006-005 いやいや、真剣にやりましょうよ
30分後。
「さ〜て、いっちょやってやりますか」
休憩を終えた僕達は再び画面と向き合う。
ランクマッチは、パーティ内で最もランクの高い人のランクでマッチングする。
つまり、僕はまだルーキーだけど、マッチングは先輩達のランク、プロ6を参照して行われるわけだ。
「プロ6帯なんて初めてですから、少し緊張しますね」
「1発勝負の大会じゃあるまいし、こんなお遊びで緊張する必要なんてないだろ。駄弁って気でも紛らわせよっか?」
「いやいや、真剣にやりましょうよ」
「そうは言っても、接敵するまでは暇だからな」
「最終円、この辺だね」
K.A.I.先輩がピンを刺す。
「う〜い。で、なんかMoMoちゃん、話題ある?」
「特にないですかね」
「じゃあ、質問タ〜イム。お姉さん達がどんな質問にも答えちゃうぞ♡」
「あ。それなら、K.A.I.先輩に聞きたいことが」
「ん?ぼく?」
「はい。スナイパーライフルの当て方教えて欲しいなって思って」
「真面目か!MoMoちゃ〜ん、もっと面白い話しようよ。しかも、その話題、オレと部長がハブられるだろ?」
「どんな質問でもって言ったのyou先輩じゃないですか」
「ぐぬぬ。まあ、100歩譲って、その質問許そう」
「ありがとうございます(?)」
「SRの当て方ね。正直、勘だね」
あっ。これは実力はあるけど、それを他人には一切教えることができないタイプの天才型の人か?
「勘、ですか?」
「そ。スペックを頭に叩き込んで、後は無限に練習。そうすれば、いつの間にか、当たるようになってるよ」
違った。努力を努力と思わないタイプの天才型の人だ。
「あの、コツとかは…?」
「ないよ。強いて言うなら、しっかり振り返りをすることかな。何故、上手くいかなかったか、何故、上手くいったか、しっかり振り返って反省、理解すれば、成長も早い」
スナイパーライフルを当てるコツじゃなくて、努力のコツだ…。
「あ、ありがとうございます。試してみます」
「どういたしまして、かな」
「私からも、アドバイスさせてもらうと、K.A.I.のプレイを解説付きで見てみるのが良いと思うよ。0から自分で練習するよりも、ずっと効率が良い筈だからね」
「なるほど」
「なら、今度暇な時にでも、見せてあげるよ。ただし、最低限、SRの弾速、弾道の偏差くらいは覚えて来なよ」
「はい。わかりました。ありがとうございます」
なんて、話をしていると。
「おっと、敵だぜ。こっちには気付いてないっぽいから、気付かれないように集まってくれ」
言われるがままに、you先輩の方に移動すると、確かに、敵はいた。
しかし、ものすごく遠い。まだ500m以上はあるだろう。
「こっちに近付いているね。ヘッドショットが狙える位置まで来たら、撃てば良いのかい?」
「いんや、それだと逃げられそうだから、もっと引き付けてからだな。雑魚だったら1欠けで放置しても良いんだが、このレベルの敵は放置すると後々面倒になりそうだしな。しっかり殲滅しよっか」
「了解」
「狙撃の合図はMoMoちゃんが出してくれ」
「僕ですか?」
「ああ、K.A.I.が最後尾の奴を狙撃したら、MoMoちゃんと部長でファイトしてくれ。これは奇襲だ。確実に1人殺れる距離だと、MoMoちゃんが判断したら合図を出してくれ」
「わかりました」
「ま、失敗しても大したことないから、気負わずにな」
you先輩とTomo先輩は敵から絶対に見えない位置に引っ込んだ。
合図を出す僕と、狙撃をするK.A.I.先輩だけが、物陰から敵の様子を伺った。
500。
400。
300。
200。
100mを切った。
80、60、まだだ。
40、35、30。
「今です」
K.A.I.先輩の銃弾が最後尾の敵の頭を貫いた。
それと同時に、僕の射撃で最前の敵は蜂の巣になった。
隠れた敵に詰め寄ろうと僕が駆け出そうとした時、Tomo先輩は既に駆け出していた。
Tomo先輩は岩裏に隠れた敵に、グレを投げた。
グレを逃れようと岩裏から出て来た敵と僕の目が合う。
距離は20mを切っている。
僕はサブマシンガンで敵を撃った。
そこから、敵がダウンするまで数秒だった。
残った最後の1人は、ここで漸くダウンした仲間を残して逃げる判断をした。
とは言え、ここまでおよそ十数秒。
敵の判断はこれでも早い方だ。
だから、敵に何か落ち度があったと言うよりは、素直に僕達の作戦勝ちと言えるだろう。
少ない遮蔽を器用に使いながら逃げる最後の1人。
遮蔽物から頭を出した一瞬の隙を、K.A.I.先輩は逃さない。
これにて、戦闘終了。
「漁夫はなし。良い判断だったなぁ〜、MoMoちゃん」
「ありがとうございます」
「で、どうだった?」
「『どうだった』って言うのは…?」
「エイムだよ、エイム」
「あっ」
言われてみれば、敵に銃弾が吸い付くように当たっていた。
「言われなきゃ気付かないってこたぁ、無意識になるレベルまで馴染んでるってことだからな。良いことなんじゃねぇの?さ、さっさと漁って移動しよ〜ぜ」
初めての作戦指揮(?)に緊張して、それどころじゃなかったけど、思い返してみると、自分の成長に少し嬉しくなった。
―――
漁り終わって。
「どう移動するんですか?」
「そうだな〜。最終安地目指して移動するのは確定してるけど、あんまり早く安地に入ると囲まれる可能性あるからな。なるべく安牌で行きたいんよね」
「大会の1回戦みたいにガチガチに何処かを抑えるわけではないってことですか?」
「そうだな。状況は二転三転するだろうから、なるべくフットワークは軽くしたい所だな。落下時の軌道から見るに、東側に敵が多いから、それを避けて、西側から回り込むように安地に入る感じだな。キルポは欲しいが、下手な順位でやられるとあんまりポイント入らないし、多少キルポは控えめでも堅実に順位を上げたい感じだ」
「わかりました」
その方針に沿って僕達は移動を始めた。




