入るための扉が全く見当たらない。
そういえば、ここの景色はさっきも見たような気がする。壁は全て同じで見分けがつけにくいが、ここの空間と道の分かれ方、さっき見た所と同じだ。
「どうしよう。迷っちゃったみたいだけど、案内できる奴いない?」
完全に迷子となったことを認めた俺は、視聴者に案内を求めた。
:知らねーよ
:多分分かるぞ
:↑まじで?
募集してみると、案外いる物だ。コメントの中に道がわかると言うものが目についた。
「案内できるのか?それなら、頼む。俺じゃ辿り着けないからな」
:オーケー。先ずはこの空間の正面にある道を進んでくれ
俺がお願いすると、コメントに指示が現れた。
道案内に従い、俺は道を進んでいった。
◆◇◆◇◆◇
:ここを右
案内をしてもらい始めてから、およそ十分ほど経った。迷っている様子を見せずに案内してもらえるのは嬉しいが、ボス部屋になかなか辿り着ける様子がない。
一応俺は助けてもらってる立場なので何も言えず、歩く。
:次の空間から右の通路に出て
次の指示が出たので、その通り歩くが目の前に広がるのは迷路のみ。それは仕方のないことなのだが、変わりようのない景色に同じことの繰り返し。流石の俺でも退屈してきた。
:まだか?
:そろそろついてもいいんじゃねーの
空気を読んで数が減っていたコメントの中からも、痺れを切らした者たちがちらほら見え出した。
:これで最後、ここを左で正面に扉があるはず
「まじか!? サンキュー! ここを左だな? やっとボス部屋に着くのか」
もう直ぐでボス部屋に到着するという知らせに、俺は湧き上がった。
さらに、その事実に興奮したのか大量の弾幕が配信に投下された。
ワクワクしながら歩くと、コメントの言葉通り目の前に扉が見えた。
「ひゃっほう! 念願のボス部屋だ! 」
その扉を目にするなり、俺は扉に向かって駆け出した。
そして、扉の目の前にやってくると俺は床に転がった。
「あー。疲れた!ここで10分休憩したら、ボスに挑むぞ!」
休憩を宣言した俺は、体を起こして床に座り込むと、喋り始めた。
「道案内してくれた人、本当にありがとな!よくよく思い出してみたら、そこの曲がり道のところ、一度通った気がするな。ボス部屋を目の前にしながら気付いていなかった・・・・・・ってコト!? 」
:言われてみればさっきの場所見覚えのあるような・・・・・・
:バカすぎだろ。もっと周り見ろ
「いやー、ほんとだよ。もっと注意深くするべきだな。そうしていればこんなに迷って道案内してもらう必要もなかっただろうし、時間ももっと早くついてたんだろうな」
ボス部屋を見逃していたということで、コメントにツッコミがいくつか見えた。
喉の渇きを感じたので持ってきていたペットボトルを開け、水を飲む。
大和さんは自分で飲み物を持ってきていたようで勝手に水分補給をしており、俺は視聴者に語りかけた。




