第40話 雑談ばっかり
自己紹介と質問に答える配信をした翌々週の土曜日。
今から配信を始めるところだ。今日は、遂に時間停止のらブレスレットを取得してタイムを縮めるのが目的だ。
時間停止だなんて大層な名前がついているんだから、効果にかなり期待できるな。時間停止だけだとどういうことが出来るのか分からないな。取得したらわかるのかな?
なんてことを考えながら、アイテムを受け取るために最終フロアまでのんびり進んでいると、気付かないうちに到着していた。
「ブゲェッ」
ボーッと考えながら歩いていたせいで、壁に顔面をぶち当ててしまった。
変な声も出してしまって、ちょっと恥ずかしい。
レベルが上がっているお陰で顔が痛いということはないのが救いだが、誰もいないのに誰かにバカにされてる気がして精神的ダメージを食らった。
「もういいや。始めよう」
ハンドサインを送って配信を開始した。
「そろそろなんか挨拶考えた方がいいかもな。どうも、裕司でーす」
締まらない気もするが、俺の視聴者は別に気にしないだろう。
:なんか顔潰れてない?
:ほんとだw
:よく見たら奥の壁ちょうど顔の高さあたりで凹んでるぞ
:何をしたら顔をぶつけるんだww
1人のコメントが俺の顔を指摘したのを皮切りに俺をバカにしたようなコメントがどんどん流れてきた。
「いい加減にしないと開示だぞ?」
:開示だな
:ピカマーやめれ
:やりましょう!
脅したつもりはそんなにないが、俺の開示という言葉に反応してピカマーが湧いてしまった。
:開始場所ここ最終フロアじゃない?なんで?
少し雑談していると、やっとこの事実に気づいたコメが現れた。
別に待つつもりはなかったが、ここまでだらだらと話していただけだったので、これをチャンスだと思い、本題に入った。
「気付いた人がいるみたいだから、説明するぞ。今日は時間停止のブレスレットを受け取って試運転をしながら記録を狙っていく予定だ。だから、今日はいつもと違ってここから始めたんだ。わかったか?」
:なるほど
:やっとか
:どんだけ速くなるかな?
「そういうことで、今からブレスレットを受け取るぞ」
オブジェの持っている本の背表紙を押して、出てきたウィンドウを操作する。
NO.79ダンジョン
攻略者 ユウジ・タカナシ
攻略補助者 なし
攻略所要時間
30分24秒
報酬
1週間以内 移動速度アップのシューズ 受取済み
1日以内 攻撃力アップのグローブ 受取済み
1時間以内 時間停止のブレスレット 受取済み
1分以内 更新の権利
更新回数 0
ようやく、更新をしていない状況でもらえるアイテムは全て貰ったことになる。このダンジョンをゲームみたいな感じだとすれば、これで更新できるようになる一分以内の攻略ができるようになるはずだ。
もし、それでも無理なのであれば、他の要素が足りないかレベルが足りないのだろう。
そんなことを考えた後に、俺たちはタイムを測るために雑談をしながら地上へ上がり始めた。




