006-018 努力しかないってことか…
K.A.I.先輩に促されるままに、僕は12個のターゲットを狙撃した。
結果は9発ヒット。
その結果だけ聞くと、相当当たっているように聞こえるが、K.A.I.先輩には程遠い。
赤くなった的は1つもなく、消滅した(ヘッドショットできた)ダミーも1つもなかったからだ。
要は、本当に当てただけってこと。クリティカルヒットは1つもない。
それに、射撃の速度もそこそこだ。
僕なりに急いだものの、K.A.I.先輩みたいに「エイムの時間をほぼ0に」と言うわけにはいかなかった。
「ふ〜ん。ま、20点ってところかな。偏差も弾速も何となくしか理解できてない感じだ」
後ろで僕の画面を見ていたK.A.I.先輩はそう言った。
「すみません。僕には、K.A.I.先輩みたいな才能はなかったみたいで…」
「おいおい。簡単に『才能』なんて言葉を使うなよ。才能やセンスがないと言って良いのは2つのタイミングだけだ」
「2つの、タイミング?」
「ああ。『数千時間練習しても一向に上手くならない時』か、『研鑽して積み上げたものを圧倒的な才能に押し潰された時』だけ。充分な努力もせずに才能やセンスがないって言うのは、ただの逃げだ」
「逃げ…。確かに、そうかも知れません。すみません、甘えてました」
「それに、才能はあるかないかではないよ。もっと段階的なものなのさ。だから、本当に才能が全くないなんてことはそうそうない。才能が少しでもあれば、努力である程度のところまで行けるものさ」
「なるほど」
「だから…」
K.A.I.先輩は、僕の肩に手を置き、もう片方の手で僕が着けているヘッドホンをずらすように外した。
「…?」
「ぼくのいる場所なんて、目指そうと思えば、大抵の人間が到達できる。ただ、誰もそこを目指そうとしていないだけでね」
そう、僕の耳元で囁いた。
「ッ!」
耳元でイケボ囁かれるのしゅごい。
「さ。わかったら練習だ」
K.A.I.先輩は自席へと戻っていく。
「は、はい!」
「まずはSRのスペックを頭に、いや、体に叩き込むところから始めよう。MoMoへの課題は2つ。1つは、『縦の偏差を体得すること』。そして、もう1つは、『横の偏差、つまり、弾速を体得すること』だ」
「はい」
「まずは、『縦の偏差を体得すること』から始めよう。それぞれ距離の違う動かない3つの的を使う。あれとあれと、あれだ」
そう言いながら、K.A.I.先輩は3つの的を撃ち抜いた。
「もしかして、3つの的を赤色で撃ち抜けるようにする感じですか?」
「そう。MoMoが縦の偏差を体得したと感じたら、ぼくを呼んでくれ。本当に体得できたか、試験する」
「試験ですか?」
「ああ。手前から順番に1番、2番、3番と呼ぶとしようか。ぼくが番号をランダムに言っていくから、10回連続で赤ヒットできたら、合格としよう」
「わかりました。それで、どう練習すれば…?」
「ぼくは『体得』と言ったんだ。只管狙撃する以外に方法があると?MoMoは自転車の乗り方を理屈で覚えたのかい?」
「…わかりました」
努力しかないってことか…。
努力を努力と思わないタイプのK.A.I.先輩に、聞いた僕が馬鹿だった。




