003-004 この先輩、本当に最悪だ
コンコン。
僕は生徒会室の戸をノックする。
「どうぞ」
Tomo先輩の声だ。
「失礼します」
僕は控えめな声量でそう言いながら、戸を開けた。
「おや?MoMoじゃないか。どうしたんだい?」
「Tomo先輩が雑務で部活に来れないって聞いたので手伝いに来ました」
「そんな。私のことなど気にせず、3人で遊んでいてくれて構わないのに」
「いえ、月末の大会に向けて、Tomo先輩と一緒に練習したかったので」
「そうかい。そう言うことなら、ご厚意に甘えて、手伝って貰おうかな」
「はい!何をすれば良いですか?」
「そうだな。まずはこの棚の整理を手伝って貰えるかな?」
「わかりました」
僕は、棚を整理しているTomo先輩の隣に立った。
Tomo先輩。犬飼智先輩。
黒髪ポニーテールで、スタイルが良い。
身長は、僕より10cmくらい高いくらいなので、170cmいかないくらいだろうか。
「それにしても、助かったよ。1人で片付けられない仕事ではないけれど、複数人でやった方が早く終わるからね」
「他の生徒会の人はいないんですか?」
「ああ、他のメンバーも部活だったり、用事だったりがあるからね。かく言う私も、普段は自分の仕事がなければ、部活に参加しているわけだから、お互い様なんだよ」
「なるほど」
「ところで、部活の方はどうかな?まだ2週間も経っていないけれど、馴染めているだろうか?」
「はい。皆さん…、皆さん、良くしてくれるので」
一瞬、下品な言葉で罵倒してくるとある先輩が脳裏に浮かんだので、僕は言い淀んでしまう。
「…まあ、youも根っからの悪人ではないから、普段の言動は多めに見てくれると嬉しい。あれは私達に甘えているだけなんだよ」
僕が言い淀んだ理由を察したTomo先輩から、そんなフォローが入る。
「いえ、あっ、はい。you先輩のことは、一応は尊敬はしているんですよ。ゲームのスキルだけで言ったら、その辺の配信者くらいなら、軽く凌駕しているレベルですし」
「そうだね。youなら、ゲームの腕前だけで食べていけるだろうね」
「まあ、あんなに口が悪い人に配信者やプロをやらせたら、忽ち大炎上でしょうけどね」
「確かに。間違いないね」
談笑。
「配信者って目線で見るなら、K.A.I.先輩も活躍できそうですけどね。あんなに好き好んで縛りプレイしている人も珍しいでしょうし」
「K.A.I.自身は縛りプレイしている認識はないからね。…!危ないッ!」
どんがらがっしゃーん。
それは、僕達が整理していた棚の上から、物が落ちた音だった。
僕が先程まで立っていた場所にそれは落ちていたが、僕は怪我1つしていなかった。
Tomo先輩が僕を抱き寄せてくれたおかげだ。
「ッ!」
急に抱き寄せられ、体勢を崩した僕の顔は、Tomo先輩のふくよかな胸に埋まっていた。
「大丈夫かい、MoMo!」
「はい!大丈夫です!ごめんなさい!」
僕は慌ててTomo先輩から離れる。
「そんなに前屈みになって、何処か怪我をしたのかい?」
「あっ、いえ、あの、大丈夫なんで。すぐ治まるんで。気にしないでください」
「…ぁ。そ、そうかい。怪我がないなら何よりだよ」
Tomo先輩は顔を少し赤らめてそう言った。
うわうわうわ〜。最悪だ。
―――
その後、生徒会の雑務を終えた僕達は、部室へと移動した。
「本当にありがとう。助かったよ」
「いえいえ、これくらいのことだったら、いつでも手伝いますんで、また呼んでください」
「ああ、ありがとう。頼りにしているよ」
ガラガラ。
部室の戸を開ける。
「おっ、MoMoちゃ〜ん!部長!生徒会の仕事終わったん?」
「ああ、MoMoが手伝ってくれたお陰で、予定よりも早く片付いたんだ」
「そいつは良かった。ん?MoMoちゃん、何か良いことでもあった?」
「えっ、何でですか?」
「いや、何か、おっぱい触れた童貞みたいな顔してるから」
「…」
この先輩、本当に最悪だ。




