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本日、もう何度目かのゲームへ。今のところパフェには全敗だ。広いフィールドなので彼女に出会えないゲームもあったし、彼女以外にやられることももちろんあったが。
俺たちは固まりすぎない程度に連携しながら、懲りずに本日の標的、パフェを探す。今度こそ松井のグレネードをお見舞いすべく、前線へと近づいていった。
森林エリアをぬけ、少し開けて人工的な遮蔽物が置かれているエリアで、俺と松井はパフェをみつけた。彼女は索敵のため、少し上半身をベニヤ板から露出させている。まずは俺がフルオートを撃ち込んだ。ほとんどはベニヤに跳ね返されたが、いくらかヒットしただろう手応えはあった。しかし、パフェは案の定ヒットコールをしない。俺がこうやって気を引いているうちに、松井はそろりそろりとパフェに近づいていた。そして、彼女の足元に、ピンを抜いたBB手榴弾を軽く放り投げ、自分はその場から素早く離れて遮蔽物に身を隠す。手榴弾は接地した瞬間に二百発を超えるBB弾を一気に炸裂させて、弾は四方に飛び散った。
「え!? うわぁ!」
思わず声を上げて弾幕を避けようとしたパフェが、ベニヤの後ろから完全に姿を表した。まあ、あんなの本来避けられるわけがないんだけど。俺は素早くマガジンを交換してその大きな的にもう一度フルオートをお見舞いし、そこに駄目押しとばかりに、松井はグレネードランチャーのトリガーを軽快に丸々六発分引いた。六発と簡単言ったが、コイツは一発だけでもヤバイのだ。なにせトリガーを一度引くだけで一気に百個以上のBB弾が飛び散る。拡散する分BB弾一つ一つの威力は落ちるものの、それを一人に対して連続六発は、正直、引くほどやりすぎ。
「ヒットぉ!」
彼女はイライラとした声で叫んで俺たちを睨みつけ、さっさとセーフティへと帰っていった。ついにやり込めた達成感で 「ようっし!」と、松井と俺が無防備にハイタッチをしていたところで、声や音を聞きつけた黄色陣営の奴に撃たれてしまったが。
俺たちがセーフティに戻って銃を置いていると、ツカツカとひとりの女の子が歩み寄ってきた。このタイミングで何か文句でも言いたげに近づいてくる女の子は、パフェしかいないだろう。ゴーグルとフェイスマスクに隠されていた顔は、サバゲ雑誌の表紙の子みたいに可愛かった。
「ちょっとぉ! さすがに、さすがに、オーバーキルすぎじゃないの!?」
「ここまでしないとわかんないのかと思って」
松井がしれっと言うと、パフェはさらに眉を釣り上げて、
「わかってるわよ!」と叫ぶ。
全身を覆うベージュの迷彩服を脱いで、タンクトップにホットパンツ姿になった彼女の白い四肢には、痛々しい真っ赤な斑点がたくさん刻まれていた。そのサスペンダーに強調された胸がちょっとエロ……じゃなくて、そのたくさんの生傷を見てちくちくと胸に罪悪感がもたげつつも、一応しかめ面を作って聞いた。
「じゃあなんで一発目でヒットコールしないんだ?」
「それは……」
パフェが言いよどんでいるところに客間のトラブルをかぎつけて、店長がすっ飛んできた。俺たちとたいして歳が変わらないくらいの、体つきも顔も厳つい男だ。彼は「どうしましたか?」とたずねながら、俺たちとパフェをセーフティーから少し離れた場所に誘導する。