006-016 それは嘘ですよ
「じゃあ、まずは南3局から話そうか」
you先輩は片付けた牌を取り出して、話を始める。
「あの天和ですね」
「ああ。あれは簡単。燕返しだ」
そう言いながら、you先輩は素早い手付きで山を積む。
「燕返し、ですか?」
you先輩は次に、14枚の牌を持って来る。
「ああ。今適当に持って来た14枚の牌は当然バラバラだ。こんなんじゃ天和にはならない」
you先輩は手牌を見せる。
確かに、バラバラの配牌だった。
「確かに、そうですね」
「でも、これをこうすると…」
you先輩は、裏向きにした手牌の上に、山の牌(上段17枚と下段3枚)を持ち上げて乗せた。
そして、もともと山だった下段14枚の牌を手牌へとすり替えた。
「えっ…?」
「はい。天和」
「山に予め積み込んでおいて、それを手牌をすり替えたってことですか?」
「そうだよ。それが燕返しだ」
「でも、こんな動きに誰も気付かなかったなんて!」
「それだけオレの燕返しが洗練されてたってことだ。それに、オレが燕返しをしたのは、局の始めも始め。この時は皆、理牌(配牌をわかりやすく並び替えること)に目が行っているから、まず見逃される」
「こんな単純なトリックだったなんて…」
「じゃ、次な」
「南3局1本場ですね。確か、牌に触れることなく、次にyou先輩がツモって来る牌が僕の当たり牌じゃないことを予言して、次に僕がツモって来る牌がyou先輩の当たり牌であることを予言したあれですね」
「そ、これはもっと簡単だ。あの時、何処からツモったか覚えているか?」
「えっと、確か、you先輩の山でしたかね?」
「そう。オレの山だ。まず、オレぐらいの玄人になると、何処に何を積んだか覚えてる」
「それは嘘ですよ」
「じゃ、試してみるか?」
「試す?」
you先輩は洗牌して、手早く山を積んだ。
「好きなところ指定してみ。当ててみせるから」
「じゃあ、ここは?」
「三筒」
僕がその牌を捲ると、三筒だった。
「正解です。じゃあ、ここは?」
「一萬」
「正解です」
「な?」
「これは、信じざるを得ないですね」
「で、後は、MoMoちゃんがオレのアガリ牌を掴む直前で立直をかければ、100%一発で上がれる立直の完成だ」
「ん?でも、それじゃ半分ですよ」
「と、言うと?」
「僕がyou先輩に振り込んだ理由にはなってますけど、you先輩が僕に振り込まなかった理由になってません」
「ああ。オレがツモる牌がMoMoちゃんの当たり牌じゃないことはわかってたからな。普通に実力で」
「僕の待ちがわかってたってことですか?」
「そうだよ」
「でも、you先輩、東場で僕に振り込んでたじゃないですか?」
「MoMoちゃん。見えてる人間は選べるんだよ。見えてることをそのまま知らせること、見えてない時に見えている振りをすること、そして、見えていても見えてないと装うこと」
「わざと振り込んでたってことですか?」
「うん。MoMoちゃんの手が安そうなのは見えてたし、仮にある程度の手に振り込んでも、オレには燕返し天和があるからな。東場はMoMoちゃんを泳がせていたのさ」
「…なるほど」
「じゃあ、最後に南3局2本場な。あれは、ぶっこ抜きを使って二索を4枚手中に入れた後、1枚を山とすり替えてMoMoちゃんに送ったんだ」
「その二索を僕が切れば、you先輩がカンできるってことですね」
「そうそう。んで、部長の山からツモって来た嶺上牌をオレの山の牌をすり替えて、嶺上開花したってわけ」
「嶺上牌をすり替えた?」
「ま、これも見せた方が早いな」
you先輩は、山の奥に置かれた東を裏返して、ツモって来る。
ツモって来た牌を裏返すと、それは東ではなく三筒になっていた。
「…え!?」
「すごいだろ!この早技は注視してても気付けないんだよ。自分の山にアガリ牌さえあれば、100%嶺上開花を成功させられるわけよ」
「なんでこの努力を別のことに活かさないんですか…?って言うのは、さておき。最後の新ドラはどうやったんですか?あれは確かTomo先輩の山でyou先輩は触れてすらいない筈」
「あれは偶然だよ。偶然、新ドラが乗っただけ」
「本当ですか?」
「いや、本当本当。別にオレとしてはあの局でMoMoちゃんを飛ばす必要はなかったから、乗ったらラッキーぐらいの感じだったんだよね」
こうして、you先輩のイカサマは全て白日の下に晒された。




