009-002 …ヤバいです
カードゲームと格ゲーの県予選は無事に終わった。
結果としては、カードゲームの方は、you先輩は14位で、県予選敗退。格ゲーの方は、you先輩は1位、K.A.I.先輩は3位で、2人とも全国大会進出となった。
ここで僕が特筆したいのは、とりあえず1点だけ。格ゲーにおけるyou先輩の凄まじさだ。
you先輩が大会において被弾した回数は1回。
被弾させたのは勿論、you先輩をよく知るK.A.I.先輩だ。
それはつまり、K.A.I.先輩以外は誰1人として、you先輩に攻撃を当てることなく敗退したと言うことだ。
これを凄まじいと言わずして、なんと言うべきか。
you先輩は、人としては全く尊敬できないけど、ゲーマーとしては本当に尊敬できる先輩だ。
そんな県予選を終えたとある日の放課後。
「お疲れ様です」
「よぉ〜、MoMoちゃん。待ってたぜぇ」
「おつかれ」
そこには、you先輩とK.A.I.先輩の姿が。
今日はK.A.I.先輩の方が早かったらしい。
K.A.I.先輩はいつものようにスタミナ消費をしている。
来たばっかりなのかな?
「県予選も無事終わりましたね!後は全国大会に向けて、練習あるのみ、ですね!」
「ああ。ま、オレは練習しないけどな。つか、そんな話はさておきだ。全国大会出場にはもう1つ壁があるんだよなぁ」
「壁、ですか?」
「ああ。まあ、それが壁になるかどうかは人によるんだが、MoMoちゃんがどうなのかは知らないからなぁ」
「なんですか?その壁が何なのか、勿体ぶらずに教えてくださいよ」
「成績だよ、成績」
「成績?全国大会に出場するのに、これまでのゲームの成果が必要になるんですか?」
「違うよ、学業の方だよ」
「あ、成績ですね」
「だから、そう言ってんだろ」
「そう言えば、明日からテスト期間でしたね」
「そそ、そこで悪い成績を収めちまうと、最悪、補習で全国大会に出れなくなっちまうわけだ。まあ、赤点さえ取らなきゃそれで良いんだが、MoMoちゃんはその辺どうよ?」
「えっと…」
「なんだよ、歯切れ悪りぃな」
「…ヤバいです」
「赤点取っちゃうってコト!?」
「はい。そうです…」
「あっれぇ?MoMoちゃんって、そんな頭悪いんだっけ?」
「ズバッと言いますね…。頭が悪いと言うか、勉強してないだけって言うか。正直、部活にさえ参加できれば良いんで、学業の方はさっぱりなんですよ」
「そゆことね」
「僕、全国大会出れないってことですか?」
「ま、落ち着きなよ。『最悪』って言ったろ?中間試験が赤点なぐらいなら、部活に参加できなくて、練習ができないくらいだ。流石に期末まで赤点だと、大会と補習の日程が被って大会出れないってことになるかもだが」
「じゃあ、つまり、最低でも期末試験で赤点を取らなきゃ大丈夫ってことですね!」
希望の光が見えた!
「まぁ、でも、中間で赤点取る奴は、期末でも赤点取るからなぁ」
「ぐぬぬ」
せっかく希望の光が見えたと思っていたのに、you先輩はパツンとその光を断ち切る。
「不幸中の幸いか、試験は明日からだろ?なら、まだ勉強する時間は残されているわけだ」
「…そうですね。頑張ってみます。ところで、先輩達の方は大丈夫なんですか?」
「ナメるなよ。オレは1年の学年末、3位だぜ。次の中間も余裕のよっちゃんよ」
また今日日聞かない言葉を使ってる。
って!
「you先輩、そんなに頭良かったんですか!?」
「ま、テスト作ってる先公共も人間だからな。何年もテスト作ってれば、癖も出るわけだ。その癖を正確に読み解き、適切な箇所にヤマを張って勉強する。そうすれば、最低限の勉強で学年3位に登り詰めるなんて容易いことだぜ」
you先輩の勉強法は真似できないな…。
「か、K.A.I.先輩はどうなんですか?」
僕は逃げるようにK.A.I.先輩に話を振った。
「学年2位よ」
「え゛」
「だから、学年2位よ」
「K.A.I.先輩、you先輩より順位高いんですか…!?」
「おいおい。おいおいおいおいおいおいおい。MoMoちゃ〜ん。オレよりもK.A.I.の方が頭が良いだなんて思ってもらっちゃあ困るぜ。オレが2位で、K.A.I.が3位だったこともあるんだからなぁ。学年末はK.A.I.の方が相性良かっただけで」
と、you先輩は負けじと補足した。
「K.A.I.先輩はどんな勉強法なんですか?」
「わたしの勉強法は簡単よ」
「本当ですか!?」
学年2位の勉強法。真似できれば、赤点回避ぐらい余裕だろう。
「覚えれば良いのよ。教科書、プリント、板書の内容、全部をね」
「む、無理ですよ。そんなの…」
「あら?クラシス全キャラの全技情報覚えるのに比べたら随分と簡単だと思うけど」
いや、「大混戦クラッシュシスターズEX」に一体何キャラ出てると思ってるんだ。
約100体の全技の全情報なんて、逆立ちしたって覚えられる気がしない。
確かに、それに比べれば、教科書とかを全部覚える方が簡単かも知れないが、僕にはできる気はしない。
僕達がそんな話をしているとTomo先輩がやって来る。
「おや?まだゲームをしていないなんて珍しいね」
「おっ、聞いてくれよ部長。MoMoちゃん、テストで赤点取りそうなんだってさ」
「それは大変だね。普段から勉強していれば問題ないだろうに、どうしてそんなことになっているんだい?」
you先輩とは違う煽りが全く入っていない純粋な質問に、僕の心に何かがグサリと刺さった。
「いや、その、僕の高校生活は部活のためにあると言うか…。正直、勉強は二の次と言うか…」
「それはいけないね。学生の本分は勉強だよ。勉強をしっかりとやって、それから部活だよ」
「はい」
ぐうの音も出なかった。
「あひゃひゃ」
そんな僕の姿を見て、you先輩は笑っている。
「僕もyou先輩やK.A.I.先輩みたいに特異な勉強法ができれば、テストも楽勝なんでしょうけど」
「おいおい、MoMoちゃ〜ん。それを部長の前で言っちゃあいけねぇなぁ。なんってったってうちの学年、不動の1位は部長なんだぜ」
「私は何も特別なことはしていないよ。普段からコツコツ勉強しているだけで」
うっ。流石、学年1位のお言葉だ。説得力が違う。
明日からのテスト。僕は一体どうすれば良いんだぁ。




