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7話 闇の三盗賊!? 平和的大作戦ですわ!

 私はそのままリオの訓練を再開した。


 そして10匹程ゴブリンを退治した所で日が暮れて来たので、村に帰ることにした。


 討伐証明の緑石を換金し、食事を済ませて宿屋に戻る。


「アリーサ。話があるんだ」


 ふと、ベア太が深刻な顔で私を見つめていた。


「……何ですの?」


「今のアリーサだったら、魔王軍四天王のマーデルも簡単に倒せると思う」


「……買い被り過ぎですわ。マーデルは高い魔法耐性を持っていると、ベア太はおっしゃっていたのではなくって?」


「いやアリーサの物理……いや魔法攻撃なら、きっとマーデルにも余裕で通用する! 現に高い物理耐性を持つガントも余裕で倒せたじゃないか!」


「ガントの物理耐性がいかに高かろうと、魔法耐性は皆無でしたわ。あんな雑魚に私の魔法が通用したくらいでは安心できません!」


「いや……もう……アリーサの魔法は特別すごくて……」


「それは当然の事です! しかし、油断はできませんわ! 何としてもリオのレベルを強化して、マーデルの息の根を止めて貰わなければ!」


「はい! 僕に任せてください!」


「……ああ……じゃあもう……それでいいよそれで」


 ベア太は渋々といった感じだが、納得してくれた様子だった。


---


 次の日の朝、私はリオの様子がおかしいのに気付いた。

 リオは顔を顰めて腕を抑えている。


「……どうしたんですの?」


「いたたたた……筋肉痛かも知れません」


「それなら私にお任せください。……治癒魔法ヒール!」


 私は魔力を込めた手で、リオの全身を揉み解していった。

 やがて私が手を止めると、リオは驚いた様子で体をさすった。


「す……すごい……! 痛みが完全に無くなりました! ありがとうございます!」


 私は満足げに微笑んだ。


「怪我は治せませんが、筋肉痛や腰痛なら訳なく治せますわ」


「突っ込まんぞ……俺は二度と突っ込まんぞ……もう突っ込まんぞ……」


 ベア太は部屋の隅に向かって何やらぼそぼそと呟いている。


「妙な事をしていないで、そろそろフリット村に出発しますわよ」


 王国からの治外法権が認められているガリム領とは言え、流石に長時間同じ村に居座るのは危険だ。……それに魔王軍にも見つかってしまっている。


 リオのレベルが十分でない以上、南の王都からなるべく離れておく必要があった。


「しかし……財布が少し心もとないですわね」


「次の目的地の西のフリット村は魔鉱石が取れる村だが、土地は荒れていて作物は実らない。小麦粉でも持って行ったらそれなりの儲けが出る筈だぜ」


「……ベア太……流石私のマスコットですわ!」


「まあねー」


 私は農家から買い取った小麦粉の入った麻袋を荷馬車に満載し、リオとベア太を乗せて西のフリット村へと荷車を引いて行った。


---


「アリーサさん……重くないんですか? それ本来は馬に曳かせる荷馬車だと思いますよ……?」


 草原の道を西へと向かう中、リオが心配そうに尋ねて来た。


「大丈夫ですわ。魔法の力を使っているので、この程度の荷車何でもありませんわ」


 正直、何の魔法を使っているかは自分でも分からなかった。

 しかし、私のか弱い力だけで軽々と荷車を曳ける筈がないので、何かしらの魔法の力が働いているのは間違いないだろう。


 ふと、リオとベア太の会話が聞こえて来た。


「リオ……お前も実は勘付いているんじゃないか?」


「ベア太さん……どういう事ですか?」


「アリーサは実は魔力じゃなくて……その……力が並外れている、そう思わないか?」


「変な事を言うのは止めてください! アリーサさんは女性ですよ?」


「知らねえよ! 現に馬鹿力で小麦粉満載した馬車を曳いてるじゃねえか!」


 私は足を止め、ベア太を強く睨んだ。


「ベア太。次そのような世迷いごとを言ったら、全身の毛を魔法の力でむしり取りますよ」


「……はい……ごめんなさい」


「分かればいいのです」


 草原の丘を、荷車を曳きながらいくつも超えて行くと、やがて右手に林が広がる平地に差し掛かった。


「気を付けろよアリーサ……この辺りは盗賊が出るからな」


「――忠告はありがたいですが、少し遅かったようですわね」


 林から三人組の皮鎧の男達が現れ、悍ましい笑みを浮かべて私の前に立ち塞がった。


「ヘッヘッヘ! その荷車は頂いていくぜ! ついでに女もなあ!」


 ――なんて汚らしい。


「申し訳ございませんが……肥溜めに沸いた蛆虫よりも下劣で醜いあなた方に時間を割いている暇はございませんわ」


 私は盗賊の一人一人に、嫌悪と軽蔑の凝縮された目線を送って行った。


「やっ止めろその目は! 喧嘩売ってんのか!」


 リーダー格のモヒカン頭の男は、斧を握ってイキがりながらも恐怖を隠しきれていなかった。


「兄貴……逃げましょうぜ! この女明らかにヤバいッスよ! 良く見たらガタイもいいし……」


「おでも……この女怖い……」


 チャラ男とデカブツはリーダーの後ろに隠れてしまっている。


「か弱い乙女を怖がるとは……何と失礼な! ベア太! 変身メタモルフォーゼですわ!」


「言っとくけど、もうドレスの予備はないし、普通に着替えた方がいいと思うぞ」


「……ぐっ……仕方ないですわね」


「アリーサさん! どうぞ!」


「ありがとうリオ!」


 私はリオからノースリーブでミニスカートなコスチュームと、大きな赤リボンを受け取る。

 そして、外道共を刺すように睨みつける。


「そこのウジ虫三人衆! チリ一つ残さず消滅させて差し上げますから、それまでそこで待っていなさい! もし覗いたら地獄の苦しみを与えながらじわじわと殺します!」


「は……はい!」


 私は林の茂みへと急いだ。

 そして、コスチュームに着替えてマジカルアリーサに変身メタモルフォーゼすると、ウジ虫の前に颯爽と躍り出た……筈だった。


「どこですの? あのウジ虫共は!?」


「あいつらなら、ビビッて逃げて行ったぞ」


「流石ですアリーサさん! 魔法を使わずとも悪を退治してしまうとは!」


 ――少し不本意だけど……まあいいですわ。


「……オホホホホ! 悪にも情けを掛けるのが魔法少女なのです!」


「あんた、さっきチリ一つ残さず消滅させるとか言ってなかったか?」


「細かい事はいいんです!」


「はいはい」


 私は再び荷車を曳き、西への旅を再開したのだった。


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