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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
006 GW(2041)
37/83

006-016 それは嘘ですよ


「じゃあ、まずは南3局から話そうか」


 you先輩は片付けた牌を取り出して、話を始める。


「あの天和(テンホー)ですね」


「ああ。あれは簡単。燕返(つばめがえ)しだ」


 そう言いながら、you先輩は素早い手付きで山を積む。


「燕返し、ですか?」


 you先輩は次に、14枚の牌を持って来る。


「ああ。今適当に持って来た14枚の牌は当然バラバラだ。こんなんじゃ天和にはならない」


 you先輩は手牌を見せる。


 確かに、バラバラの配牌だった。


「確かに、そうですね」


「でも、これをこうすると…」


 you先輩は、裏向きにした手牌の上に、山の牌(上段17枚と下段3枚)を持ち上げて乗せた。


 そして、もともと山だった下段14枚の牌を手牌へとすり替えた。


「えっ…?」


「はい。天和」


「山に(あらかじ)め積み込んでおいて、それを手牌をすり替えたってことですか?」


「そうだよ。それが燕返しだ」


「でも、こんな動きに誰も気付かなかったなんて!」


「それだけオレの燕返しが洗練されてたってことだ。それに、オレが燕返しをしたのは、局の始めも始め。この時は皆、理牌(リーパイ)(配牌をわかりやすく並び替えること)に目が行っているから、まず見逃される」


「こんな単純なトリックだったなんて…」


「じゃ、次な」


「南3局1本場ですね。確か、牌に触れることなく、次にyou先輩がツモって来る牌が僕の当たり牌じゃないことを予言して、次に僕がツモって来る牌がyou先輩の当たり牌であることを予言したあれですね」


「そ、これはもっと簡単だ。あの時、何処からツモったか覚えているか?」


「えっと、確か、you先輩の山でしたかね?」


「そう。オレの山だ。まず、オレぐらいの玄人(バイニン)になると、何処に何を積んだか覚えてる」


「それは嘘ですよ」


「じゃ、試してみるか?」


「試す?」


 you先輩は洗牌(シーパイ)して、手早く山を積んだ。


「好きなところ指定してみ。当ててみせるから」


「じゃあ、ここは?」


「三筒」


 僕がその牌を(めく)ると、三筒だった。


「正解です。じゃあ、ここは?」


「一萬」


「正解です」


「な?」


「これは、信じざるを得ないですね」


「で、後は、MoMoちゃんがオレのアガリ牌を掴む直前で立直をかければ、100%一発で上がれる立直の完成だ」


「ん?でも、それじゃ半分ですよ」


「と、言うと?」


「僕がyou先輩に振り込んだ理由にはなってますけど、you先輩が僕に振り込まなかった理由になってません」


「ああ。オレがツモる牌がMoMoちゃんの当たり牌じゃないことはわかってたからな。普通に実力で」


「僕の待ちがわかってたってことですか?」


「そうだよ」


「でも、you先輩、東場(トンバ)で僕に振り込んでたじゃないですか?」


「MoMoちゃん。見えてる人間は選べるんだよ。見えてることをそのまま知らせること、見えてない時に見えている振りをすること、そして、見えていても見えてないと装うこと」


「わざと振り込んでたってことですか?」


「うん。MoMoちゃんの手が安そうなのは見えてたし、仮にある程度の手に振り込んでも、オレには燕返し天和があるからな。東場はMoMoちゃんを泳がせていたのさ」


「…なるほど」


「じゃあ、最後に南3局2本場な。あれは、ぶっこ抜きを使って二索を4枚手中に入れた後、1枚を山とすり替えてMoMoちゃんに送ったんだ」


「その二索を僕が切れば、you先輩がカンできるってことですね」


「そうそう。んで、部長の山からツモって来た嶺上牌をオレの山の牌をすり替えて、嶺上開花したってわけ」


「嶺上牌をすり替えた?」


「ま、これも見せた方が早いな」


 you先輩は、山の奥に置かれた東を裏返して、ツモって来る。


 ツモって来た牌を裏返すと、それは東ではなく三筒になっていた。


「…え!?」


「すごいだろ!この早技は注視してても気付けないんだよ。自分の山にアガリ牌さえあれば、100%嶺上開花を成功させられるわけよ」


「なんでこの努力を別のことに活かさないんですか…?って言うのは、さておき。最後の新ドラはどうやったんですか?あれは確かTomo先輩の山でyou先輩は触れてすらいない筈」


「あれは偶然だよ。偶然、新ドラが乗っただけ」


「本当ですか?」


「いや、本当本当。別にオレとしてはあの局でMoMoちゃんを飛ばす必要はなかったから、乗ったらラッキーぐらいの感じだったんだよね」


 こうして、you先輩のイカサマは全て白日の下に(さら)された。

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