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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
006 GW(2041)
44/83

006-023 これが葵さんの理


 マッチが始まる。


「着地地点の指定は?」


「youに任せるよ〜」


「OK〜。なら、後降りだな」


 先輩達は後半のランドマークに降り立った。


「2パ被ってるね」


 K.A.I.先輩がそう報告する。


 これは良くない展開だ。


 複数のチームと着地場所が被った時、特に2チーム以上と被った時に、僕達は負けることが多かった。


 大体は僕がやられて、そこから人数差で押し切られると言う展開になって負けるのだ。


「あたしの所、2人来てるから、K.A.I.の方いくね〜」


 着地してすぐ、人数不利だと言うことに気付いた葵さんは、K.A.I.先輩の方へと移動した。


 これは悪手では?


 K.A.I.先輩は武器を()(ごの)みする所為(せい)で、序盤の戦力が安定しない。


「先輩、射線通るように来てくれよ」


「りょうか〜い」


 武器を持たない葵さんを、武器を持った敵2人が、銃を乱射しながら追いかける。


 葵さんは、開けた場所を小さな遮蔽(しゃへい)を上手く利用しながら逃げた。


 スナイパーライフルの音が3発響き渡った。


 どうやら今回は幸運にも、K.A.I.先輩はスナイパーライフルを拾えたらしい。


「2人とも()った。1人は確殺取れたけど、もう1人は隠れたな」


「流石だね〜。武器余ってる?」


「1階にAR(アサルトライフル)落ちてるのは見たよ」


「りょうか〜い。you、そっちはどう?」


「部長と合流した。一応、武器も拾えたけど、色々と心許(こころもと)ない感じだな」


「敵は?」


「K.A.I.がやったパーティの残りともう1パが近くの建物でやり合ってるっぽいな」


「りょうか〜い。なら、すぐにそっち行くね〜」


 you先輩達のいる建物に葵さん達が合流する。


「あ、終わったな。敵さんの物資が(そろ)ってない今のうちに、仕留めたいけど」


「Tomo、装備はどう?」


「短期決戦であれば何とか、と言ったところですね」


「あたし達2人で3人持っていけるかな〜?」


「2人ともダウンせずに、であれば、五分五分でしょうね。相討ちになる可能性も充分にありそうですが」


「りょうか〜い。なら、行こうか。K.A.I.、1人よろしくね〜」


 K.A.I.先輩にそう告げると、葵さんはTomo先輩を連れて、相手の建物に近付いていく。


 勿論(もちろん)、遮蔽を上手く利用しながらだ。


「ああ、ぼくに任せてよ。you、撹乱(かくらん)


「あいよ」


 近付く葵さん達の気配に気付いた敵は、牽制(けんせい)のために屋上やベランダ、建物の入り口などから、葵さん達を撃った。


 身体を出した敵をyou先輩が撃つ。


 しかし、弾は(ほとん)ど、9割以上当たらない。


 まあ、you先輩は、(人には過酷なエイム練習させたくせに)エイムがそんなに良くないから、実力通りの結果だと言える。


 you先輩の発砲に姿を隠した敵も、you先輩の実力がわかると、すぐにまた顔を出して、葵さん達への牽制射撃を再開した。


 ダメージを負うリスクよりも、敵が近付いてくるリスクを重く見たのだろう。


 そうして油断した敵の頭を、K.A.I.先輩が射抜く。


「屋上の奴ダウン。判断が早いな。もう1人、ベランダの奴には25ダメしか入らなかった」


「充分、充分。ありがとね〜」


 屋上の1人がダウンしたことで(ひる)み、敵の牽制射撃がピタリと止まる。


 その隙を葵さん達は見逃さなかった。


 敵の建物に駆け込んでいく。


 躊躇(ちゅうちょ)は全くない。ガンガンと奥の方へと進んでいく。


 その突撃に僕は度肝(どぎも)を抜かれた。


 まるで理性がないような猪突猛進(ちょとつもうしん)だったからだ。


 いくら優勢と言えども余りにも無謀(むぼう)過ぎる。


 そう思える程の突撃だった。


 しかし、僕のその考えはすぐに改めさせられる。


 全速力での葵さんの突撃に、2人の敵の目も、銃口も、当然葵さんに釘付けになった。


 葵さんは銃口を向けられてすぐ、片方の敵へと銃口を向け返す。


 とは言え、これでは2対1、蜂の巣にされる。


 けれども、現実はそうならなかった。


 そう、Tomo先輩がいたからだ。


 葵さんを見ている2人の敵の眼中にTomo先輩はいない。


 であれば、彼らはTomo先輩に蹂躙(じゅうりん)されるだけだった。


 これが葵さんの()


 葵さんの無謀にも思える突撃は、Tomo先輩のサポートを最大限に活かすためのものだったのだ。


 これは、僕には到底思い付かない。


 それは何故か。


 僕がそんな行動をしようとすれば、常識に邪魔されるからだ。


 安全が保障されていると知っていても、バンジージャンプで飛び降りるのを本能的に躊躇(ためら)ってしまうように、一見悪手に見えるこの突撃は、常識によって実行をキャンセルされてしまう。


 だからと言って、僕の常識が間違ってる訳じゃない。


 こんな無謀な突撃は、Tomo先輩のサポート性能を十全に理解していて、さらに、Tomo先輩と阿吽(あうん)の呼吸で意思疎通が取れた上で、Tomo先輩に自分の生死すらも預ける器量がなければ、成立しないからだ。


 つまり、僕が間違ってるのではなく、葵さんが正し過ぎるのだ。


 常識に(とら)われることなく、自分の置かれた状況で最善の行動を選択できる。


 それは一種の才能のようにも思える。


 この人が先代部長にして、先輩達の先輩…。


 僕がこの時抱いた感情は敬意だった。


 しかし、そんな僕の心持ちなどお構いなく、ゲームは進行する。


 破竹の勢いで攻め入る葵さん達の前に、敵は、蘇生も、回復すらも、できていなかった。


 削られかけの体力で1対2の構図であれば、余程の実力差がない限り覆せない。


 だから、残った最後の1人の敵も、葵さんとTomo先輩の手によって屠られた。


 葵さんは宣言通り2人で3人を処理してみせたのだった。


 これにて、初動のファイトは無事終了した。


「後ろから漁夫来たわ」


 けれども、激動のマッチは平穏を許さない。


 次なる戦いが4人に襲いかかる。

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