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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
004 月次大会
17/83

004-002 『けど』?


 第1ゲームが始まる。


 飛行船の航路が画面に映った瞬間、K.A.I.先輩は航路後半の街にピンを刺した。


「参加者の傾向を読むから、後半降りするぜ」


「はい!」


「ああ」


「了解」


 僕達はその街に届く距離まで、ゆっくりと待機する。


 次々と他の部隊は降りていった。


 そして、後半に差し掛かる頃には、飛行船に残っているのは、3部隊となっていた。


 ここで、(ようや)く僕達も飛行船から降りる。


「被りなし。他の2パは反対側行ったみたいだな」


 その報告を聞いて、バラバラに着地した僕達は、各々装備を整える。


 すると、第1安地が画面に表示された。


 僕達は、既に安地に入っている形だ。


「この街は第3までは入るね。第4はここが中心になる形だろうね」


 そう言いながら、K.A.I.先輩はピンを刺す。


 ここまではテンプレだ。


 なんでK.A.I.先輩は、第1安地を見ただけで、最終(第4)安地までわかるんだろうと、最初は思っていたけど、今は何とも思わなくなってしまった。


 K.A.I.先輩によると、だいたい8割くらいは第1安地の形で最終安地までわかるらしい。


 残りの2割も第2安地まで見ればわかるそうだ。


 百人一首の決まり字みたいなものだろうか?


 安地を知り尽くしたK.A.I.先輩の安地読みは予測ではなく、予言の域なのだ。


 なんやかんやで、装備はある程度整った。


「MoMoちゃん、大会勝ちたい?」


 当たり前の質問をyou先輩がする。


「それは、まあ、はい。せっかく参加してるなら勝ちたいですけど」


「じゃ、目指すは1位だな。そうと決まれば、二手に分かれよう。部長とMoMoちゃんは、ここの建物で籠城(ろうじょう)の準備しといてよ」


 マップ上の建物にピンを刺しながら、you先輩はそう言った。


 二手に分かれる?


 あまりにもセオリーから外れた提案に僕は一瞬、理解が追いつかなかった。


 もし、2人組で行動している最中に、接敵してしまったら、数的不利になってしまう。


 だから、部隊全員が生存している時に、わざわざ2人組で行動するメリットはないのだ。


 そんなこと、you先輩は百も承知だろう。


 それでもその提案をしていると言うことは、you先輩の目には何らかのメリットが見えていると言うことになる。


 けれども、僕にはそのメリットがわからなかった。


「MoMo、行くよ」


 そうTomo先輩に言われ、僕は指示された建物に向かった。


―――


 建物に着いた僕は籠城の準備を始める。


 建物の周囲に地雷を設置し、建物内には弾薬と回復アイテムを備蓄する。


 僕達が黙々とそんな作業をしていると、ボイスチャットから、you先輩の声が聞こえて来る。


「そこ、敵。こっちには気付いてないっぽい。K.A.I.、あれ撃てる?」


 ピンを交えて、you先輩が言う。


「当然」


 その直後流れるキルログ、1ノック。そして、1キル。


「あっ、あっち。漁夫来たっぽいわ」


「了解」


 3ノック。


「馬鹿だね〜。顔出すの早すぎなんだよなぁ」


 2キル。


「you、次は?」


「顔出さなくなったし、そろそろMoMoちゃん達と合流しよっか」


「了解」


「MoMoちゃ〜ん。一応、キルポ(キルポイント)3pt取ったよ」


 なるほど、キルポイント確保のためだったのか。と、僕は不可解な別行動の理由がわかって納得する。


「あっ、はい。キルログ見てました」


「第1ゲームは上限8ptだから、残りの5ptも欲しいところだぜ。ま、5ptぐらいだったら、終盤で取れなくもないだろうけど。そっちの準備はどう?大丈夫そ?」


 今日日(きょうび)聞かないネットスラングだ。


「はい。終わってます」


「OK〜。すぐ合流するわ」


 そのすぐ後で、you先輩とK.A.I.先輩が合流した。


―――


 第1収縮が終わり、第2収縮が終わった。


 その間、何も無さ過ぎる程、何もなかった。


 第3安地が示され、収縮までのカウントダウンが始まった時だった。


「あそこに誰かいるね。3人までは見えたよ」


 Tomo先輩の方から敵が来たらしく、Tomo先輩はそう言った。


「OK〜。K.A.I.、あれ、こっちに来そうだったら弾いてもらえる?」


「了解」


 どうやら向こうも僕達に気付いたようで、200m程先の岩陰に身を隠してしまった。


 しかし、こちらの様子を伺おうと、顔を出して来る。


 そこを、K.A.I.先輩の無慈悲なヘッドショットが捉えた。


 1ノック。


 K.A.I.先輩の次の狙撃が行われる前に、ダウンした人はいそいそと岩陰に隠れた。


「あいつら、東高の1軍の奴らじゃね?だよな、K.A.I.?」


 ここまでの一連の流れを見ていたyou先輩はそう言った。


 you先輩の言った「東高」とは、お隣の「日々原東高校」のことだ。


「そうかもね。コス的にはそうっぽいけど」


「だよなぁ」


 確かに、今回の参加チームの中には、東高の名前もあった。


 でも、この短い時間で特定できるとは思えない。


「もしかして、先輩達、他校の人達のコス覚えてるんですか?」


「え、うん。まあ。よく関わるチームの人のコスとプレイスタイルくらいは。とは言え、コスの方はすぐ変えられるし、参考程度にしかならないけど」


「おっ、向こうさんもこっちに気付いたみたいだぜ。どうすっかなぁ。あんまり手の内(さら)したくないんだけど」


「なんでですか?」


「夏の大会とか、公式大会で当たるからさぁ。()じゃん。ここで圧勝しちゃって、研究とかされたら。だから、ほんとは手を抜きたいところだけど。でも、MoMoちゃん、この大会勝ちたいんでしょ?」


「はい。勝ちたい、ですけど。もしかして、僕が勝ちたいって言ってなかったら、わざと負けてたってことですか?」


「だって、こんなどうでも良い大会なんて負けたって別に良いじゃん。それで公式大会で楽に勝てるなら、お釣りが来るでしょ」


「でも、…」


「良いかい、MoMoちゃん。人生ってのは、全ての戦いで勝てるわけじゃないんだ。だからこそ、勝たなきゃいけない戦いで必ず勝つために、最大限の努力をすべきなんだぜ」


 you先輩のくせに、随分と真っ当なことを言う。


「なら、この大会は負けるってことですか?」


「いいやぁ。MoMoちゃんが勝ちたいって言うから、仕方なく本気を出してやるけど」


「『けど』?」


「その代わり、MoMoちゃんにも頑張って貰うぜ。この大会が終わってからだけどな」


「?」


「まあ、そんな大したことじゃないから、気にすんな。さってと。あれ?あいつら逃げる気満々じゃん。K.A.I.。多分左に抜けると思うから、最後尾の奴でも()ってくれ」


「ん、了解」


 you先輩がK.A.I.先輩に指示を出すと、東高の人達は、you先輩の読み通りに左方へ逃げ出した。


 そこを、K.A.I.先輩の弾丸が撃ち抜く。


 1ノック。2ノック。


 確キルまでしっかり入れる。


「ラッキー。キルポ2ptゲット〜。このまま芋ってれば、1位まであるな」


―――


 そのまま時は流れ、第3収縮が終わり、最終安地が表示された。


 僕達は極めて有利なポジションにいる。


 残り8部隊。


 第4収縮が終わる頃には、ポジションの奪い合いの果てに、3〜4部隊にまで数が減りそうだ。


「あっ、あそこ。ファイト始まりましたよ」


「ほんとだ。K.A.I.、狙える?」


「余裕」


 一生懸命戦っている人達を嘲笑(あざわら)うかのように、スナイパーライフルでキルポイントだけ奪う僕達は、他のチームから見たら、相当な悪役だろう。


 大量のヘイトを集めているが、しかしながら、僕達に挑んで来るチームはいなかった。


 you先輩の指示と、K.A.I.先輩のスナイプが敵を寄せ付けないのだ。


 果敢にスナイパー対決を挑む輩もいたが、三流のスナイパーなど、K.A.I.先輩の足元にも及ばない。


 そして、第4収縮が始まる。


 残った部隊は、押し出されるように接敵し、ファイトを始める。


 僕達はそれを悠々と見ながら、ちょっかいをかけていた。


 そうして、第4収集が終わる頃には、残り3部隊9人となっていた。


 僕達は建物の中に入っているが、残り2部隊は、岩裏、障害物裏と言うかなり残念な位置にいる。


「K.A.I.。グレ投げ込もうぜ」


 とニヤニヤとした声で、you先輩は言った。


「了解」


「部長、MoMoちゃん。相手が顔出さないように見張っててくんね?」


「はい」


「ああ」


 K.A.I.先輩の得意技、直下グレだ。


「右、2ノック。と、10ダメくらい。左75ダメと60ダメ」


「よし。右詰めちゃお。K.A.I.は左にグレ入れといて」


「了解」


 その指示を聞いて、僕達は急いで、建物を出た。


 僕達が岩裏に到着すると、残った1人が、蘇生を通していた。


 その1人を僕は狙い撃つ。


 40%ぐらいの精度で僕の弾は当たる。


 僕も多少被弾したけど、流石にここまで有利な状態で負けることはない。


 僕は、1人をキルした。


「あっ、左のパーティ漁夫に来てるわ」


 残り2部隊の表示を見て焦ったのか、かなりのダメージを受けている筈の左の部隊も、僕達の方へと詰めて来た。


 しかし、そんなやぶれかぶれの攻撃は何も怖くない。


 Tomo先輩の援護射撃と、you先輩のスナイプでこの試合は終わった。

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