006-015 とぼけないでください!
「ふ〜、食った食った」
昼食を終えたyou先輩達が、部室に戻って来る。
「you先輩!」
僕はyou先輩へと詰め寄った。
「お、どうしたどうした。そんなに熱烈なアプローチをされちゃうと、百戦錬磨の美人なお姉さんであるところのオレでも少し気圧されちゃうぜ」
「さっきの麻雀、イカサマしてましたね!」
「はて?何のことやら?」
「とぼけないでください!あんな天和をアガっておいて、イカサマしてないなんて白々しいにも限度がありますよ!」
「つっても、証拠がないしな」
「僕、さっき調べたんです!you先輩が言っていた『玄人』って言葉の意味。麻雀で勝つためならなんでもするイカサマ師のことじゃないですか!それに天和をアガれる確率はおよそ33万分の1。これこそが何よりの証拠じゃないですか!?」
「いや、それは証拠にならん。オレが玄人だったとしても、さっきの勝負は平(イカサマなし)で打ってたかも知れないし、天和もその確率が0%じゃない以上、偶然の線も捨てきれないだろ?」
「…ぐっ」
確実にイカサマをしていた筈なのに、このままじゃ逃げ切られてしまう…。
「まぁ、オレも鬼じゃねぇ。オレが正直に真実を語ったとして、それがどんな真実だったとしても、さっきの勝負の結果を白紙に戻さないと誓ってくれるなら、真実を話してやっても良いぜ」
本当は、イカサマを槍玉にあげて、you先輩が持つ命令権を無効化しようと思っていたけど、背に腹はかえられない。
今回のところは真実を知ることを第1に考えよう。
「わかりました。you先輩が真実を全て話してくれれば、先程の勝負は無効にしないと誓います」
「よし。なら、オレも正直に答えよう。してたよ、イカサマ」
「やっぱり!罪悪感とかないんですか!?」
「ないよ」
けろりとyou先輩は答えた。
「イカサマなんて絶対の悪じゃないですか!」
「イカサマに良いも悪いもねぇ、やられた方がアホなんだ」
「くっ」
なんて曲がった信念なんだ…。
「それによ、考えてもみなよ。このご時世、麻雀って言ったら、デジタルか、全自動麻雀卓かの時代だ。それなのによ、手積みの麻雀を想定して玄人技を習得して来るなんて、寧ろ、褒められたって良いんじゃねぇの?」
「…一理、あるかも知れませんね」
イカサマ。それも僕達が誰も気付かないレベルにまで洗練されたイカサマなんて、習得するのにどれ程の努力が必要か計り知れない。
「だろぉ?」
「逆に、なんでyou先輩はそんな無駄になる可能性の高いイカサマなんて技術を身に付けているんですか?」
「端的に言えばカッコ良いから。それに、『怠惰を求めて勤勉に行き着く』、それこそが玄人の生き様だからよ」
やっぱり歪んだ信念をお持ちのようで。
「…まぁ、わかりましたよ。もし、次の機会があった時は、必ずyou先輩のイカサマを見抜いてみせます」
「ほぅ。MoMoちゃんも、ちったぁオレのことわかって来てんじゃないの。オレの土俵でMoMoちゃんが勝ってこそ、オレはオレの敗北を素直に認めるってもんだ」
「ええ。なので、教えてください。どんなイカサマをしていたのかを」
「そりゃあ、教えらんねぇよ。手品のタネをバラす手品師がいないようにな」
「良いですけど。それなら、今回の勝負は無効、ってことになりますね」
「?…あっ!へぇ、やるじゃん。オレから1本取るなんてよ」
「ええ。さっき僕はこう言いました。『you先輩が真実を全て話してくれれば、先程の勝負は無効にしないと誓います』と」
「裏を返せば、オレが玄人技のタネを明かさなければ、全てを話さなければ、無効にされちまうわけだ」
「はい。その通りです。話してくれますね?」
「まぁ、オレから1本取ったMoMoちゃんに免じて今回はタネを明かしてやるよ」
「ありがとうございます」
you先輩の解説が始まる。




