007-002 !?
ランクマッチ終わりに、僕とK.A.I.先輩だけが引き続き、訓練場に移動した。
「さあ、SR最後の練習だ」
「何をするんですか?」
「近距離スナイプだよ」
「それって、ショットガンの適正距離でスナイパーライフルを使うってことですか?」
「そ。これを覚えれば、全距離をSR1本で賄える」
「でも、難しそうですね…。近距離の敵にヘッドショットをしなければならないんですよね?」
「いや。確かに、ぼくは近距離スナイプでもヘッドショットを狙うけど、MoMoは真似しなくても良い。まあ、練習の時だけはヘッドショットを狙った方が良いだろうけどね」
練習で苦労した方が本番の為になるからだろう。
「それで、どんな練習をするんですか?」
「まずは動かない的を狙う。とは言っても、これは簡単だ。SRを持ってもらえるかい?」
「はい」
僕はK.A.I.先輩に言われるがままにスナイパーライフルを持つ。
「エイムをしない状態でもレティクルが見えるだろう?」
レティクル。照準を合わせる印のことだ。
確かに、画面の中央に点が、そこから少し離れて、点を向くように上下左右に線が引かれている。
「あっ、はい。半透明なレティクルが見えます」
「中央の点をターゲットに重ねて撃てば、後は勝手に当たる。やってみな」
「はい」
僕は言われた通りに的を撃つ。
オレンジヒット。
あれ?ちゃんとレティクルを的の中央に重ねた筈なのに…?
「ゆっくりで良いから、ちゃんと狙うんだ。的の中心にレティクルの点をしっかりと重ねて」
「はい」
難しい…。
ちょっとでも力が入ると、的の中心からレティクルが外れてしまう。
今まで以上に繊細な操作が必要だ。
赤ヒット。
「これは少し練習した方が良さそうだね」
「そうですね。ものすごく繊細な操作が要求されて難しいです」
「まあ、仕様もあるからね」
「どう言うことですか?」
「SRの弾は遠くに行けば行くほど、弾の当たり判定が大きくなるんだよ。だから、遠くの敵の方が寧ろ当たりやすい」
「そうなんですね」
「ああ。だから、近距離スナイプには、少し操作しただけでエイムが大きく動いてしまう操作性の仕様と、当たり判定がいつもより小さくなってる武器の仕様、この2つの仕様に慣れる必要があるんだよ」
「なるほど」
「とりあえず、ある程度そのぎこちなさが取れるまで動かない的への赤ヒットの練習をすると良い」
「はい。わかりました」
「できたら、声をかけてくれよ」
「はい」
僕は黙々と近距離スナイプの練習をする。
なんだろう。この練習、華がない。
ゆっくりと照準を合わせて、赤ヒットを狙うだけ…。
なんか、こう、1マガジンでダミーをダウンさせる爽快感とか、そう言うのが何もない。
そう思っていたけど、15分も練習していると、自分のエイムスピードが徐々に加速していく達成感のようなものを感じた。
「随分と慣れて来たじゃないか。一応、言っておくと、4秒で2発。これが最低ラインだよ」
僕の画面を覗き込んだK.A.I.先輩はそう言った。
「なんで、4秒で2発なんですか?」
「サブマシンガンを持った相手と対峙したことを想定した場合、相手の命中率が50%だとすると、約1.5秒で72ダメージを受けることになる。そこから、リロードが約2秒、残り0.5秒で残った体力28を削られる。つまり、およそ4秒で相手に負けるわけだ」
「なるほど。対して、スナイパーライフルは身体で50ダメージですから、その4秒の間に2発当てれば、こちらが勝つと言うことですね」
「そう言うこと。ま、実戦に投入できる最低限の指標だね」
「ちなみに、K.A.I.先輩はどれくらいなんですか?」
「1秒以内に1発」
「!?」
「何も驚くことじゃない。相手がMoMo並みのエイムを持ってると過程したとしても、リロードを挟まずに1マガで1秒かからずやられるんだ。なら、こっちは1秒以内にヘッドショットを決めなければダメだろ?」
「確かに、そうですね」
まあ、僕は近接用に使う武器の1マガジンで倒し切れなかった時の保険にスナイパーライフルを使うくらいの気持ちでいよう。
流石に、1秒以内にヘッドショットの精度で射撃は難し過ぎる。
―――
K.A.I.先輩から補足情報を貰った僕の地味な練習は続き、今日は解散になった。
「MoMo。家で練習するのは良いけど、あんまり無茶するんじゃないわよ」
「はい。わかりました」
家での練習は控えめにしておこう。




