11話 ドキドキ! 海辺は恋の予感!?
ノルン港に着いた私は、荷車を桟橋の手前まで運び、魔鉱石の売却手続きを済ませた。
「儲けは金貨10枚くらいか。暫くはお金に困らなくて済みそうベアね」
「ええ。良さそうな町ですし、しばらくはここに居座ろうと思いますわ」
リオはというと、感激した様子で海の彼方を眺めている。
「これが海……!」
「リオは初めてでしたね」
「はい! 本では読んだことありましたが、こんなに大きいとは」
はしゃぐリオの姿に、私も自然と笑みが零れた。
ふと、受付の青年が話しかけて来た。
「魔鉱石を船に積む作業はどうします? ご自分でやって貰えたら銀貨1枚高く買い取りますが」
「それならもちろん、私達でやりますわ!」
私は魔鉱石の結晶を両手一杯に抱えて、船と荷車を何度も往復していった。
「す……すごいな……あんた」
通りがかる船員が口をあんぐり開けて驚いている。
「大した事ではございません。これも魔法の力の成せる技ですわ」
「ぐう……! 僕も……頑張ります!」
リオも負けじと大きな魔鉱石を抱えているが、ふらついてしまっていた。
「リオ! あまり無理しないでくださいね!」
「だ……大丈夫です!」
魔鉱石を積み終えた私は、二人と宿屋へと向かった。
そして、窓から海が見渡せる部屋をとった。
「綺麗ですねぇ」
ふと、リオの呟き声が聞こえた。
「あらやだ……リオったらお上手ですこと……」
「いや、僕は海が綺麗って言ったんですけど……」
「あらそうでしたの……」
私は気恥ずかしくなって思わず俯いてしまった。
「おいリオ! 今のはどう考えても選択肢ミスってんぞ! ゲーマーとして見過ごせん!」
「えっ? ゲーマーって何ですか?」
「とにかく、今からでも遅くないからアリーサを褒めるんだ! 『アリーサさんは海より綺麗です』とか、そんな感じだ」
「はいっ!」
リオとベア太の会話は思いっきり聞こえていたが、私は聞かなかったフリをしておいた。
やがて、リオが真剣な表情で私を見上げてきた。
「アリーサさん! アリーサさんは海より綺麗です!」
「まあ……勿体ないお言葉ですわ……」
私は少し複雑な気分だったが、悪い気はしなかった。
リオの姿は……心なしかいつもより逞しくなっているように感じられた。
……ちょっと年の差があるけれど……それも逆にいいかも知れない。
私は、小さな胸の高鳴りを感じながら眠りについた。




