006-020 僕は黙々と練習を続けた
GW4日目。
K.A.I.先輩の指導から1日が始まる。
「じゃあ、『弾速を体得すること』の練習内容を伝えよう。とは言え、内容は縦の偏差と大して変わらない。的が違うだけだ」
そう言って、K.A.I.先輩は6つの的を撃ち抜いた。
当然、赤ヒットだ。
「動く的ってことですね」
K.A.I.先輩が撃ち抜いた5つの的は、全て上下左右に規則的に動く的だった。
「その通り。本当は横方向にだけ動く的に絞ろうかと思っていたんだけど、昨日のMoMoの様子を見て、難易度を上げさせて貰った。合格基準も10回連続じゃなくて、20回連続にするよ」
―――
僕は早速練習に取り掛かる。
そして、すぐに気付いた。動く的に正確に当てる難しさに。
動かない的ならどれだけ時間をかけようと、しっかりと狙えば当たった。
しかし、動く的となると、そうは行かない。
正確に狙った上で、しっかりとタイミングを合わせて狙撃しなければ、当たらないのだ。
それは、横の偏差、つまり、弾速を考慮する以前の話だった。
その証拠に、今、僕が手こずっているのは、偏差の影響がない程度の距離の的だ。
難しい…。
でも、諦めるわけにはいかない。僕ならできると信じてくれたK.A.I.先輩の信頼に応えるためにも。
―――
最も近い的に対して、僕が安定して赤ヒットができるようになったのは、練習開始から1時間経った頃だった。
そんなのは、小さな、小さな1歩に過ぎなかった。
僕は試しにとある的を選んだ。
その的は、K.A.I.先輩が指定した的ではなかったけど、それでも僕がその的を撃ち抜こうと思ったのは、少しの好奇心からだった。
その的は、先程まで僕が練習していた的と同じくらいの距離にあり、同じく横移動しかしないものの、横移動の速度が速いと言う特徴があった。
僕はよく狙って、その的を撃つ。
オレンジヒット。
やっぱりだ。
移動の速度が違うと言うだけで赤ヒットを狙うのがここまで難しくなるとは。
今の的は近い距離にあるから弾速の影響はない。
裏を返せば、遠い的の狙撃は弾速の影響を受けると言うことだ。
つまり、遠方の的を狙う場合、狙ってから撃つまでに的が移動する時間に加えて、撃ってから的に当たるまでに的が移動する時間も考慮しなければならないと言うことになる。
これは…、一朝一夕でどうにかなるようなものじゃないぞ…。
―――
僕は黙々と練習を続けた。時間も何もかも忘れて。
「MoMo、調子はどう?」
僕の集中は、そのK.A.I.先輩の言葉で途切れる。
「難しい、なんてものじゃないですね…。弾速の影響がない距離なら、移動する的にも赤ヒットできるようにはなったんですけど、弾速を考慮しなきゃならなくなった瞬間に、難易度が跳ね上がって、赤ヒットなんて全然です。まあ、偶然、赤ヒットすることはありますけど…」
「焦る必要はないわよ。スナイパーにとって、ここが1つ目の難所なんだから」
「そうなんですね。わかりました」
「弾速の計算が無意識にできるまで練習しなさい。そうすれば、この難所はクリアできるわ」
やっぱり地道に練習する以外の方法はないのか…。
「はい。頑張ります」
「それと、適度に休憩を取ることを心がけることね。根を詰め過ぎてもパフォーマンスが落ちるだけよ」
「気を付けます」
「わたし達はお昼ご飯にするけど、MoMoは?」
「あ、僕も休憩します」




