006-004 変な言い方しないでください!
GW2日目。
エナジードリンクのカフェインで強引に身体を覚醒状態にした僕は、重い身体を引き摺るようにして、部室の扉を開けた。
「おはようございます」
「おはよう、MoMo。おや?」
「MoMoちゃん。どしたん?辛そうじゃん。話聞こか?」
僕よりも先に部室に来ていたTomo先輩とyou先輩は、僕の体調の悪さに気付いたようだった。
「いえ、ちょっと睡眠時間が足りてないだけです」
「これはただの部活なんだから、体調が悪かったら、休んでも良いんだよ。無理してまでやるものではないからね」
「ありがとうございます。でも、ただ眠いだけなんで大丈夫です。それに、寝る時間が遅くなったのも、僕の不注意なので」
「そうなのかい?くれぐれも無理はしないようにね」
「はい、ありがとうございます」
「で、MoMoちゃ〜ん。一体ナニをして寝る時間が遅くなったんだ〜い?まあ、健全な男子高校生が夜中にヤることなんて決まっちゃいるだろうけどね」
「変な想像しないでください。練習ですよ、射撃練習。家帰ってからも、you先輩に言われた練習してたんですよ」
「またまた〜。あんな苦行を好き好んでやって寝る時間忘れるとかある訳ないじゃん。言い訳が苦しいぞ♡」
「本当ですよ。確かに、ただ永遠に射撃練習するのは楽しくはないんですけど」
「けど?」
「でも、その。ああ言うのって、やればやるだけ上手くなるじゃないですか。それが結構楽しいと言うか、達成感とか成長の実感みたいなものが何だか癖になって…」
「それで、あんなクソつまんない苦行を夜中までシコシコやってたわけだ。MoMoちゃんってドM?MoMoちゃんの『M』は、ドMの『M』だったのか」
「違…、うとも、言えないですね…」
「あっひゃっひゃっひゃっ!」
部室の扉が開く。
「何騒いでんのよ。あんたの笑い声、廊下まで響いてたわよ」
K.A.I.先輩だ。
「お、K.A.I.じゃん。丁度今、MoMoちゃんが夜中まで1人でシコシコ頑張ってるドMって話してたんだよ」
「なっ!」
K.A.I.先輩は頬を赤く染めて動揺する。
「ちょっ!you先輩!変な言い方しないでください!ただ、夜中まで射撃練習してたせいで眠いって話じゃないですか!」
「ま、まあ。そんなことだろうとは思っていたわ。全く、勘違いさせないでよね」
「ういうい。じゃ、K.A.I.も来たし、そろそろ始めるか。と、言いたい所だが、その前にあれだな。見せてもらおうか、MoMoちゃんの練習の成果とやらを」
「ぁ、はい」
僕はゲームを立ち上げて、早々に訓練場に入る。
そして、横移動しながらのワンマガ射撃連続10回成功を披露した。
「ふ〜ん、やるじゃん。じゃ、レッスン3『移動しながらの射撃で動く的を狙おう』だな。ダミーの設定にランダム移動モードがあるだろ?その設定ONにして、MoMoちゃんは移動しながら、そのダミーを撃ってくれ」
「はい」
「所謂、追いエイムの練習だな。流石に、命中率100%はプロの領域だから、85%で良いよ」
これは後々気付いた話だけど、85%でも充分にプロの領域だし、そもそも100%は人力ではほぼ不可能な領域だった。
「わかりました」
85%って言うと、サブマシンガンなら21発、アサルトライフルなら16発ぐらいかな?
そんなことを考えながら僕は練習を始め、先輩達もランクマに潜り始めた。
―――
「MoMoちゃ〜ん」
耳元で囁くようにそう呼ばれ、心臓がドキッと飛び跳ねた。
また時間を忘れて練習していた。
もしかして、もう帰る時間なのか?
時計を見ると、時刻はまだ14:00前だった。とは言え、5時間は経っているのだけど。
「って、あれ?you先輩?」
「ちょっと、練習の様子見に。どうだい、調子は?」
「85%は殆ど行かないですね。大体65%〜75%ぐらいです。たまに調子が良くて80%超えるかなってところです」
「ふ〜ん。なら、その練習、もう終わりで良いや。オレ達とランクマ回ろうぜ」
「え?良いんですか?」
「ああ、80%も当たることがあるなら、仕上がりは90点って所だ。オレ達も丁度プロ6に乗ったしな。合流するなら、良いタイミングだろ」
「わかりました。参加します」
「よっしゃ。じゃ、やろっか」
「はい!」
「待つんだ2人共。ランクマッチを始める前に、休憩にしよう。特にMoMoは昼食も食べずにずっと射撃練習をしていたからね。体調も悪かったようだし、無理は良くないよ」
Tomo先輩は僕達にブレーキをかけた。
「部長の言う通りだな。よし。一旦休憩!30分後に再開しようぜ」




