002-001 僕もそのゲーム得意ですから
僕がゲーム部に入部した翌日。
の放課後。
僕は一直線に部室に向かう。
「お疲れ様です」
僕を出迎えたのは、昨日のような真っ暗な部室ではない。
これが本来の部室なのだろう。
「おっ、モモちゃん。ういっす」
僕を見るなり、端末をいじりながら突っ伏していた机から飛び起きてそう言ったのは、you先輩だった。
猿子優先輩。
黒髪ショートで、眼鏡、結構整った顔立ちだけど、目の下には薄っすらとくまがある。
猫背だから正確にはわからないけど、身長は僕と同じか若干低いくらいなので、160cmくらい。
「他の先輩方は?」
「部長は会長だから、今日はそっちの仕事が終わってから来るって。K.A.I.は知らんけど、そろそろ来るんじゃね?」
Tomo先輩って、生徒会長も兼任してたのか。
「あら、ヒビキ、あんたもう来てたのね」
僕達がそうこう話していると、you先輩の言った通り、K.A.I.先輩が入って来た。
K.A.I.先輩、雉尾海先輩。
茶髪ツインテールで、全体的に細く、か弱い印象を受ける。
身長は僕より低く、155cmくらいだと思う。
「お疲れ様です」
全員、着席。
「何する?」
「わたしはちょっとソシャゲのスタミナ消費したいから、少ししたら参加するわ。その間、2人で何かしてたら?」
「だって、モモちゃん。なんかやりたいゲームある?」
なんか、思っていた雰囲気じゃない。
もっと、こう、ガチでやる感じじゃないのかな?
「あの、大会に向けて、練習とかするんじゃないですか?」
「いや、しないけど。だって、オレ達、大会で結果残すためじゃなくて、楽しむためにゲームやってるんだし」
「えっ、だって、勧誘ポスターには…」
「あ〜、あれね。下手に部員増えたら、嫌じゃん。ガチ勢募集、みたいにしとけば入ろうとする人、グッと減るだろうし、仮に勧誘試験を受けに来たガチ勢がいたとしても、そう言う奴は1人よがりなプレイしがちだから追い返せるじゃん」
「じゃあ、この部活って気儘にゲームやってるだけの部活ってことですか?」
「うん、そうだよ」
「…ッ!」
入る部活、間違えた!
「『入る部活、間違えた!』って顔してんね」
ヤバッ、顔に出てた…。
「そ、そうですよ。僕は、ガチガチに練習して強くなって、大会とかでバンバン活躍したくて、ゲーム部に入ったんです」
「安心しなよ。オレ達は仲間内で楽しくゲームがしたくて集まってるゲーム部だけど、弱いわけじゃない。楽しく、強いゲーム部さ。この部活で毎日遊んでれば、強くなれて、大会でも結果を残せるよ」
「本当ですか?」
「なら、試してみるかい?オレの実力」
そう言って、you先輩は1本のゲームを取り出した。
you先輩が取り出したのは、「大混戦クラッシュシスターズEX」。通称「クラシス」。
大手ゲームメーカーの参天堂のキャラが集まる対戦アクションゲームだ。
みんなで集まってワイワイ楽しめるゲームでもあり、その反面、地形やルールをシンプルにすれば、ガチ対戦もできるゲームだ。
「良いですよ。僕もそのゲーム得意ですから」