第二話 ステータス
ステータスをなんとか表示しようと始めてから大体30分ほど経っただろうか。
ラノベ由来のキーワードなどは、思いつく限り全て試してみたが、全く反応がない。
一人だけいた視聴者も、10分ほど経ってからいなくなってしまった。
「はあ、ネタも尽きてきて、視聴者さんもいなくなったから、そろそろ上がるかな。」
そう思って入ってきた入口の方を見てみると、さっきまで気づいていなかった梯子がかかっていた。
「なにこれ?多分、さっきまではついていなかったと思うんだけど、いつの間に?」
まあいいか。
そう割り切った俺は、とりあえず梯子を登って地上へ登り始めた。
《ステータスを表示します》
は?こいつ、なんつった?
ほんの1秒にも満たない時間で、俺の30分を真っ向から否定してきやがった。
小鳥遊裕司 Lv1
スキル
経験値微増
魔物特効極小
称号
第一の試練を突破した者
え?これだけ?
やっとこさ表示されたステータスをのぞいてみたが、情報が少ないわ、効果がしょぼいわで、バカにされてるように感じる。
「とりま疲れたし、寝るかぁ。」
翌日の朝、せっかくぐっすり寝ていたのに、スマホがピコンピコン通知を鳴らして、起こされてしまった。
「ふぁぁ、なんだぁ?この俺を起こしたんだから、なんかいいことでもあったんだろうな?」
そう言ってスマホを開いてみると、ギコギコで俺のアカウントのフォロワーが増えまくっていた。
「は?何が起こってんだこれ?こんなことになる心当たりは、昨日の配信ぐらいだけど、あれにそんなバズり要素あったか?」
嫌な予感がして、ゲックスを開いてみれば、トレンドの下の方に俺の配信関連のワードが入っていた。
あの時見てくれてた人が拡散してくれたのか?一体、どんな人だったのだろう。
今日も昨日と同様に予定もなく暇なので、配信してみようか、そう思い立ったので、早速モバイルバッテリーを準備して、穴の下へ降りた。
「よし、これで大丈夫なはず。今から、昨日の配信の続きをはじめます。」
:配信が始まったぞ
「まずは、昨日の結果報告だな。昨日はこの穴の中で配信を切ってから上がったんだけど、地上に出た直後、ステータスが表示されたんだ。」
:ついにできたのか?
:どんなだったのか教えてくれ
「それなんだが、お前ら、これ見えるか?」
その言葉と同時に、俺はステータスを表示してスマホのカメラへ向ける。
なぜか、好きなタイミングでステータスを表示できるようになっていた。
:すげえええ!
:すごいのはそうなんだが、効果しょぼくないか?
よかった。まずはステータスは他人にも見せられることが分かった。
「そうなんだよ。酷くね?こちとら30分間必死にゴブリンから逃げ切ったのに、報酬がこれとか、ケチすぎんだろ。」
:あれは逃げ切ったと言えるか?
:NOだな。無様にヒーヒー言ってただけ
こいつら、好き勝手言いやがって。
「まあいいや。その話は置いといて、今から昨日の続きを探索する。」
:がんば
:死ぬなよ
その後、俺はゴブリンが出てきたあたりの後ろにできていた階段を降りた。
そこには、昨日相手にしたゴブリンが群れのようなものを作っていた。
「はあああ⁈っやべぇ」
咄嗟に口を塞いだおかげでバレなかったようだが、おそらく見つかるのは時間の問題だ。
:これどうすんの?
:逃げ一択じゃね?流石に
だが、俺はこんなところで逃げるような男ではない。一匹ずつこっそり殺すか。
群れとは言っても、それぞれの距離はそんなに近くないので、暗殺者ムーブは十分にできるはずだ。障害物も多くあるから、それを利用して隠れることもできそうだ。
:こいつやる気だわww
:おいおい、本気か?
こっそりと動くことで、一番弱そうなゴブリンの後ろまで来ることができた。
こんなこともあろうかと、台所の包丁を持ってきているため、それを使って首筋にグサリ!
ゴブリンは悲鳴すら上げずに倒れ、消えてしまった。
:倒れたモンスターは死体にならずに消えるのか?まるでラノベだな
:うーんご都合主義
岩陰に隠れて様子を見てみたが、他のゴブリンたちは仲間が一匹消えたのにも気づかないでいる。
バカすぎやしないか?
もう一匹ゴブリンを倒してみると、ゴブリンがいた場所に白い石のようなものが落ちていた。なんだこれ?
:魔石じゃね?
:魔石だろ
とりあえずポケットに入れとくか。
やはり、こいつらは味方が消えても一切気づく様子がない。
1時間ほどかけて、ボスっぽいやつ以外全部倒してみた結果、白い魔石が10個ほど集まった。
そして、やはりボスは仲間が消えたことに気づいてすらいない。バカすぎだろ。