8話 ご機嫌ななめ!? 友情のお手製アイテム!
フリット村は山の麓にある小さな村だった。
黒く剥き出しになった魔鉱石の鉱山の山肌が、村を囲うように聳えている。
家は黒い石を組んで作られており、魔鉱石を加工する槌音が、どこからともなく絶え間なく響いている。
「へーすごい所ですねえ! 景色も最高です!」
「おおリオも気に入ったか。俺もこの村好きなんだよ」
「ベア太さん、以前にもこの村に来た事あるんですか?」
「まあ、実際に来たのは初めてかな。でも知ってはいる」
楽しそうにはしゃぐ二人と裏腹に、私は機嫌が悪かった。
私は……ある重大な事実に気付いてしまったのだ。
「どうしたんですかアリーサさん?」
「……何でもありませんわ」
私は苛立ちを隠しながら、小麦粉を商店で売り払い、金貨10枚を受け取った。
金貨8枚で買った小麦粉なので、儲けは金貨2枚分だ。
金貨を受け取ると、そのまま町の奥の宿屋へと向かう。
私はすぐさまベッドの上に胡坐をかき、貧乏ゆすりを始めた。
「……どうしたんだアリーサ?」
心配そうに尋ねて来たベア太に、低い声で答える。
「私は……気付いてしまったんですわ」
「何にですか?」
リオも私を心配そうに見つめていた。
私は息を吸い込んで、口を大きく開いた。
「――私は、あんまり魔法少女っぽくないのですわ!」
「…………」
黙り込む二人に、私は思いの内を吐き出した。
「そもそも何故変身アイテムが無いのですか! ベア太!」
「そんな事言われても……」
「マスコットが用意した変身アイテムで、魔法少女は変身すると文献に書いてありました! なのに、何故ベア太は変身アイテムを用意してくれないのですか?」
「そもそも俺はたまたまティディベアに転生しちゃっただけで、別にマスコットじゃないのだが……」
「黙りなさい! 大体なんですかそのスレたおっさんみたいなだらしない口調は! もっと可愛らしく! 語尾もちゃんとしなさい!」
「……こんな感じでいいベアか?」
「そう! 言われなくても最初からそうしなさい!」
「面倒くさいなあ」
「語尾! ちゃんとする!」
「ああもう……分かったベア!」
「変身アイテムも明日までに用意する事! 私はもう寝ます!」
私はドレスも着替えずにそのまま眠りについてしまった。
---
次の日、目を覚ました私は、枕元に何かが置いてあるのに気付いた。
「ん……? これは杖?」
茶色の短い木の杖は、赤いリボンで可愛らしい飾り付けがしてある。
「昨日、リオと一緒に作ったんだ」
「えっと……良かったら受け取ってください」
私は、喜びで胸が打ち震えるのを感じていた。
そして、リオとベア太を思わず抱きしめていた。
「ありがとう……二人とも……私は世界一幸せな魔法少女ですわ……」
「……喜んで頂けて嬉しいです」
私に微笑みかける二人に、私は申し訳ない気持ちになった。
「申し訳ございません。……昨日は自分勝手な事を言って、二人に当たってしまって」
「気にしないでください。僕達はアリーサさんに頼ってばかりですから、時にはああやって頼ってくれていいんですよ」
「俺も、もうこの際マスコットとして頑張るから。改めてよろしくな」
「ありがとう……二人とも……ですがベア太」
「はい」
「語尾はちゃんとしなさい!」
「……分かったベア」
「よーし! 早速このマジカルステッキで変身ですわ!」
「ドレスが勿体ないし、既に作ったコスチュームで変身するベアよ」
「……仕方ないですわね」
私はマジカルステッキを使って何度か変身して満足すると、二人と宿を後にした。




