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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
006 GW(2041)
46/83

006-025 しかし、「基本的に」と言うことは、例外も存在する。


 装備を整えた先輩達は北上し、マップの中央に位置するランドマークへと到着した。


 このランドマークは、東西南北の4方向から出入りができる場所だ。


 それ故に、1度戦闘が始まると、次から次へと敵が集まってくる厄介なランドマークだったりもする。


 また、中央を通って東と西を結ぶように橋が()かっていて、北と南もそれぞれ高台になっている構造も相まって、極端な高低差があるのが特徴のランドマークだったりもする。


 そんなランドマークの橋の上、中央とやや東側で撃ち合いをしているパーティが2つ。橋の上の簡素な建物や遮蔽(しゃへい)を使って戦闘を行っていた。


 とは言え、到着の前から聞こえていた銃声によって、戦闘が行われていること自体は誰もが把握していたけど。


「実力は均衡って言ったところかな〜?」


「戦闘は長引きそうですね」


「K.A.I.、左側のパーティ1枚落とせる?」


「あんなに無防備なら、問題なく。落とす?」


「そうだね〜。もし、右側のパーティがそれを契機(けいき)に左側のパーティを攻めるようだったら、そっちも1枚落として」


「了解」


 おそらく、残ったパーティと先輩達は戦うことになるだろうから、その時のために人数を減らしておこうと言う考えなのだろう。


 K.A.I.先輩は早速、中央(左側)のパーティの1人を狙撃する。


 しっかりと確殺も取る。


 すると、葵さんが予想した通り、東側(右側)のパーティが突っ込んで行く。勿論(もちろん)、先輩達の位置を特定し、射線が通りにくくなるように意識して。


 しかし、多少射線を切ったくらいでは、K.A.I.先輩の狙撃からは逃れられない。


 遮蔽から飛び出した一瞬の隙を、K.A.I.先輩は射抜いた。


 そして、しっかりと確殺も取る。


 優勢からまたも均衡へと状態を戻された東側のパーティは、突撃をやめて元の場所まで戻って行った。


 こうなると、状況は硬直する。


 第三者である先輩達が介入したことで、より状況は動かなくなった。


「う〜ん。軽い威嚇(いかく)のつもりだったけど、思った以上に警戒されちゃったね〜。西側通って抜けちゃおっか?」


「残念ながら、それは無理そうだぜ。西側に敵影だ」


「ほんとに〜?」


「ああ、チラッと見えた」


「そうなると、3択かな〜?攻める、待つ、逃げる。みんなはどれが良い〜?」


「MoMoちゃんへの説明の為にも一応聞いておくが、『攻める』は、あっちの2チームが(にら)み合いしている間に、西側のチームを叩くってことだよな?」


「そうだよ〜。『待つ』は戦況が変わるまで待つってことで、『逃げる』は来た道を戻って別のところから安地を目指すってことだね〜」


「攻めましょう」


「『攻める』1択だな。少なくとも『逃げる』はない。ここで逃げるくらいなら、最初からこんな危険地帯通る下策なんて選ばなきゃ良かったんだからよ」


「お好きにどうぞ。ぼくは与えられた仕事を(こな)すだけだよ」


「じゃあ、攻めようか〜。Tomoは、あたしと一緒に西側のチームを壊滅させようか〜」


「はい」


「K.A.I.は、援護と2チームの妨害をよろしく〜」


「了解」


「youは、K.A.I.の護衛と周囲の監視をお願いね〜」


「はいよ」


 葵さんとTomo先輩は、南の高台を降りて、橋の西端へと続く坂道をゆっくりと登っていく。


 西側のパーティに気付かれないようにスニーキングしながらの移動だ。


「西側、1ダウン。確殺は取れてない」


 K.A.I.先輩からその報告が入った瞬間、2人は駆け出す。


 先輩達に気付いていなかった西側のパーティも、今の狙撃と駆け出した足音で、南側に先輩達がいることに気が付いたようで、近寄らせまいと迎撃を始める。


 葵さんはスモークグレネードを2連続で投げる。


 1つは、西側のパーティと自分達の間、もう1つは、西側のパーティが陣取(じんど)っている場所だ。


 煙が視界を(さえぎ)るも、葵さんの動きは止まらない。


 煙の中を最短距離で駆け、西側のパーティがいる場所へと迷うことなく到達したかと思えば、蘇生音を頼りに西側のパーティの2人の場所を割り出し、近付いて、蘇生した敵、蘇生された敵、共々、一瞬で撃破した。


 どうやら西側のパーティもボイスチャットで繋がっているようで、2人の敵を撃破してすぐ、葵さんの所に残りの2人の敵が詰め寄って来る。


 葵さんは足音からその2人の敵の方向を把握すると、その方向に向けて数発、発砲した。


 しかし、ほぼゼロ距離まで近付いた先程とは違い、大体の方向はわかっても見えてる訳じゃないので、葵さんが撃ったその弾は敵に当たることはなかった。


 かと思えば、葵さんはすぐにその場を去った。


 先程の発砲は牽制(けんせい)のため?


 僕のその考えが間違っていることは、すぐに明らかになる。


 葵さんの発砲に応えるように、2人の敵も撃ち返す。


 そこにはもう、葵さんはいないと言うのに。


 直後、2人の敵は撃破されることになる。Tomo先輩の手によって。


 そう、葵さんが数発撃ってからその場を去った理由、それはTomo先輩が敵を撃破するための布石(ふせき)だったのだ。


 基本的に、煙幕の中では、敵を視認することはできない。


 しかし、「基本的に」と言うことは、例外も存在する。


 1つは、ほぼゼロ距離まで接近すること。


 1〜2m以内であれば、視認することは不可能ではない。


 そして、もう1つは、敵が発砲すること。


 発砲するとマズルフラッシュが発生し、一瞬だけ位置がわかるのだ。


 連射し続ければ、より鮮明に視認されるのは言うまでもない。


 つまり、葵さんのあの撤退する前の発砲は、敵から発砲を引き出すための呼び水だったのだ。


 あっという間に、葵さんとTomo先輩は、西側のパーティを壊滅させてしまった。


 気が付けば、中央と東側の敵も戦闘を再開していた。


 先輩達が西側のパーティとの戦いを始めたのを見て、流れに乗じて決め切るしかないと踏んだのだろうか?


 けれども、彼らの予想からは既に外れてしまっている。


 先輩達の戦闘が終わるのがあまりにも早かったからだ。


 彼らの思惑(おもわく)としては、先輩達の戦闘が終わる前に戦闘を終わらせ、後は状況を見て、攻めるか撤退するかを選びたかったのだろう。


 だからこそ、彼らは近距離で撃ち合っていた。


 お互いに早く戦闘を終わらせたい思惑があったからこそ。


 しかし、それよりも早く先輩達の戦闘は終わってしまった。


「Tomo、攻めるよ〜」


「はい」


「K.A.I.、サポートよろしく〜」


「了解」


 3つのパーティによる近距離での乱戦。


 こうなって来ると、状況は複雑に二転三転し、結果を予測するのは難しい。


 そんな常識を先輩達は(くつがえ)す。


 葵さんの完璧な立ち回り、Tomo先輩の完璧なサポート、K.A.I.先輩の完璧な狙撃。


 3つの完璧をもってすれば、本来は複雑に移り変わるであろう展開を一意に定めることなど容易かった。


 結局、2パーティとも、先輩達が蹴散らして終わった。


 第2収縮も始まっていないと言うのに、残り部隊数は3パーティ。


 このマッチは早くも終盤戦の様相(ようそう)(てい)していた。

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