5話 目指すはレベル50!? 王子様と剣のお稽古!
次の日、私は村はずれの草原でリオに剣の稽古をつける事にした。
「えいっ! えいっ!」
「そう! 背筋を真っ直ぐに!」
か弱い私は、剣を振るうのは苦手だった。
というのも、私が剣を軽く振るっただけで、剣の刀身がねじ曲がってしまう。
きっと私の強大すぎる魔力の悪影響を受けての事だろう。
しかし、どういう訳か剣の稽古をつける事には自信があった。
理由は分からないが、きっと魔法の力が何かしら作用しているのだろう。
「えいっ! えいっ!」
「右手に力が入り過ぎですわ」
「はい!」
「今の振り方は良かったですわ! 今の感じを忘れないでください」
「はい! ありがとうございます!」
リオは筋が良かった。この調子で鍛錬を重ねて行けば、良い剣士になれそうだった。
「間違った型の千回より、ゆっくりでも正しい型の十回です! ……体に正しい型を覚え込ませるのです!」
「はいっ!」
リオは流れる汗も拭わずに必死で剣を振るっている。
「どうだ? 素質はあるか?」
腕に抱えたベア太が、私を見上げて小さく呟いた。
「かなり憶えがいいですわね! きっといい剣士になる事でしょう!」
「だが、ずっと鍛錬ばかりしていても仕方ないぞ。ある程度レベルが上がったら、実戦を繰り返さないとレベルは殆ど上がらない」
ベア太の言った聞き覚えのない言葉が私は気になった。
「……レベルとは……何でしょうか?」
「ああ、この世界の人は知らないのか。でも俺には見えるんだ。この世界の人間にはレベルというのがあって、上げれば上げる程強くなるんだ」
「知りませんでしたわ。私のレベルはいくつですの?」
「アリーサは……文字化けしてるから良く分からないな」
「文字化け?」
「とにかくとんでもないレベルなのは間違いない」
「恐れ入りますわ……リオはどうですの?」
「リオは今レベル10だな。……お、また上がったぞ。今はレベル11だ」
「……なるほど。リオがマーデルを倒すには、どれ程のレベルが必要なのでしょうか?」
「レベル50あれば十分だろう。レベル20からは訓練の効果は殆ど無くなるから、そこまで上がったら旅をしながら悪いモンスターを倒していくのがいいと思うぞ」
「わかりました。リオ! レベル50を目指して頑張ってください!」
「レベル50……?」
「まあとにかく頑張れってことだ」
「はい……!」
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それからリオの訓練に三日間付き合った頃、
「やったぞリオ。レベル20だ!」
ベア太が嬉しそうにそう言った。
「そろそろ実戦ですわね。森のモンスターの討伐依頼を受けましょう!」
「はい!」
鬱蒼とした森に入ると、すぐにゴブリンが姿を現した。
肌は緑色で、頭には角が二本生えている
「僕に任せてください!」
「応援していますわリオ!」
リオがロングソードを抜いて構えた。
――先手を打ったのはゴブリンだった。
一気に距離を詰め、棍棒を大きく振り被る。
しかしリオはバックステップで距離を取り、隙を見せたゴブリンの胴を一気に切り裂く。……赤黒い鮮血が吹きあがる。
やがてゴブリンは倒れて光り輝き、緑の石になった。
「やった!」
「流石ですわリオ!」
私は満足してリオに微笑み掛け、討伐証明に緑の石を拾った。
「おっレベルが上がったぞ! レベル21になった!」
あとレベル29……魔法少女として憎きマーデルを倒し、王国に平穏を取り戻す為にもなんとしてもリオには強くなって貰わなければ!
私が拳を握り締めて決意を固めていると、妙な気配がした。
「二人とも……下がっていなさい!」
森から姿を現したのは、亀の甲羅のような鎧を身に着け、大盾を携えたモンスターだった。