007-008 結局はそれだけの差
K.A.I.先輩によって、格闘の仕様を教えられた僕は、早速練習を始めることにした。
でも、まずはピストルから。
ランダムダミー相手に10mほど距離をとって、僕はピストルを構えた。
単発武器ではあるものの、操作次第で擬似連射武器となるピストルの性質は、アサルトライフルやサブマシンガンのような連射武器と、スナイパーライフルのような単発武器の中間のような性質をしている。
そうなって来ると、これまでの練習はピストルの練習の先取りだったらしい。
一時は嫌いになりかけたダミーのランダムムーブも今となっては可愛いもののように思える。
僕は数回の射撃でピストルをマスターした。
そして、おまけ。ショットガン。
これもなんだかんだで簡単にマスターできた。
スナイパーライフルとかは、点のレティクルで、ショットガンは、ペレットの拡散範囲を示すレティクルだ。
だから、スナイパーライフルの技術がそのままショットガンに使えるかと言われれば、そんなことはない。
少しばかりのカスタマイズが必要だ。
スナイパーライフルは点のレティクルを標的に精密かつ確実に重ねる必要がある。
一方で、ショットガンはペレットの拡散範囲をなるべく最大面積で重なるように重ねる必要がある。
結局はそれだけの差。
それを理解している僕にとっては、ショットガンと近距離スナイプの2つに違いなんて殆どなかった。
だから、簡単にショットガンをマスターできた。
―――
これまでの苦行に満ちた練習のおこぼれを預かることで、あっという間に2つの武器をマスターした僕は、続いて格闘の練習へと移った。
そこには地味でそこまで難しくない練習が待っていた。
空に向かって、パンチ、キック、アッパー。
こんなのは、3回ずつやれば、出し方を完全に理解することができた。
で、その攻撃をダミーに当てることができるか?
これもそこまで難しくなかった。
最初こそ、当たらなかったり、想定と違う当たり方をしたりしたけど、それだけのこと。
数分あればそこの修正は問題なくできた。
定期的に復習は必要かもだけど、ひとまずは、ランダムに動くダミーに当てたい種類の格闘を当てられるようになった。
ここから少し壁にぶち当たる。
ダミーのミリ残しが難しい問題だ。
サブマシンガンでダミーの体力をミリまで削って、最後を格闘で仕留める。それはできる。
でも、実戦でそれができるかと言われると疑問が残る。
仮に、サブマシンガンを撃ち尽くした時に、敵がまだ生きているとして、その敵はワンパンで倒せるのだろうか?と言う問題が僕に絡み付いて来るのだ。
練習中は良い。ダミーの頭の上にはHPゲージがあるから、これを見ながら、ワンパン圏内に入れさえすれば、ワンパンで倒せる。
でも、実際のプレイヤーにはHPゲージは存在しない。
であれば、自分の感覚値でワンパンで倒せるのか、リロードした方が良いのかの選択をしなければならないわけだ。
とりあえず、サブマシンガンで撃ち漏らした敵を格闘で倒す練習はできたので、相手のHPがどれくらい残っているかの感覚は、実戦経験の中で理解して行かなければならないんだろうなって感じだ。
一方で、リロード中に格闘を挟む練習の方は残課題もなく、順調に達成できた。
今まで割と気を抜きがちだったリロード中も色々考える必要があるんだなぁと言う知見を得た。
近距離で撃ち合って、弾が切れたら一瞬下がる。敵が追って来るようだったら、リロードが開始されたことを確認して、格闘を当てる。その後、リロードが完了したら、その敵を撃ち殺す。
みたいな、自分の局面と、敵の状況と、装備の状態と、お互いの距離感、などなど、色々な情報を素早く脳という計算機に叩き込んで、アウトプットされた対応を間違うことなく行う必要があるのだ。
それと計算機の信頼度とレスポンス速度も重要だ。瞬時に正解のアウトプットを出してくれないと、アウトプット通りの対応をしてもやられちゃうわけだし。
まあ、これに関しては鍛えておくに越したことはないだろう。
きっとyou先輩は僕の思考回路をフルトレースできる筈なので、僕がバグらないように扱ってくれるんだろうけど、僕がもっと使いやすい存在になれば、you先輩の負荷を下げられるのだから。
そんなわけで、いくつかの課題を残しつつも、僕は、ピストル、ショットガン、格闘を体得した。




