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第23話 閑話1 ティーダの心の内1


《抽選が完了しました》


不思議な声が聞こえたと思ったら目の前に人間が立っていた。人間って何だ?聞いたことも見たこともないはずなのに何故か知っている。

タカナシユウジ。この人間の名前。どこで知ったのだろう、どこか懐かしい気配がする。


『お前は誰だ。』


そう言ったのだが、ユウジには通じた様子はなく、目を輝かせて喋った。


「猫?は?可愛すぎるんだが?」


相手の言葉はこちらに通じるが、逆は無理らしい。


ボフッ


相手の様子を見極めようとその場から動こうとしなかったのが運の尽きで、不意を突かれて、殺気もなかった相手に捕まってしまった。


「もふもふやべえ、語彙力死ぬ」


は?何をされるのかと警戒して体を硬くしたが、呆れて何もできなかった。


体にしがみついて、何をするのかと思ったら定期的に「モフモフだあ」と呟きながらモフモフし出した。

仲間と思わしき人間が、何度か声をかけているが、こいつは全く反応する気配がない。


しかし、このモフモフされるのも最初は気持ちいいが、長時間されると疲れてくる。ユウジがモフモフを辞めた頃には、かなりぐったりしてしまっていた。




ぐったりした後は寝ていたようで、目が覚めるとユウジが目の前で悩んでいる様子だった。


「なあお前、体小さくとかできるか?」


何を言ってるんだ?自分も生き物だ。なのに、化け物じみたことをできないかと聞かれたところで、できるわけがないだろう。否定の意を込めて首を横に振ると、ユウジは更に悩みだした。


「こいつ、どうやって連れて帰ろう。」


ユウジがブツブツと一人呟いているのを眺めていると、もう一人いた人間が声を上げた。


「一つ、案なんだが、裕司くんの家にあるダンジョンの最初のフロアにその猫を泊めたらどうだろうか。帰りに関しては、夜暗くなってからなら見つかりにくいんじゃないか?家まで、そんなに遠くないんだろう?」


ユウジは、まるで天啓を受けたかのようなリアクションをすると、こういった。


「それだ!よし、これなら問題なくいけそうだ。 大和さん、そういうことで暗くなるまでお邪魔させていただきます。」


「こちらは問題ないよ。じゃあ、その子は一旦ここで待っててもらおうか。」


しばらく待てばいいんだな。


『わかった。』


「じゃあ、また後でな。大人しくしてるんだぞ」


『じゃあ後で』



そう言って別れた後、暇だったので、スキルを使ってみることにした。スキルが何かもわからないが、使い方は何故かわかるので使ってみると、体からナニカがごっそり抜けていく感じがして、横に、黒い生き物が座っていた。

何故だか、動かせそうな気がするので念じてみると、その通りに動いた。


体の感覚的にもう数体出せそうな気がするので、出してみたが、これは同時に動かせるのだろうか。

最初に、同時に右手を挙げさせた。すると、三分の狂いもなくぴったり揃って右手を挙げた。

なるほど、同時に動かさせることはできるのか。


今度は別々に動作をさせてみよう。数を2人までに減らして、それぞれに右手と左手を挙げさせようとしたが、上手くできない。


ユウジが来るまでまだ時間が余っているから奥に進んでみようか?そうしたら何か得られそうな気がする。



少し進むと、大きいやつと小さいやつがいた。何か棒のようなものを持っているが、簡単に倒せそうだ。


飛びかかって引っ掻いてみると、簡単に死んでモヤモヤになった。

下に、何か小さい石のようなのが落ちてる。美味しそう。

食べてみたらさっきのナニカが少し増えたような気がする。残りのやつも引っ掻いて石を食べたら、次の場所へ進んだ。


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