003-002 例えば、167341とか?
「お疲れ様です」
僕は、いつも通り部室の戸を開けながら挨拶をする。
「おっす、おっす。MoMoちゃん」
you先輩はいつも1番に部室にいる。
部室に来る順番は、「you先輩 > 僕 = K.A.I.先輩 ≧ Tomo先輩」って感じだ。
今日はどうやら、K.A.I.先輩より僕の方が早かったらしい。
僕が定位置に座ったタイミングで、K.A.I.先輩も部室に入って来る。
「お疲れ様です」
「うん、おつかれ」
そう言って、K.A.I.先輩も定位置に座る。
そして、ウェアラブル端末を開いた。いつものソシャゲのスタミナ消費をするのだろう。
「MoMoちゃん、何する〜?クラシスでもやろっかぁ?」
「良いですよ」
「じゃあ、賭けちゃう?MoMoちゃんが勝ったら、おっぱい触らせてあげるよ」
you先輩は、胸を左手で持ち上げて強調する。
「やりませんよ」
「え〜、今ならMoMoちゃんは何も賭けなくても良いサービスも付けちゃうよ〜。ノーリスクでおっぱい触れるチャンスだよ。童貞君にはありがたい提案じゃない?」
僕にとってノーリスクハイリターンと言うことは、you先輩にとってはハイリスクノーリターンなわけで。
それってつまり、触られたいってこと?
えっ、この人、もしかして…。
「「痴女なんですか?」」
you先輩と僕の声が重なる。
「あひゃひゃひゃ。MoMoちゃんの心、ココにあるぜ」
サムズアップした右手の親指で、トントンと自身の大きな胸を軽く叩きながら、you先輩はそう言った。
「何言ってるんですか?」
「わかるさ。すぐにな」
僕はエース、you先輩はケイを選んでゲームが始まる。
カウンター、カウンター、カウンター。
掴みを挟んでカウンターと、僕の攻撃は一切you先輩に届かない。
逆に、こちらがカウンターをしようとすれば、掴まれ、掴もうと思えば、攻撃される。
そんなわけで、全く太刀打ちできずに、僕は敗北した。
「…」
絶句した。
この間のK.A.I.先輩の即死コンボを受けた時は、「まあ、即死コンボなんだから、一撃目くらったら、そのまま撃墜されちゃうし仕方ないよね」と、心の中で言い訳して何とか平静を保ったが、今回はそうできなかった。
僕が違う選択さえしていれば、you先輩にダメージを与えられていたと思うと、シンプルに悔しい。
と言うか、即死コンボでもないのに、相手に1ダメージも入れられずに3回撃墜なんて、普通できなくないか?
「ね?」
満足そうな笑顔でyou先輩はそう言う。
「何がですか?」
その笑顔にイラッとしながら、僕はそう返す。
「MoMoちゃんの考えは全てお見通しってこと。言ったろ、ゲームが始まる前に、『MoMoちゃんの心、ココにあるぜ』って。今なら、MoMoちゃんの考えることは全てわかるぜ」
「そんな馬鹿なこと…」
「なら、試してみる?この紙に1つ数字を書いてみな。それ、当ててやるよ」
紙とペンを渡される。
…何を書こうか。
例えば、167341とか?
頭の中で適当に思い付いた桁数の多い数字を書けば、流石にyou先輩も当てられないだろ。
チラッと僕がyou先輩の方を見ると、you先輩はニヤリと笑う。
ぐっ。
全てを見透かされている気がする。
そうだ!
思い付いたものを僕は書く。
これなら、you先輩も当てられない筈。
いや、間違いなく当てられない!




