001-005 …えっ?
ゲームは終わった。
僕は失意を味わいながら、ヘッドセットを外す。
「さて、総評を始めようか。敵としては、どうだったかな?」
Tomo先輩はそう言う。
「どうもこうもないね。こいつ、ザコ過ぎ。動きは凡庸で読みやすいし、逆にオレの策には1mmも気付いてないんじゃないか?」
you先輩が酷評する。
「なるほど。モモイ君は、どうだろう?振り返って、何か思うことはあるかな?」
「シンプルに僕の力が及ばずと言った感じですかね。you先輩の言う通り、僕は何もできずにキルされてしまいましたから」
「なるほど。では、モモイ君の合否を決めようか」
聞くまでもない。撃ち合いにすら持ち込めず、一方的に敗北した僕が合格するなんてことがあろうか。
「モモイ君は合格。youもK.A.I.も良いね?」
「ああ」
「うん」
…えっ?
「な、なんで合格なんですか?その、自分で言うのもあれですけど、僕全然でしたよね!?」
「別に今回の試験は実力を見ていたわけじゃないんだ」
「じゃあ、何を見てたんですか?」
「人間性かな?」
「人間性…」
「急に呼び出したり、試験のゲームにも選択肢がなかったり、それに今回のゲーム展開は事故みたいなものさ。もし、実力を見るなら、こんな理不尽な試験にはしないよ。だから、今回見ていたのは人間性の方。理不尽な試験を突き付けられたり、それで結果が良くなかったりした時に、どんな対応をするのかを見ていたんだ。どんなに実力があっても、人間性が良くない人は入れたくないからね。では、そろそろ本来の私達を知ってもらおうかな」
Tomo先輩の声が「では」と言ったタイミングで変わる。
その声は、女性のものだった。
僕がそのことに違和感を感じたのと同じタイミングで、外からの光を遮断していたカーテンが開けられる。
「…えっ?」
意味のわからない光景に、僕の口からポロリと言葉が零れる。
Tomo先輩も、you先輩も、K.A.I.先輩も、全員女性だった。
「ようこそ、日々原高校ゲーム部へ」