表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
007 日常(2041/05)
52/83

007-001 お疲れ様です…


「お疲れ様です…」


 GWも明けた平日の放課後。僕は部室の扉を開けて、そう言った。


「お、MoMoちゃん。おっす、おっす。どしたん?随分とぐったりしてるけど」


 やっぱり部室には既にyou先輩がいて、そんな先輩は僕を気にかけてくれた。


「昨日ゲームやり過ぎました…」


「何時に寝たん?」


「昨日の、いや、今日の4時ですね」


 答えながらも、僕は椅子の方へとよたよたと歩き、そして、座って、机に突っ伏した。


「んで、睡眠不足ってわけか。バカだねぇ。そんなんなるくらいなら、もっと早く寝れば良いのに」


「それはそうなんですけど。ゲームに没頭しちゃってて、時計見たら4時近くだったんですよ」


「授業中寝なかったの?」


「一応、寝ました。1時間だけ。後は時間割り的に寝れなかったんですよね」


「つか、そんなんなら、部室に顔出さずに帰れば良かったのに」


「それはできませんね。僕は部活のために学校来てるので」


 僕とyou先輩がそんな会話をしていると、K.A.I.先輩が部室にやってくる。


「どうしたの、MoMo。死にそうな顔、してるじゃない」


「あ、K.A.I.先輩、お疲れ様です。ゲームのやり過ぎですので、お気になさらず。それよりも、仕上げて来ましたよ、弾速の体得」


「そうなの?なら、見てあげるわ。準備して、エイム温めて待ってなさい。ソシャゲのスタミナ消費したら、試験してあげるから」


「わかりました」


 僕はPCの電源を入れ、バトロワを起動する。


 そして、訓練場に入り、スナイパーライフルを手にした。


 何発か試し撃ちする。


 よし。良い感じだ。


 体調は絶不調だけど、エイムは逆に、と言うか、(むし)ろ良い感じだ。


 夜遅くまで練習してた成果はばっちり出てる。


「じゃあ、試験を始めようか」


 僕が少し試し撃ちをしていると、ソシャゲのスタミナ消費を終えたK.A.I.先輩が、僕にそう声をかけた。


「はい」


 試験が始まり、僕はK.A.I.先輩に言われた的を撃ち抜いた。


 そして、結果は…。


「合格だ」


「ありがとうございます」


「やっぱりMoMoは真面目で優秀だね」


「そうですか?」


 褒められて、素直に嬉しい。


「ああ。この弾速の体得には2つの攻略法がある。1つは、素直にエイムを合わせる方法。もつ1つは、置きエイムだ」


 置きエイム。敵が通りそうなところに予めエイムを合わせておく技術だ。


 今回で言うと、的の通り道にエイムを合わせておくのが、置きエイムに当たるだろう。


「僕は、馬鹿正直にエイム合わせてましたけど、置きエイムの方が効率が良いですよね?」


「実戦なら、置きエイムを選んだ方が確かに良い。けど、これは練習だ。なら、自分にとって難しい方を選んだ方が良い」


「僕の選択は合ってたってことですか?」


「そうだよ。MoMoが置きエイムに逃げずに、真面目にエイムを合わせる選択をしたからこそ、得られたものがあった」


「得られたもの、ですか?」


「エイムを含む射撃全体のスピードだよ。MoMoの射撃スピードは、一流のSR(スナイパーライフル)使いと言っても過言じゃない。だから、もうこれ以上、練習する必要はないよ」


「でも、K.A.I.先輩にはまだまだ及ばないですよ」


「ぼくは、超一流だからね。でも、MoMoはぼくのレベルまで達する必要はないよ」


「どうしてですか?」


「超一流になるってことは、それ即ち、スナ専になるってことだ。スナ専になるつもりはないんだろ?」


 スナ専、つまり、スナイパー専門ってことだ。


「確かに、なるつもりはないですけど、超一流になっておくに越したことはないじゃないですか?」


「一概にそうとも言えない。初心者が一流になるよりも、一流から超一流になる方が必要な経験値は多い。MoMoが今日まで練習した練習時間の何十倍もの時間の練習が必要だし、実戦経験もそれ以上に積まなきゃならない。超一流とはそうして初めて辿(たど)り着く境地だよ」


「なるほど。スナイパーライフルばかりに時間を使うくらいだったら、その時間を別の練習に()てて、他の技能を習得した方が良いってことですか?」


「ああ、その通りだ。それに、超一流になる過程は苦行だからね。血の(にじ)むような努力をして、(ようや)く0.1秒、(ある)いは、0.01秒速くなるとか、その程度だ。要は、努力と成果のバランスが悪過ぎるんだよ。だから、楽しくない。それこそ、スナ専になると覚悟を決めて、上達を気長に待つような気の持ちようでなければ、狂ってしまうくらいにはね」


「大人しく今の実力で満足しておきます」


 そう、僕とK.A.I.先輩が話していると、部室の扉が開く。


「良いタイミングだね、Tomo。ちょうどMoMoのSRが仕上がったんだ。4人でランクに潜らないかい?」


「ああ、構わないよ」


「youも良いだろ?」


「ああ、良いぜ。でも、スナ2枚は、バランス悪くねぇか?」


「なら、ぼくが2丁拳銃で戦おうか?」


 2丁拳銃。武器スロットを両方ピストルにする構成のことだ。


「いや、それ、火力下がってんじゃねぇか。K.A.I.もスナで良い。オレがスナ2枚でも勝てるように考えてやるからよ」


―――


 そんなわけで実戦だ。


「良いかい、MoMo。スナイパーは最初の1発が何よりも大事だ。敵に警戒される前の最初の1発。それが当たるか当たらないかで戦況は大きく左右される」


「はい」


 K.A.I.先輩は飛行船の中で、僕にそうアドバイスをくれた。


 結果だけを言うと、面白いくらい弾が当たった。


 K.A.I.先輩が重要だと言っていた1発目。これは、(ほとん)ど全弾当たった。


 あまり動いていない敵には勿論のこと、移動中の的にもしっかりと当てることができた。


 多少射撃までのスピードが遅くなっても、しっかりと狙うことで弾はちゃんと当たるのだ。


 ヘッドショット率もおよそ7〜8割と、5発撃てば3〜4回はダウンさせられる計算だ。


 つい数日前までスナイパーライフルなんて殆ど触ったことがなかっただけに、こうしてバンバン敵をダウンできると、上達を実感できて楽しかった。


 ちなみに、課題、と言うほど大きな問題ではないけど、課題のようなものは2点だけあった。


 1つは、2発目以降の命中率だ。


 敵に警戒されると、命中率は6割を下回る程まで下がってしまう。


 特に、ランダムに動かれると当たる気がしない。


 こればっかりは経験だとK.A.I.先輩は言っていた。


 もう1つは、中〜近距離での戦いにあまり貢献できないことだ。


 普段はアサルトライフルとショットガンの構成だから、中距離をアサルトライフルで戦って、近距離をショットガンで戦うと言うスタイルで戦っている。


 でも、今回は1枠をスナイパーライフルによって埋められてる所為で、アサルトライフル1本で中〜近距離を対応しなければならなくなっている。


 アサルトライフルのエイムを鍛えていたお陰で、一応戦えてはいるのだけど、いつもより戦闘力が落ちている感覚は否めない。


―――


 そして、ランクマッチを制した後。


「どうでしたか?」


 僕はK.A.I.先輩に聞く。


「良いんじゃないの?練習で身に付けたことは、発揮できていたと思うわ。現時点で平均より上のスナイパーになっているんじゃないかしら?後は、実戦あるのみね。実戦を重ねていけば、より柔軟な対応ができるスナイパーに成長できると思うわ」


「ありがとうございます」


「オレとしても及第点だぜぇ。ま、普段、K.A.I.に慣れちまってるから、オレの採点は辛めになってるんだけどな。野良で潜っても充分活躍できるんじゃないか?知らんけど」


 you先輩からも(一応)褒め言葉をもらえた。


「じゃあ、SRの最後の練習に移るとしましょうか」


「はい」


 僕のスナイパーライフルの練習は、もうちっとだけ続きそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ