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日々原高校ゲーム部  作者: 名波 和輝
003 日常(2041/04)
11/83

003-001 そして、僕は気付いた


 僕が入部して、早1週間が経った。


 今日も僕達は4人で公式バトロワをプレイしている。


 月末にはアマチュア大会が開催されるらしい。


 大会と言っても、月一で開催されるくらいのとても小規模な大会だ。


 僕達もそれに参加するので、その流れで公式バトロワのプレイ時間が伸びているのだ。


 しかし、先輩達にとってはこれは練習でも何でもなく、「大会あるから触っておこう」くらいのノリらしい。


 一方で、僕にとっては、これはチームワークの練習だった。


 何度もチームとしてプレイしていた先輩達とは違い、僕が先輩達と一緒にプレイした期間は短い。


 だから、僕は先輩達のプレイスタイルを見極めて、僕がどんなプレイをすれば貢献できるのかを考えなければならない。


 とは言え、1週間毎日一緒にゲームをしていれば、どんなプレイスタイルかを理解することもまあまあできる。


 一言で言ってしまえば、部長のTomo先輩はサポーター、you先輩はブレイン、K.A.I.先輩はプロフェッショナルって感じだ。


 1人ずつ、もう少し詳しく説明しておこう。


 Tomo先輩は、(かゆ)い所に手が届くような人材だ。


 例えば、僕が最前線で敵と撃ち合っていたら援護射撃でクロスを組んでくれるし、僕が回復のために下がれば回復までの時間を持ち堪えてくれる。


 キル数こそ少ないけど、アシスト数やダメージ数は僕達の中でトップだ。


 you先輩は、このチームでの司令塔だ。


 相手の心理を操っているかのようにゲームをコントロールする。


 特に、ゲームの中盤から終盤にかけての(にら)み合いの場面では滅法(めっぽう)強く、相手の牽制(けんせい)から漁夫に行く判断、深追いせず下がる判断まで、常に的確だ。


 一方で、戦闘はあまり得意ではなく、訓練場での何の駆け引きもない1対1のタイマンなら、僕の方が強いくらいだ。


 それなのに、実戦のリザルト画面では、僕よりも常に良い戦績を残しているので、その辺りはお得意の心理掌握で上手いこと実力の底上げをしているんだろう。


 K.A.I.先輩は、(みが)いた特殊技能が本当にすごい。


 スナイパーライフルの扱いだけで見たらプロ顔負けの実力だ。いや、(むし)ろ、プロでもここまでスナイパーライフルを極めている人はいないんじゃないだろうか。


 そう思えるほどの実力だ。


 それだけじゃない。


 このゲームには、グレネードを直上に投げて落下と共に爆発させる不可避の小技「直下グレ」と言うものがあるのだが、K.A.I.先輩はグレネードが届く範囲であれば、確実に狙った位置にその「直下グレ」を決められるのだ。


 さらには安地読み。これも凄い。


 これに関しては、正直チートを疑うレベルだが、実力でチート級の技量を持っているのは、K.A.I.先輩の努力の賜物(たまもの)だろう。


 一方で、基本戦闘は初心者ぐらい弱い。


 スナイパー対決、直下グレ対決、安地読み対決、格闘対決、とか、限られた1点においては無敗のK.A.I.先輩だが、訓練場でアサルトライフルやショットガン(K.A.I.先輩が言う所の「凡庸(ぼんよう)な武器」)を持って、1対1のタイマンをした時には、僕が全戦全勝してしまうほど、本当に弱かった。


 それに関して、K.A.I.先輩は「ぼくは努力を全て別の所に割いているからね。凡庸な技能が常人より劣っていて当然さ」、と言っていた。


 ちなみに、ショットガン同士の近距離対決では僕に1勝もできなかったK.A.I.先輩だが、K.A.I.先輩がスナイパーライフルを持っての近距離対決や、K.A.I.先輩が素手(武器を持っていない状態。格闘で1撃25ダメージ入る)での近距離対決では、近距離最強の武器であるショットガンを持った僕に全勝していた。


 スナイパーライフルや素手で、近距離のショットガンに勝てる方がおかしいんだけどなぁ。


 そんなK.A.I.先輩の拘りは強く、例え、着地してすぐに戦闘になったとしても、アサルトライフルやサブマシンガン、ショットガンを持つことは決してない。


 (いわ)く、「プライドを捨てて勝つくらいなら、負ける方を選ぶよ」とのこと。


 まあ、結局、敵が武器を持っていても大抵は格闘で勝ってしまうのだが。


 そんな3人の先輩は互いに互いを深く信用している、つまるところ、信頼していた。


 you先輩の指示には、2人は絶対に従う。


 それが、「あそこ(300mほど向こう)の敵をダウンさせて」や「MoMoちゃんの回復が終わるまで(7〜8秒)、そこの2人抑えといて」など、普通のプレイヤーなら(もしかしたら、一部のプロも)(さじ)を投げるような無理難題でも従ってみせるのだ。


 これに関しては、you先輩は2人の技能を信頼しているし、2人はyou先輩のゲームコントロールを信頼しているからできることなのだろう。


 さて、何の話だったかな。


 そうそう、僕のプレイスタイルをどうするかの話だ。


 you先輩が司令塔で、K.A.I.先輩が特技兵、Tomo先輩が前衛 (サポーター)なら、僕はTomo先輩にサポートされる前衛の枠しか空いていないだろう。


 そんなわけで、最近(ここ数日)の僕は、前衛として動いている。


 元々、ある程度のタイマン戦闘力を持っている(自称)し、その役割に()くのは、特に問題なかった。


 そして、僕は気付いた。先輩達の凄さに。


 僕はダウンしないことを意識さえしていれば良かった。


 それは、他に何も考えず、戦闘だけに集中すれば良いと言うことでもあった。


 you先輩のゴーサインに従って、Tomo先輩と特攻すれば、大抵の相手はそのままの勢いで蹴散らせるし、仮に劣勢になったとしても、ダウンさえしなければ、Tomo先輩が回復の時間を稼いでくれる。


 戦闘音を聞き付けて、やって来た漁夫もK.A.I.先輩が1人で食い止めてくれる。


 正直、戦況を考えずに戦闘しているだけで、チャンピオンを取れるのだ。


 そんな環境は心地よかった。


 言う通りにやっていれば、結果を出せる。こんなに楽しいゲームはない。


 その反面、僕は悲しくもあった。


 you先輩にとって、僕はゲストだからだ。


 you先輩は、K.A.I.先輩やTomo先輩に向けて出すような無理難題と思える指示を、僕には出してくれなかった。


 きっと、僕の枠に別のプレイヤーが入ったとしても、この3人の力でゲームは上手く回るのだろう。


 チームに貢献してはいるが、そのポジションは僕でなくても良い。


 そう思うと、悲しくて仕方がなかった。


 you先輩に無茶振りをされるようなプレイヤーになりたい。


 それが僕の当面の目標となった。

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