008-002 は、はぁ(?)
県予選当日。
僕達は、割り当てられた会議室でアップを始めていた。
30分後に(オンライン)開会式、そして、その直後に1回戦第1試合だ。
「さてと、そろそろ今日の作戦を発表しておくか」
各人が各々適当にアップしている最中、you先輩はそう言った。
「作戦、ですか?」
「ああ、勿論、細かいところは戦局次第だが、大まかな作戦は既に決めてある」
「とは言え、いつもとあまり変わらない感じですよね?」
「いやいや、こんな県予選くらいで全力を出すわけにはいかないんよね」
「どう言うことですか?」
「公式大会だから、県予選のリプレイは残るんよ。そこから解析されて人読みされると全国大会行った時、不利になるだろ?」
「全国大会出場が確定している前提で話しますね」
「99%確定よ」
「まあ、わかりました。仮に、全国大会に行けるとして、本当に解析とかされるんですか?」
「強豪であればあるほどしっかりと敵チームを解析してくる。上位常連校と初出場校は特に解析対象になりやすい。そう言った意味だと、オレ達は非該当なんだが、念には念を入れておくに越したことはないだろ。ちなみに、去年のオレ達は何の警戒もせずに県予選と同じ戦法で挑んでなす術もなく負けた」
「だから、真の実力は隠せる限り隠しておいた方が良いと?」
「ああ。学校によっちゃデフォルトコスで統一してるところもあるくらいだぜ。人読みを避けるためによ」
「じゃあ、僕達もデフォルトコスにすれば良くないですか?」
「甘いね、MoMoちゃん。甘々だ。それには2つの欠点がある」
「欠点、ですか?」
「1つは、チーム全体の雰囲気は変わらないことだ。コスなんざ上っ面しか変えらんねぇからな。結局、武器構成とか動きとかでバレるんよ」
「なるほど、そんな欠点が。もう1つの欠点は何です?」
「シンプルにダサいだろ。デフォルトコス。コス自体もダサいし、コス変えて人読みを避けようとする浅はかな考えもダサい。リスクがあっても自分を貫くのかっこいいだろ?」
「は、はぁ(?)」
「てなわけで、オレ達はしっかりと戦略の方を変える。つっても、役割が変わるのは、MoMoちゃんとK.A.I.だけだがな」
「もしかして、僕がスナイパーやるってことですか?」
「おっ、察しがいいね。その通り」
「無理ですよ。僕なんてK.A.I.先輩に遠く及ばない実力ですから」
「大丈夫、大丈夫。県予選ならそれでもお釣りが来るから」
「わたしは2丁拳銃ってこと?」
K.A.I.先輩はそう言った。
「そうそう。まあ、端的に言えば、MoMoちゃんとK.A.I.の役割を入れ替える感じだ。だから、部長にはK.A.I.と組んでもらうけど大丈夫だよな?」
「大丈夫だよ。MoMoと組むつもりで準備していたから、そこまで自信はないけれどね」
Tomo先輩はそう言った。
「よし。で、だ。単に2人の役割を入れ替えただけだと、本来の戦闘スタイルの隠蔽と言う意味ではちょっと物足りない。だから、今回の基本戦術は、安地先入り強ポジキープで行こうと思う」
「戦闘を極力行わないってことですか?」
「そうそう。分析されたくないのなら、分析されるデータを減らせば良いって発想さ」
「でも、キル取らないで大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。県予選のルールなら、1位取り続ければ、突破できるから」
「まあ、わかりました。でも、なんでこんな大事なこと、この試合直前で言うんですか?もっと早く言ってくれれば良いのに」
「敵を欺くにはまず味方から、ってことさ」
「ちょっとよくわかりませんけど。少なくとも、僕がスナイパーになることくらいは先に教えておいてもらえれば、練習して、今日に備えられたと思うんですけど」
「いや、オレの予想では、練習するまでもなく、この県予選は突破できる。だったら、隠せる限り手の内を隠した方が良いってのがオレの考えだ。この戦法を取ることで、MoMoちゃんのスナイパーの腕と、K.A.I.の2丁拳銃の実力と、K.A.I.と部長の連携はバレるわけだからな。ぶっつけ本番にすることで、本来の実力以下の誤った実力をリプレイに残すことができる。それをオレ達の本来の実力だと勘違いして解析してくれれば、御の字ってわけよ」
「なるほど。何となくわかりました」
そんな会話をしていると、開会式までの時間はあっという間に過ぎていった。




