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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
008 県予選(2041)
71/83

008-005 …って、K.A.I.先輩は全チーム覚えてるんですか!?


 県予選、決勝、最終マッチの幕が上がる。


 僕達は作戦通り、飛行船の航行開始地点から最も近いランドマークへと即時降りる形を取った。


 意外にも被りは0だった。


「おっ、幸先いいじゃ〜ん」


「他のチームは追って来ませんね」


「それはそうよ。だって、飛行船からじゃ、どのチームが降りてるかなんてわからないからな。むざむざ追いかけて来ないでしょ」


「なるほど。今の戦局としては、僕達と黎明高校の2チーム対残りの13チームの構図になっているから、わざわざここで13チーム同士で潰し合うようには動かないと言うことですね」


「そうそう。オレ達だって確証があれば、3チームでも5チームでも追いかけて来るだろうがな」


 僕達を除く全てのチームが(けん)にまわったってことなのだろう。


 それ故に、僕達のチームは単独でのランドマーク降りに成功した。


「じゃあ、最初の賭けには勝ったってことですかね?」


「ああ。そうなるな。ほら、見てみ。黎明はずっとホットスポット降りしてたから、ホットスポット目掛けて、7チームくらい降りてるぜ。ま、あの中に黎明がいるかは知らんけど」


 you先輩の言う通り、黎明高校も僕達と同じように、初動の方針は変えているかも知れない。


 そんなことはさておき、僕達は装備を整えた。


「ここから少し北に行ったところ、この辺が最終安地になるよ」


 第1安地が画面上に表示されてすぐK.A.I.先輩はそう言った。


 準備を早々に整えた僕達は、最終安地への先入りをすべく、第1安地の収縮が始まるよりも前に移動を始めた。


―――


 少し移動すると、銃声が聞こえた。


「黎明高校でしょうか?」


「さあな。方向からして、この辺で撃ち合ってるんじゃないか?多分、中〜遠距離で探り合いしてる感じっぽいな。ちょっと(のぞ)いて行くか?」


「それが勝つ為に必要ならすべきだとは思いますが…」


「じゃあ、覗いて行くか。黎明だったら、1ダウンくらい取ってやろうぜ」


 黎明高校が序盤で脱落すれば、僕達が県予選を1位通過できる可能性が高くなると踏んでの提案だろう。


「わかりました」


 僕達はマップの中央へと寄るように進行方向を変える。


―――


 僕達が銃声の方向へ進むと、2チームが絶賛戦闘中だった。


「あ〜、黎明はいないな」


 その戦闘を見て、you先輩はそう言った。


「何でわかるんですか?」


「コスも戦い方も全然違うんよ。さ、さっさと安地行くぞ。この感じだと漁夫の漁夫まで来そうだからな」


 そう言って、you先輩は進路を変えた。


「もしかして、全チームのコスと戦い方覚えてるんですか?」


 you先輩の後を追いながら、僕は問う。


「まさか。K.A.I.じゃあるまいし。めぼしいチームだけだよ」


「あ、そうなんですね。…って、K.A.I.先輩は全チーム覚えてるんですか!?」


「勿論だよ。それで勝率が0.1%でも上がるなら、そうすべきだろ?」


「そ、そうですね」


 と言いつつ、僕は内心引いていた。


「にしても、あいつらも無様なもんだよなぁ」


「『あいつら』って、さっきの2チームのことですか?」


「そそ。協力してオレ達や黎明を潰さなきゃならんのに、潰しあってちゃ世話ないぜ。ま、しょうがないんだけどな。MoMoちゃんは『囚人のジレンマ』って知ってるかい?」


「いえ、知りませんけど」


「ざっくり言えば、互いに協力した方がベターな結果になることがわかってても、協力しない奴が得をする状況だと、互いに協力しなくなるジレンマだな。ちゃんとした情報はググって欲しいけどな」


「さっきの2チームはまさに『囚人のジレンマ』だと言いたいんですか?」


「だって、そうだろ?本当は協力してオレ達や黎明潰した方が良いのに、結果としては協力せずに潰しあってるんだからな」


「確かに、そうですね。でも、仕方がないこと、なんですよね?」


「ああ。談合でもしない限り無理だな。だって、そう言うジレンマなんだから」


 僕達はそんな話をしながら、安地へ移動した。

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