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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
008 県予選(2041)
73/83

008-007 この先輩、どこまで計算ずくなんだ…


 第4安地の収縮が終わり、最終安地が表示されて30秒程が経ったその時、敵チームの移動が始まった。


 その動きはyou先輩の読み通りで、僕にとっても予想通りの動きだった。


 だから(なのかは(さだ)かじゃないけど)、僕の銃弾は敵の頭に着弾した。


「ダウン取りました!」


「ナイス!良い上振れだ」


「確殺は、…無理そうですね」


 僕が1ダウンを取って排莢(はいきょう)している間に、敵はスモークを()いて姿を隠していた。


「いや、上々よ。ほら、見てみ」


 最初に焚いたスモークが晴れる前に、敵は進路を隠すように次のスモークを焚いていた。


「これじゃ撃てませんね」


「良いんだよ。どうせK.A.I.程の命中率じゃないんだろ?だったら、敵にスモークを使わせただけアドだろ」


 敵は次から次へとスモークグレードを使い、あっという間にフェンス裏まで移動した。


 しかし、それもyou先輩の掌の上だ。


「顔、出してくれませんね」


「さっきの1発がよっぽど効いたんだろうぜ。MoMoちゃんのスナイプはかなり警戒されるな、これ。相手は早々に安地に入って一息つきたい所だろうが、そうは問屋(とんや)(おろ)さないってな。K.A.I.」


「わかってるよ」


「MoMoちゃん、そんなガン見してなくても大丈夫だぜ」


「あ、はい」


 you先輩に言われた僕が数分ぶりに僕がスコープから目を離すと、建物の中にK.A.I.先輩の姿はなかった。


 一体、どこに行ったのだろう?


 そう思って、周囲を見回すと、どうやらK.A.I.先輩は建物の屋根の上にいるようだ。


 僕が現状を理解した直後、爆発音が鳴り響く。


 K.A.I.先輩の直下グレだ。


 雨霰(あめあられ)のように降り注ぐそれはまさに空爆だった。


「1ダウン。他3人にもダメージちらほら入ってるよ」


 K.A.I.先輩は冷静にそう報告した。


 敵は(たま)らず、スモークを焚き、近くの建物へと避難し始める。


 しかし、そんなスモークの中から爆炎の光が漏れる。


「焦って確認を(おこた)ったな。残念ながら、その辺りには地雷が埋まってるんだぜ」


 なるほど。と僕は納得した。


 どうやらここまで全部、you先輩の読み通りだったらしい。


 先程まで敵が隠れていたフェンスは幅がかなり広いため、適当な岩裏とは違い、直下グレによるダメージはあまり大きくない。


 しかし、あれだけの数のグレネードを投げ込まれては、敵も無傷と言うわけにも行かないし、フェンス裏に居続けるわけにもいかない。


 そうなれば、グレネードを嫌った彼らが建物までの最短経路を逃げるのは必然で、その道中に地雷を埋め込んでおけば、それを踏むのも必然だ。


 いやらしいことにグレネードでダメージを受けていることすらもyou先輩の計算通りと言うことだ。


 何故なら、地雷のダメージは75だからだ。つまり、地雷だけでは敵を仕留めることはできない。


 手負いの敵が踏んで(ようや)く地雷で敵を仕留めることができる。


 この先輩、どこまで計算ずくなんだ…。


 1つ疑問が残るとすれば、何故敵がフェンス裏に入ることがわかっていたのだろうかと言うことだけだ。


 それがわかっていなければ、直下グレによって建物に追いやることも、地雷を踏ませることも不可能な(はず)だからだ。


「グレでダウンした敵はそのままグレで確殺したよ」


 K.A.I.先輩が報告する。


「OK〜。さ、MoMoちゃん、仕事だ。スモークの方に狙いを定めておいてくれよ」


「はい」


 スモークが消えると、地面を()って移動するダウンした敵の姿があった。


 僕は、その背を向けた敵を2発で仕留める。


「さて、これで4対2。数でゴリ押すのもありだが、イレギュラーが怖いしな。ここは慎重に堅実に行こう」


「つまり、待機ってことですか?」


「ああ、最終安地の収縮まで敵も動かないだろうからな。こっちもゆっくりするとしよう」


「でも、最終安地の収縮が敵に有利になるような形だったら、どうするんですか?」


「それは最悪のパターンだな。その時は仕方なくゴリ押しするしかない。最終安地の収縮点はランダムだから何とも言えんが、ま、大体のパターンでこっちが有利になると思うけどな」


「わかりました」


 そんなわけで状況は硬直する。


―――


 最終安地までの収縮が終わり、最終収縮点が表示される。


 僕達が若干有利な形だろうか?少なくとも、どっちかが今陣取っている場所がそのまま安地に入る続けるような形ではない。


 僕がそう思った直後、爆発音が聞こえた。


 それは敵が投げたグレネードが爆発する音だった。


「お、やってるな」


 you先輩はニヤニヤとそう言った。


「何してるんですか?あれ」


「地雷の除去だよ」


「地雷の除去、ですか?」


「MoMoちゃん、仕様くらいは頭に入れとこうぜ。設置した地雷を除去する方法は4つ。1つは、敵が踏むこと。まあ、これは地雷が本来の使い方をされた時だな。踏んだ敵にダメージが入り、踏まれた地雷は役目を終えて、フィールドから除去される」


「それくらいは知ってますよ。2つ目は設置者を含む味方が踏んだ場合ですよね?この場合は、爆発のエフェクトは出るものの踏んだ味方にダメージが入ることなく、地雷は除去されるんですよね?」


「ああ、そうだ。まあ、この2つは知ってて当たり前の地雷の基本仕様だ。で、残りの2つをMoMoちゃんは知らないわけだ」


「そうですね。お恥ずかしながら…」


「3つ目は、銃弾による除去。埋まっている地雷に銃弾を当てると、爆発して除去される。ただし、現実的じゃない。広大なフィールドに埋まってる地雷をピンポイントで撃ち抜くなんて、設置の瞬間でも見てなけりゃ無理ゲーだ」


「なるほど。そんな除去の方法もあったんですね。つまり、4つ目はグレネードによる除去ってことですかね?」


「その通り。こっちの方がまだ現実的だ。グレネードの爆発範囲に地雷があった場合、誘爆して除去される」


「そんな仕様あったんですね。知りませんでした。と言うことは、敵は今、グレネードによる地雷の除去をしてるわけですね?」


「ああ、そうだ。さっき地雷に1人持っていかれたのが相当効いたらしい。最終収縮で自分達が通りそうな場所をやたらめったら爆発してんのさ。いや〜、助かるね。スモークやグレネードみたいな不確定要素を自ら手放してくれるなんて。ま、楽観的なバカよりも悲観的な秀才の方が(ぎょ)(やす)いってな」


「でも、いつの間に、あんな所に地雷なんて仕掛けてたんですか?」


 僕はてっきりこの建物の周りだけにしか仕掛けていないのだと思っていた。


「だいぶ前だよ。MoMoちゃんが敵を弾いている間にオレ達がぼーっとしてると思ったのか?」


「いや、確かに、何かしてるなとは思ってましたけど」


「地雷もそこらじゅうに仕掛けたし、最終安地内にある物資は全部この建物に運んでおいたんだぜ」


「じゃあ、敵が入ってるあの建物の中には何にもないんですか?」


「ああ、武器以外は何もないぜ。撃ち合いをしたら、向こうが先に弾切れ、回復切れになる」


「これもう僕達の勝ちじゃないですか?」


「ああ、不確定要素は殆どなくなった。99%勝てるだろうよ。だが、油断するなよ。1%は負けるんだからな」


「わかりました」


「さて、(あらかじ)め作戦を伝えておくぜ。相手がグレネードを投げ終わったら、MoMoちゃんは屋根の上で待機。オレ達はあそこの遮蔽(しゃへい)の裏まで移動する。MoMoちゃんは敵の監視をしておいてくれ」


「はい」


「わかったよ」


「了解だ」


「安地的には、MoMoちゃん、敵、オレ達の順に遮蔽から出なきゃいけなくなる。MoMoちゃんが屋根の遮蔽を使えなくなった時、敵が顔を出して撃ってくるようなら、オレ達が詰めて敵を倒す。敵が建物から顔を出さないようなら、MoMoちゃんは安地内に移動しながら監視を続けて、敵が建物から押し出された時に一気に4人で詰める。良いな?」


「わかりました」


「じゃ、作戦開始」


 まずは僕が屋根上に陣取って、そこから先輩達が遮蔽へと移動した。


 先輩達の方にグレネードを投げ込まれたら一大事だけど、どうやら敵はグレネードを投げ尽くしたようだった。


 こちらを(うかが)おうを顔を出した敵を僕は積極的にスナイプする。


 流石に易々と当てさせてはくれないけど、牽制(けんせい)にはなってる筈だ。


 安地の収縮が始まる。


 you先輩の言う通り、まずは僕が遮蔽から押し出された。


 僕は弱い遮蔽へと移動をしながらも、敵から目を離さないようにした。


 先程までの牽制が効いたのか、敵は一切顔を出さなくなっていた。


 しかし、無情にも安地は収縮を続け、敵は建物の外に追いやられる。


 そのタイミングで、僕達は一斉に襲いかかった。


 こっちには豊富な物資と人数差と言う有利がある。


 その有利を僕達はこれでもかと押し付けた。

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