第44話 新しい敵
その影は、ゴブリンの細い体とは全く違って太っており、その右腕には棍棒のようなものがあった。
その姿を見てみたいのだが、ダンジョンが暗くてそこに影があることしかわからない。
仕方なくスマホをポケットから取り出してライトをつけてみた。
舐め回すように影を照らして観察すると、肌は緑色で、意外なことにその恰幅の良い体はとても筋肉質だった。
そっと光を顔の方にあげたら、そこには豚のような顔が周りをキョロキョロしていた。
「グア?」
流石に顔を照らしたことで気付かれたらしく、そいつは棍棒を振り上げてきた。
ガン!
危険が危ないことを察して後ろに下がると、棍棒はものすごい音を立てて床にぶつかった。
こんな音を立てて壊れてないかとぶつかった場所を覗いたが、意外なことに傷一つついていなかった。
「ガァアアア!」
俺が棍棒を避けたことに怒ったのか、化け物は棍棒を振り回して俺の方に迫ってきた。
「あーもう、棍棒が邪魔!」
棍棒が邪魔なので、タイミングを狙ってその持っている右手首を魔力剣で切り上げた。
その剣は、綺麗に化け物の右手首に当たったものの、全てを切り飛ばすことはできなかった。
骨がとても硬く、断ち切る事がかなり困難で、刃が食い込んだ状態で止まってしまったのだ。
「マジで!?切り飛ばせなかったんだけど」
俺が刃を止められて固まっていると、化け物はそれを見逃さずに空いている左腕を振り下ろしてきた。
武器がないとはいえ、流石に攻撃に当たるのはまずいと判断したので、急いで魔力剣を解除したが、避けるにはもう遅すぎる。
避けれないのなら防げばいい理論で、盾を生成して、攻撃を受け止める。何度か練習して以前よりかなり丈夫になっているので、しっかり受け切れた。
攻撃を受け止めるのと同時に盾を押し出したことによって、化け物はよろめいてバランスを崩した。
その隙を見逃したくないので急いで畳み掛ける。
しかし、やっぱりこいつ硬いな。
ここぞとばかりにトドメを刺そうと首に斬りつけているのだが、とても硬く、2度3度刃を立てても中々断ち切るのは難しい。
だが、諦めずに何度も斬りつけているうちに、傷はどんどん深くなっていき、ついには化け物の首を切り落とす事ができた。
首がなくなった瞬間、化け物はいつもの様に霧となって消えて、そこにはこれまでよりも一段と大きな魔石が落ちていた。
:88888
:おめでとう
コメントを見ると、彼らは奴に勝ったことを誉めてくれて、しばらくすると考察を始めた。
「うーん、強かったなあいつ。一応かなりレベル上げして適正レベルより幾らか高いつもりだったけど、そんなことなかったかあ。まあでも、今回の戦いでレベルも上がったぽいし、しばらくはここでレベル上げしようかな」
:そうした方が無難だろ
:レベル上げするに越したことないしな
ということで、いまからは奥に進んで敵を狩ることにした。
「じゃ、行くぞぉ!」




