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第38話 模擬戦


目的地のダンジョンに着いたので、打ち合わせ通りに《《下準備》》をして、配信を始める。


「配信始めるぞー」


:待ってた

:コラボとな?


「コメントでもチラホラ言ってる奴いるけど、今日はコラボ配信だ。こちらが今回のコラボ相手の、吹雪さんだ。知らない人は居ないと思うけど一応紹介するぞ。3ヶ月程前からダンジョンでyautabeにて配信をしてて、チャンネル登録者数はなんと400人強だ。90人弱しか同接数がない俺からすれば、雲上人だな。実際、今の同接数は300人前後で、俺は今最高にウハウハな気分になってるから、めっちゃ有難い。」


俺が紹介を終えると、吹雪さんはぺこりと頭を下げた。


「初めましての人もいるかもだから、一応挨拶します。吹雪です。今回のコラボは吹雪チャンネルから提案して、見事コラボすることができました。」



:吹雪ちゃんかわいい

:↑だろ?

:↑だが彼氏がいると言う事実

:↑それでも良いんだよ


いつもの視聴者とは違ってコメント芸が多いな。新鮮でいい。


「今日は吹雪さんと模擬戦をする。ルールは、相手が怪我をするような攻撃は禁止。もちろん魔法はあり。どちらかの攻撃が当たったら終了。開始の合図は俺が今持っているコインが地面についた時。そして場所はダンジョンの11フロアだ。何か質問ある人はいる?」


:裕司くんの魔力錬成はあり?

:どうして11フロアで?


「魔力錬成の使用はありよ。刃を丸くして、万が一があっても大丈夫なようにしてもらってるわ。少しでも当たったら11フロアにした理由はダンジョン内で一番広い空間だから。他にはあるかしら?」


吹雪さんが代わりに答えてくれた。他に来た質問の内容も、事前に話し合っていたことだけだったので問題なく進み、いざ勝負の段階となった。




お互い相手から5メートル程離れて場所に着いた。


「吹雪さん、そろそろ行きますよ。準備はいいですね?」


「大丈夫。いつでもいいよ」


吹雪さんからOKが出たのでコインを投げる。


コインが頂上へ達するとお互い同時に構えた。



チャリン



その音が鳴ったのと同時に、一帯に魔力が溢れた。


次の瞬間には魔力剣を錬成し、吹雪さんに向かって踏み込んだ。


しかし、吹雪さんが魔法で地面を凍らせて俺の足を滑らせてきた。


俺は咄嗟に靴の底に魔力でスパイクを作り、滑り止めをして再突撃した。


が、氷の礫が飛んできたので避けて、短剣を投げて牽制した。


こちらは距離を詰めようと動いているが、吹雪さんも魔法を使いながら移動をしているため、現在の吹雪さんとの距離は先ほどと変わらず5メートルくらいだ。


しかし、このままだとこちらは攻撃できずに一方的に魔法を撃たれて終わってしまう。


それは流石に不味いので、これまで使い渋っていた策を取ることにした。


魔力を円盤型に成形し、持ち手を作る。これで簡易型の盾の完成だ。


盾に関する情報のインプットがまだしっかり出来ていないので、上手くイメージできておらず、盾としての機能をしっかり果たせるのかは未知数だ。


飛んできた礫に対して盾を構えると、硬さが不十分でぐにゃりと曲がってしまったが、軌道を逸らすことができ、避けることが出来た。


「ちょっと!なにそれ、ずるい」


盾を作り出したことに文句を言ったのだろうが、戦いには今日もクソも無いという言葉がある。


魔力を注ぎ足して再び盾を元の形に戻した俺は、飛んでくる礫を弾きながらズンズンと進んでいった。


弾くたびに曲がってしまうためその度に魔力で成形し直さなくてはならないのだが、魔力がギリギリになる頃には吹雪さんを追い詰めることができた。


相手ももう魔力が残り少ないようで、抵抗もされず、先に生成していた剣でちょん、と小突いて模擬戦は終了した。



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