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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
006 GW(2041)
40/83

006-019 心読まないでください!


「K.A.I.先輩。見てもらってもいいですか?」


 僕がK.A.I.先輩に試験を依頼したのは、練習開始から3時間後のことだった。


 3時間と言う練習時間は、僕が想定していたよりも随分と短かった。


 動かない的を相手に、動かずに狙撃すると言う行為自体は簡単だった。本当に簡単だった。


 最初こそ赤ヒットするのは難しかったけど、1度や2度できてしまえば、そこからはただの単純な作業だった。


 3つの的それぞれに赤ヒットさせるだけだったら、30分もかかっていなかった(はず)だ。


 そこから2時間半は狙撃速度の向上に努めた。


 最初こそ5秒程度かかっていたエイム合わせの時間も、今では大体2〜3秒くらいまで縮まった。


 それでも、(恐らく)コッキングの時間だけでエイム合わせしているであろうK.A.I.先輩には遠く及ばないけど。


 とは言え、現在時刻は16時過ぎ。


 不完全とは言え、今日はこの辺りで1回見て貰わないと解散の時刻になってしまう。


「結構かかったわね。今、行くわよ」


 むむむ。やっぱり僕は才能がないようだ…。


「はい。お願いします」


 K.A.I.先輩は僕の後ろに立つ。


「じゃあ、始めるよ。2番…、3番…、1番…、3番…」


「あ」


 4回目で僕は仕損じる。オレンジヒットだった。


「ちょっと待って、MoMo。もしかして、急いでる?」


「えっ、あっ、はい。K.A.I.先輩が見せてくれたみたいに、とまではいかなくても、できるだけ早撃ちした方が良いんだろうなと思って」


「ああ、ごめん。ぼくの伝達ミスだ。まだ今はスペックを頭に叩き込んでる段階だから、エイムを合わせる速度は問わないよ」


「え?ゆっくりでも良いってことですか?」


「ああ。勿論(もちろん)、早いに越したことはないけどね。もしかして、それで時間がかかっていたのかな?ぼくの見立てでは、体得まで1時間かからないと思っていたんだけど」


「はい。そうですね。エイムの速度を上げるのに、2時間半ぐらいかけてました」


「あ〜、ほんとごめん。じゃあ、リトライと行こうか」


「でも、ただのリトライじゃねぇぞ。ド級のリトライ、ドリトライだ!」


 僕とK.A.I.先輩が話していると、you先輩が変なこと言って割り込んで来た。


「はぁ…?何ですか、それ?」


「流石にネタが古過ぎたか。いやいや、何でもない。MoMoちゃんの様子、見に来たのよ」


「なら、黙って見ていることだね。MoMoに変な茶々を入れないでくれよ」


「ほいほ〜い」


「さて、気を取り直して、リトライだ。自分のペースで良いからね、MoMo」


「はい!」


 再挑戦の結果は…。


「うん。良いね。合格だ」


「ありがとうございます!」


「それに、練習しただけあって、エイムの速度も上々だね」


「本当ですか?嬉しいです」


 最初にスナイパーライフルの当て方のコツを聞いたら、「勘」って返って来た時にはどうなることかと思ったけど、K.A.I.先輩ってもしかして教え上手なのでは?


 ちゃんと僕でも簡単に超えられるような幅で段階を刻んでくれるし、良いところは褒めて伸ばしてくれる。


 僕に与える課題に対して、大雑把なステップしか刻まないで、後は放置してた、


何処(どこ)かの口と性格の悪い先輩とは大違いだ。とでも言いたそうな顔してんね、MoMoちゃん」


「心読まないでください!」


「MoMoちゃんの心、ココにあるぜ」


 右手の親指で、トントンと胸を軽く叩きながら、you先輩はそう言った。


 決め台詞(ぜりふ)なのかな?


「あ、はぁ…」


「つか、K.A.I.の方が教え上手かも知れないけど、オレだって教え下手って訳じゃないんだぜ」


「どう言うことですか?」


「『獅子は我が子を千尋(せんじん)の谷に落とす』ってな。MoMoちゃんを大切に思っているからこそ、わざと(こく)な試練を与えたんだぜ」


「あぁ、はい。そうですか」


「適当な返事をするな〜!」


「そろそろMoMoとの話を再開しても良いかな?」


「僕もK.A.I.先輩と話したいです」


「ちぇっ。どうぞどうぞ。MoMoちゃん、お返ししますよ」


 ()ねたようにyou先輩はそう言った。


「次は『横の偏差を体得すること』、ですよね?」


「ああ、そうだ。だけど、具体的な話は明日にしよう」


「どうしてですか?」


「だって、MoMo。具体的な練習内容を伝えたら、徹夜で練習してくるだろ?」


「そう…、かも知れませんね」


「だったら、教えられないね。MoMoの健康が1番だからね」


 そうイケボで言う。


 かっ、かっこいい〜。女だったら惚れてるよ。


 いや、K.A.I.先輩は女性だから、「男だったら惚れてるよ」かな?


 って、それだと惚れてることになっちゃうな。


「あっひゃっひゃっ。MoMoちゃん、チョロ〜!」


「はぁ〜?何のことですか?」


「そんなメスの顔して反論されても説得力ないが?」


「し、してませんよ!そんな顔!ま、まあ、でも、you先輩よりK.A.I.先輩の方が好きなのは認め

ますよ。K.A.I.先輩の好感度が40だとしたら、you先輩は…」


「-20。だろ?」


 当たってる。


 けど、何でこの人は自信満々に自分への好感度がマイナスであることを宣言できるんだろう?


「はいはい。そうですよ。わかってるなら、改善してくださいよね。そう言うところ。…って!またK.A.I.先輩置き去りじゃないですか!ごめんなさい」


「気にしなくて良い。悪いのはこの馬鹿だから」


「話戻しますけど。じゃあ、今日の続きは明日ってことですね?」


「ああ、そうだよ」


「それなら、今日は解散かな?」


 僕達3人(本当は僕とK.A.I.先輩が話しているところにyou先輩が割り込んでるだけだから、一(まと)めにするのは心苦しいけど)がそう話をしていると、話を纏めるようにTomo先輩がそう言った。


「そうですね。少し早いですけど、解散ってことになりますかね?」


 そんなわけで、僕達は解散した。

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