006-028 確かに、一理ありますね
「そうは言っても、あんまり覚えてないんですよね。こんな振り返りの時間があるなんて知りませんでしたから」
「そんなこともあろうかと、さっきのマッチは録画しておいたぜ」
なんて準備が良い。まるで、僕がそう言うことを知っていたみたいだ。
―――
試合の映像を見ながら、気になるところで僕が止めて、質問する流れになった。
「あ、まずはここですね」
「おぉ、随分序盤だな」
you先輩は驚いたようにそう言った。
「あたしが降りてすぐ武器も拾えず、K.A.I.の方に逃げ込んだシーンだね〜」
「はい。葵さんは何でK.A.I.先輩の方に逃げたんですか?Tomo先輩とyou先輩がいた方に逃げた方が、人数的にも有利になったと思うんですよ。それにどちらに逃げてもあまり距離も変わりませんでしたし。寧ろ、武器を選り好みする所為で素手の可能性が高いK.A.I.先輩は悪手なんじゃないかと」
「それはね〜。実は逆なんだよ〜」
「逆?」
「K.A.I.が武器を選り好みするってことは、あたしの武器が余ってるかもってことだよね〜」
「なるほど!確かに、一理ありますね。同じところを漁ることになれば、必然的に1人あたりの武器や弾薬の数が減ってしまいますもんね。その点、K.A.I.先輩が使うのは、スナイパーライフルかピストルのみ。武器が被る心配はないですね」
「そうそう。それに、場合分けして考えても、K.A.I.の方に逃げた方がお得なんだよ〜」
「場合分け、ですか?」
「初動で2人で行動する場合、考えられるパターンは4つ。2人とも素手、私だけ武器を持つ、パートナーだけ武器を持つ、2人とも武器を持つ、の4パターンだね〜。それぞれパートナーがTomoの場合とK.A.I.の場合で考えてみようか〜」
「はい」
「1つ目は、2人とも素手の場合。パートナーがTomoだと2人とも充分な実力は出せないね〜。流石にサポートに秀でたTomoと言えど、素手ではどうしようもないからね〜。一方、K.A.I.なら素手での戦闘は得意分野だ。あたしの戦闘能力はどっちと組んでも一緒だけど、素手での戦闘が得意な分、K.A.I.の方が勝率が高いと言えるね〜」
「確かに、武器が全くない状態だったら、K.A.I.先輩がパートナーの方が良いかも知れませんね」
「2つ目は、あたしだけ武器を持っている場合。これもさっきと同じだね〜。素手ならK.A.I.と組んだ方が勝率が高いだろうね〜」
「はい。そうですね」
「3つ目は、パートナーだけ武器を持っている場合。これは五分五分かな〜。あたしの動き次第では2人の能力を引き出せるし、大きな差はないかな〜」
「なるほど」
「最後は、2人とも武器を持っている場合。2人とも万全なら、Tomoがパートナーの方が勝率は高いけど、今想定してるのは初動だからね〜。そうなって来ると、武器や弾薬の取り合いが起きてしまうから、ただでさえ少ない物資がより少なくなっちゃうよね〜。その点、K.A.I.となら、武器の被りがないから、お互いに十全に戦えるよね〜」
「そう順序立てて考えても、やっぱりK.A.I.先輩の方に逃げる方が勝率が高そうですね」
「うん、そうだね〜。今回は、K.A.I.がスナイパーライフルを見つけてくれてたから、特に倒すのが楽だったね〜」
「あの一瞬でそこまで判断してたとは、流石です」
「いやいや、それは買い被りすぎだよ〜。今までもそうだったから、今回もそうしただけで。慣れだよ、慣れ。MoMoくんが納得してくれたなら、次のシーンに移ろうか」
「はい。次はここですね」
「同じランドマークに降りた2つのパーティのうち、片方が壊滅して、睨み合いになったシーンだね〜」
「はい。ここで、K.A.I.先輩が1人落としてすぐに建物の中に突っ込んで行ったじゃないですか?」
「そうだね〜」
「僕はそのシーンを見て、無謀な突進のように思えて。でも、それって結局、Tomo先輩のサポート能力を最大限活かすための突進だったって解釈したんですけど、合ってますか?」
「合ってるよ〜。あの場面ではどうしてもあたしにヘイトを向けて欲しかったんだよね〜。最悪なのは、それぞれの敵と別々に相手をする、要は、1対1が2つできてしまうことなんだ〜。そうならないように、2対2の形にするために、思い切った切り込みをしたんだよね〜」
「やっぱりそうだったんですね」
葵さんから学べることは多い。
特に、先輩達と組んだ時の定石のようなものは、1年長い分、葵さんの方が深く理解している。
感想戦(?)はまだ続く。




