007-014 インターハイの県予選って、来週なんですか!?
いつもご愛読ありがとうございます。作者です。
新作の執筆作業のため、翌月投稿分より暫くの間、1ヶ月あたりの投稿を1話程度にさせていただきます。
こちらの都合による勝手な判断で申し訳ございませんが、本作の需要が低いことから上記の判断とさせていただきました。
読者の方よりご要望がございましたら、再度投稿頻度の方を検討いたします。
以上、よろしくお願いいたします。
漁夫の利を得た僕達は、最終安地に向かって進軍を続けていた。
事態は一瞬の出来事だった。
「すまない。ダウンした」
移動中に不意に行われたそのTomo先輩の報告が、全ての始まりであり、終わりであった。
僕達は、敵の姿を充分に視認する暇もなく、蹂躙されたのだった。
僕は、状況を飲み込めなかった。
あまりに一瞬の出来事に僕は混乱していた。
そんな僕の耳に届いたのは、you先輩の言葉だった。
「ぐわあぁぁ、こいつらチートじゃねぇか!」
「チート、なんですか?」
反復するように僕はそう言った。
「ああ、少なくともオートエイムは積んでるな。全弾ヘッショだもん」
you先輩は、戦闘ログを見ながらそう言った。
「チーター、初めて遭遇しました。本当にいるんですね」
「まあ、このゲームは運営がちゃんと仕事してくれてる方だからな。結構少ない方だぜ。それでもいるんだよなぁ。クソみたいなチーターが」
「そうなんですね」
「MoMoちゃんはあれだろ。今まで1人で潜ってたんだろ?だから、遭わなかったんだろ」
「それって関係あるんですか?」
「ああ。ソロよりフルパの方が遭いやすい。大体はブースティングで小遣い稼ぎしてるような奴らだからな」
「なるほど。そう言う理屈なんですね」
「つか、チーターの癖に、ハイドしてたんだが。安地的に誰かしら通るだろう場所に隠れてて、そこを通り過ぎたから後ろから撃って来たんだろうぜ。マジ、キモいわ。とりあえず、運営に報告っと。MoMoちゃんもしとけよ」
「はい。えっと、どうやって…」
「観戦画面をチーターの視点に切り替えて、右下にある報告からやんのよ」
「あ、はい。わかりました。これでBANされるんですね」
「う〜ん。おそらく。五分五分って感じかな」
「何でですか?」
「人力でもギリできなくないプレイだからだよ。オレは今の奴ら、99%チーターだと思ってるけどよ、1%はめっちゃ上手い奴の可能性もあるだろ?」
「なるほど」
「明らかにゲームの仕様から逸脱した動きをしてるなら、100%チーターって言い切れるし、そんな奴らは必ずBANされるんだが、人力でもギリできなくないレベルのチートだとチーターだと断定できない。疑わしきは罰せずってことでBANされない」
「でも、今のは明らかにチートでしたよ」
「それはオレ達の視点ではな。一瞬の出来事だったし、よりそう思えるわけだ。けどな。間違ったBANだけは絶対にしちゃいけないんだよ。正直、疑わしいだけでBANされる世界線だったら、真っ先にK.A.I.がBANされると思うぜ」
「確かに、それは困りますね」
K.A.I.先輩は確かにチーターじみた腕前の持ち主だ。
―――
さて、そんなチーター騒動もひと段落したところで、僕達は当初の話題に差し戻る。
「で、数試合やってのMoMoちゃんの評価だけどよ」
「はい」
「MoMoちゃんはしっかり成長してるようだな」
「本当ですか!?」
you先輩に面と向かってそう言われると、褒められた気分になって嬉しくなる。
「ああ。それだけじゃない。MoMoちゃんは身に付けた技術をちゃんと発揮できているらしい」
「それは…、当然のことじゃないですか?」
何を当然のことを言ってるのだろうと、僕は首を傾げる。
「いいや、技術を身に付けることと、使えることは別の話だぜ」
「技術を身に付けているのに、使えないなんてことがあるんですか?」
「ああ、言い換えれば、それは技術を自分のものにできてるかできてないかの差なんだよ。身に付けた技術が借り物であるうちは、習得した技術が収納された引き出しからその技術を引っ張り出せない。と言うか、引っ張り出すと言う発想ができない。自分のものになって初めて、その技術を使うべき時に使えるようになる」
「そう、なんですかね?」
「尤も、これはセンスの問題だ。恐らく、MoMoちゃんは身に付けた技術を即時、十全に使い熟すことのできるタイプなんだろうぜ。だから、身に付けたのに使えないって言う状況があると言うことが理解できない」
「えっと、褒められてますか?貶されてますか?」
「褒めてんだよ。普通は身に付けてから使い熟すまでにはラグがある。だから、そのラグを埋めるために、使い熟すための練習が必要になる。でも、MoMoちゃんはその練習がいらねぇわけだ。それって、人より少ない練習時間で強くなれるってことなんだぜ」
「なるほど…。僕にそんな才能が…。でも、全然実感できないですけどね」
「なら、実例を出そうか?」
「えっ?あっ、はい」
「最後の試合よ、漁夫に行く時、MoMoちゃん、オレの命令無視してグレ投げたろ?」
「はい。あっ、えっと、ごめんなさい」
「いやいや、謝る必要はない。勝負は結果こそが全てだ。あれで2ノックできて、漁夫が上手くいった以上、MoMoちゃんのあの判断は正しかったってことなんだぜ。で、オレがこの話を持ち出したのは、MoMoちゃんが昨日今日でマスターしたグレの技術を誰に言われるでもなく使っていたことを示すためだ」
「はい(?)」
「何であの場面でグレを投げた?」
「『何で』ですか?理由はないですけど、そうすることが正しいと思ったからですかね?」
「それ。正しくそれだよ。その判断こそがMoMoちゃんが技術を使い熟している証だよ」
「そう、なんですね。まだいまいちピンと来てませんが、僕は身に付けた技術をすぐに使い熟せるタイプの人間なんですね」
「自分の凄さに全く気付けてないな、これ。MoMoちゃんのその才能は、オレの想定を覆せるほどの才能なんだぜ」
「どう言うことですか?」
「この5月の上旬で、オレはMoMoちゃんに詰め込めるだけの技術を詰め込もうとした。これは来週に控えたインハイの県予選で、MoMoちゃんができることを増やすためだ」
「そう言う話でしたね」
「でも、オレは詰め込んだ技術を全て発揮できるとは思っちゃいなかった。『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』。つまり、県予選までの僅かな時間でどれかしらの技術を使い熟せるようになれば良いと思ってた。でも、MoMoちゃんは習得した技術を全て使い熟せると来てる。MoMoちゃんはオレの想定より遥かに強くなったってわけだ」
「なるほど。…。…?…!って、待って下さい!インターハイの県予選って、来週なんですか!?」
「えっ、知らなかったの?そうだよ。前に『5月の半ばにはインハイの県予選が始まる』って言ってたじゃん」
「そ、そうでした。どうしましょう!僕、全然心の準備できてませんよ」
「大丈夫、大丈夫。MoMoちゃんはオレの想定より遥かに強くなってるんだ。県予選なんて楽勝だろうよ」
そんなわけで、気が付けば、県予選は来週に控えていた。




